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未だ見ぬ虹の彼方へ  作者: 楪 玲音
episode 1:殻の外側、あなたの知らない世界
3/10

03. a strange sensation

ドアを開け、自室に入ると、正面と左側に窓が一つずつある。正面の窓を飛び出すと屋根に簡単に乗ることができた。晴れた日はよくそこから屋根に上がって、家族みんなの布団を日干ししていた。

いざこの時間に飛び出してみると、暗闇と雨のせいで屋根は濡れ、先端が分からず、恐怖心が先行した。屋根から地面までそれなりの高さがあって、事前に夕方、帰宅した際に大人たちの死角となる位置に設置した梯子を下りなければならない。慎重に下りた。元々この梯子というものに苦手意識があったせいか、単に高さというものに知らず知らずのうちに恐怖を覚えていたのか、地面へ足を着けるまで5分かかった。

実際のところ、一階へ下り、玄関から鍵を開けて飛び出すことも容易だった。むしろこの方が危険も冒さず、素早く済む。だから、割と窓から降りるなんてことは気分でやったことで、特に意味も無く、浅はかな行為ではあった。まあ、冒険気分を盛り上げるには十分だった。


奏は歩を進める。自転車の鍵さえ部屋の机の脇、定位置に置き去りのまま。自分の足で歩きたかった。まだ自転車は新品だし、5歳の弟が今後使うことになるだろう。そして、元々腕時計を着用するタイプでは無かったから、時を知る手段は日の光しかない。唯一の日時を確認する手段であったスマートフォンはGPSや通話記録やその類で現在位置を突き止められてしまうと思い、それこそ部屋に投げ捨てたままだ。深夜帯のこの辺り一帯の交通量、人通りは皆無と思われたが、それでもより人気が少ないであろう住宅街(街と言う程ではないが)から遠ざかる、正反対の田の広がる道を進んだ。歩いて10分は街灯の明かりさえなく、前方に見える自販機の薄く見える光が頼りだった。


ふと、まだ夜明けまで時間があるからと家から徒歩15分程度の古巣の中学校へ向かうことを決めた。田んぼ道からは遠回りではあったが…。何と無く、気分的だ。特に理由は無かった…はずだった。




大通りの脇、傾斜を下った先にその校舎があって、正面玄関が見える。今回は裏手の田から側を流れる川を伝って向かった為、校舎でグラウンドが隠れ、最初、その異変に気づかなかった。

ようやく正面玄関側へ回ってみると、暗闇の中、確かに"誰か" 人がいる。1人でぽつり。それは悲しそうに、淋しそうに、泣きそうに…。


グラウンドの中心…。誰だろうか。誰が自分を待っているのだろう…。興味本位でゆっくりと自然と足はその"誰か"の方に向かって前に動いていた…。


あれ?と思った。立ち止まることこそしなかったが、歩を進めながら、生まれた疑問をよくよく考えてみた。


「何故、自分は向こうに見えるあの相手、"誰か"が自分を"待っている"、と感じたのだろう…」


ましてや、自分は未だ着々と徐々に近づく"誰か"が誰であるのか、男か女かさえも視野に映る像からは判断しきれないままでいた。直感的には女であるとは思っていたが…。

そろそろその人物が、目に入る像から認識できる辺りに達するという頃、細々とした声を"彼女"が発しているのに気付いた。………" 彼女" であると脳が判断したのはその声を微かに聞き取るのと確かなその容姿がこの目に映るのと、その同時、まさにその瞬間であったーーーー。




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