05. a feeling of wrongness
「そうか…。俺が願ったから…。"君とまた一緒に居たい" って、…"君を連れ出して、君とずっと一緒に生きたい" って…。」
そう、そんなことを心の片隅、どこかでずっと思っていた…。この1年間ずっと…。
「君に…俺が強く願った想いが届いてしまったみたいだね…。」
およそ2年前ーー。中学の卒業間際、奏は彼女ーー瑞羽に想いを伝えた。それから2人はぎこちない形ではあったものの付き合い始めた。高校も別々となってしまい、それこそデートをするわけでも、こまめなメールのやり取りをするわけでもなかった。顔を合わせることもなく、半年が過ぎる頃には、2人別々の道を意識し始めた。特に彼女の方は先に変わりない日々に見切りをつけたようだった。付き合いが途切れる瞬間もあっけなく、2人は高校1年の夏が過ぎる頃には知り合いとしての関係に何事もなかったかのようにまた戻ってしまった。
彼は今まで自身の抱える感情を知りつつも、その未練を引きずり、みっともないとは思いながらも、その彼女への気持ちを捨てきれずにいた…。
彼女は依然としてその微かな震え声のまま答えた。
「………それは…、ちがうよ…。少し…。」
「えっ…………。だけど…君は…。呼び寄せたのは"俺" だって…。」
彼はまたしても驚かされたような顔をしている。
「見えたの…。君の意識が…。君の感情が…。」
彼にはまだこの言葉の真意を掴むことはできなかった。せいぜい彼は、何故、彼女が"感じた"ではなく"見えた"といったのか。何故、"見える"という言葉をわざわざ用いたのか。この疑問を"違和感"として認識するのがやっとだった…。
雨は刻一刻と2人の体温を奪い、今になって次第に激しさを増してきた。
「私もついていくから…。連れて行って。好きにして…いいから。」
瑞羽はそっと、その両腕で奏を抱き返し、また、言葉を吐くと同時に、俯いて奏の横顔と反対方向に顔を向けた。
「え、…えっ、…ちょっと待って…だけど…」
「……とりあえず、このままじゃ、風邪を引いてしまうよ。今ならまだ君は帰れる。いつも通りの明日だって選べるよ。1人が不安なら君の家までついていく。…とにかく、俺とこのまま、一緒についてきてはダメだよ…。この先は苦しいことだらけだから…。…何事もなかったことにするんだ。ここであったことは悪い夢なんだ…。だから…!」
彼は彼女を抱きしめたままの腕を解き、一歩下がった。彼女の前で無理に、ぎこちない表情でもなんでも精一杯微笑んでみせた。その後右手で彼女の頭をぽんぽんと軽く二回叩き、優しく撫でた。
「瑞羽…。ありがとう…。だからまた、帰って少し眠っておいで…。そしたらまたちゃんと明日が来るから…!」




