04. feelings
雨はまだ降り続いている。その優しい雨音とは裏腹に、着々と彼とその瞳に映る目の前の彼女から体温を奪い、未だ止まずにいる。…傘も刺さず、立ち尽くす2人。身を纏う衣服は互いにびしょ濡れで、彼も彼女も空から降り注ぐ雨粒に無抵抗に打ち付けられていた。
「……いよ…。 ……いよ………もう…っ……。」
泣き顔の彼女は奏へ訴えかける。
暗闇であろうと、雨音に掻き消されようと、彼ーー奏にはよく分かった。その表情も台詞も、内にあるどうにもならない、今にも壊れてしまいそうな彼女の感情もーーー。
「ごめんね。…ごめん……」
彼はそのまま目の前の彼女を無言で抱きしめてみせたーーー。
それは奥手な彼がずっとできずにいた、きっと彼の夢、妄想の中で淡く消え果てるような、そんなことだった。彼にとって「好き」を言葉で伝えるより、それは難しい。
今、彼はその手で、皮膚で彼女の体温を感じ取った。
「待たせた…みたいだね…。ごめんなさい。……でも、わからないんだ。だって君は…。」
「………ばか…。」
震えた小さな、微かな声。
彼女は少し顔を歪め、今にも泣き崩れる寸前の表情で答える…。
抱き寄せたままの、すぐ側にある彼女の横顔を奏は読み取った。
「…ごめん、とりあえず離そう…か。急に悪かった。抱きしめたりなんかして……。…ちょっと落ち着こう。なんか俺…。変になっちゃったみたいだね…。」
「その…ま、ま…。」
「…………そのままでいいから!…。まだ離さないでいてよ。………いいんだよ。いいよ、もう…。」
その潤んだ微かな言葉を聞いて、奏は驚いた。上手く言えないけど、体が明らかに、驚いた、或いは不意を突かれたような反応を示したのを自分自身で感じた。それはどうやら、彼女にも即座に伝わったようであった。
「私だって…、私だって何も知らず、何も感じず、また普通の明日が欲しかったよ。……………でも、呼び寄せたのは奏じゃない!」
少し感情的に投げかける言葉。
「……君なんだよ………。全部……。」
言葉が詰まって、そのままついに彼女は泣き出してしまった。
2年前、いや今までもずっと自分の前ではいつでも無愛想だった彼女。たまに笑っても、たまに怒っても…なんか気持ちを顔に出すのが下手くそで…。そんな彼女が泣いたんだ。いや、きっと自分が泣かせてしまったんだ…。彼女の泣き顔を初めて見た…。罪の意識と、それと背反する別の感情を自分の中に感じた。ーーー




