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未だ見ぬ虹の彼方へ  作者: 楪 玲音
episode 1:殻の外側、あなたの知らない世界
8/10

08. enigma

瑞羽はしばらく起きないだろう…。


見張りをしておく…とは言ったものの、長い間、何もせずにただ時間の経過を待つのは最善とは言えない。それに奏本人もこのまま突っ立って、じっーと辺りを見渡すだけの見張りをしていたら、睡魔に敗れていつ眠ってしまうかわからない。正直、奏からしても、人生でこんなに眠たいのは初めてだった。


普通、サバイバル…というか、逃走劇というか、危機的状況に置かれた人間というのは、一種の興奮が続いて、なかなか簡単には眠らないのではないか…?という気もするが、この7時間、険しい道のりを辿ったものの、走ることも、つまづくこともほぼ無く、おまけに会話は合わせて1時間あったかな…程度。刺激的なことは何一つない。…なるほど。奏からするとこの眠気も納得のいく結果だった。確かに、瑞羽と2人っきりという状況はこれ以上がないほど、奏にとっては刺激的ではあったが…。




とにかく、動き続けなければ、睡魔に勝てそうにもなく、時間も勿体無いという理由から、奏は、瑞羽を肉眼で確認することができる範囲でこの薄暗い森林の探索を始めた。


何か役に立つもの…は、まずありそうにない。仮にあっても、奏の今の判断力ではその有用性に気づかないだろう。

奏はそれも考慮して、最初から、見た目だけで判断できるような、果実とかその類の"食材"になりそうなものだけに絞って、目を凝らしながら探索した。



黙々と探索して、1時間くらいは見回っただろうか…。

実際のところ、そんな上手い話もなく、何一つとして自分たちが食材として扱えるようなものは無かった。そこらに生える植物はもしかすると食べられたのかも知れないが…。流石にそのまま口に入れても、ただ苦いだけで腹の足しになりそうでは無かった。


かなり遠くに見える大木の下、そこで眠っている瑞羽のもとへ戻ろうと歩いた。どうやら、見張りを忘れて、割と遠くまで来ていたらしい。ちょっと走りも混ぜながら、道を進んでいたとき、右膝の真下を何かが掠めた。意識も相変わらずぼんやりしていたので、痛みに気づいたのはだいぶ後だったが、木の枝か何かで深い切り傷となっていた。血が溢れてきてじんわり痛い…。


7月ーー。まだ梅雨は明けていものの、彼もまた家を出たときの服装は夏の割と涼しげなもの。すなわち、ズボンの丈も短めであった。ギリギリ、瑞羽には傷を隠せそうな程度、ハンカチは日常的に常備していたので、止血し、縛ったハンカチごとズボンの下に上手く隠した。


心配も迷惑も、瑞羽にはこれ以上かけたくなかった。こんな探索程度で怪我しているようでは、この先が自分で心配になる。まったく……。普段はつかない溜息が漏れた…。



瑞羽のもとへ戻ると、奏はとりあえず瑞羽と同じように大木に寄りかかって、ぐたっ〜と倒れ込みようにして座り、足を伸ばして体を休めた。


しばらくしてから、うーん…どうしようか…と少し考えた後で、心の中で瑞羽へ向かって "失礼します!" と呟き、そっと瑞羽にもっと接近して、すぐ隣まで寄ってみた。ついでにその細長くて繊細な手にも触れたかったが、色々考えて、そこまでいくと変態みたいだな…と妙に奥手になってしまって、断念した。

次第に意識は薄れ、奏は深い眠りについたーー。




奏が寝起きのぼんやりとした意識の中、細々と開いた目で辺りを見渡すと、木々の重なりあった葉の隙間からみえる空はすでに薄い朱色に染まり、時はすでに夕方になっていた…。


はっきりと目が覚めると、すぐさま横を振り向いてみる。そこにはまだ静かに首を傾けて眠っている瑞羽の姿があった。

眠る瑞羽を見て、それと若干の肉体の接触があった肩や腕付近から伝わる瑞羽の体温を感じて、とても安心感を覚えた。



それから奏の体感で30分もすると、流石に瑞羽の方もゆっくりと目を覚ました。瑞羽は右手で目をこすりながら、いかにも寝起きですといった口調で、ぼそっと呟いた。


「……おはよ。」


それからまた、急に目を大きく開いて、慌てた様子で、

「ごめん!寝過ぎちゃった…。」


そしてちょっと落ち込んだ様子で、

「これじゃ寝坊だ…ね……。」

と呟いた。


「気にしなくていいよ、全然!警察の捜索隊もここにはまだ手をつけてないようだし、人の気配もない。この様子なら今日は逃げ切ったも同然だと思うし…。」


「う、うん…。そっか…。」


…瑞羽は急に何かを考え込むかのように黙ってしまった。


奏はどうしたの?と声をかけようか迷ったが、少しおとなしく待ってあげた。


そういえば…と、瑞羽を見ていて、奏はふと疑問に思った。瑞羽の背負ってきたリュック…。中身をまだ一度も取り出したのを見ていない…。聞けそうな雰囲気になったらでいい、中に何が入っているのか少し興味が出てきた…。



しばらくして、ふと瑞羽が言い出す。

「今日は大丈夫だね……。捜索隊も夜中に探し回るようなことはしないだろうし。人の気配も……ないから。」



「それと……さ…、奏、私が寝てるとき何か無かった……?」

「えっ…?」















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