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酔っ払いさん達最高です。

「佐々原さん。今日はもう終わりにしようか。まだかなり早い時間だけど、みんなこの様だし」



木梨君が声を掛けてきた。

私は暇だったからそこら辺のおつまみつまんでいたけど、木梨君にそう言われて周りを見ると、たしかに酷いあり様だった。

持ち込んだ缶ビールやチューハイの缶はあちこちに転がっているし、誰も歌っていないくせに曲を大量に入れていたからテレビの画面からはカラオケの音源がずっと流れている。

それに散らかした張本人たちは、さっきからそれぞれ騒いでいてうるさい。



「そうだね。まず私達だけで缶とか片しちゃおうか」


「だね」



うるさい酔っ払いを無視して缶を拾い集める私達。

やっぱり木梨君はみんなより大人だなぁ。



「あれー? 二人ともなにしてんのー?」



なにやらよっしーに熱く語っていたリクが聞いてきた。



「片付けてるんだよ。もうお開きだって」



私がそう答えると周りからブーイングの嵐が。



「えー! 私まだ美香とお話したいー」


「あたしもー! なんかアオイめっちゃ話し合うし、まじ最高!」


「俺らまだ女のラインについて語ってるんだけどー」


「そーっすよ! やっぱ二次元は巨乳でも貧乳でもどっちも萌えるっす!」


「ばか。お前生身の人間のほうが良いに決まってるだろ? 二次元もいいけど、やっぱリアルのボンキュッボンのほうが……」


「……」



そんなこと話してたんだ……。

ってか、よっしーオタクだったんだ。まぁ、言われてみればって感じの雰囲気はあるけど……。



「はぁ。お前らいい加減にしろよ。なんで俺達がお前らの散らかしたゴミ片さなきゃなんないんだよ」


「それは我らのファザー、木梨氏の役目っすから」


「お前らの父親になんかなった覚えなんかねーよ」


「そーなんすか? 俺らはいつも思っているっすよ?」


「あそ……」



ファザーって。

確かに木梨君みんなのお父さんみたい。


プルルルル

プルルルル


ん?

私の携帯だ。



「凛ちゃん電話なってるぜ?」


「うん。ちょっと出てくる。みんなちゃんと片しておいてね」


「しょーがねぇなぁ」



そういって渋々片し始めたリクを確認して、部屋の外に出た。

着信は誠からだ。



「もしもし?」


「やほー! 凛今なにしてるの?」


「え……あ、えーっとね……」



どうしよう。

男の子と一緒って言ったら絶対怒るよね?

しかも仕事中だろうから、余計な心配掛けたくないし……。

でも嘘もつきたくない……。



「凛?」


「あ、ごめんごめん。今アオイとカラオケ来てるの」


「そうなんだ! 珍しいね。凛がカラオケなんて」


「あ、うん。まぁね! 気分転換に!」


「いいなぁ俺も行きたい」


「行けばいいじゃん」


「馬鹿。凛とに決まってんだろ」


「私下手だよ?」


「そんなことないだろー」



よし。なんとか誤魔化せたかな。



「そーだってば。あ、この前の……」

「凛ちゃーん! これどこに捨てればいいの?」


「リク!?」



……。

最悪だ。



『……凛、カラオケってアオイちゃんだけじゃないの?』


「え、あの……」



どうしよう……。完全に怒ってる!

声がもう低くて怖いし!



「あ、やべ。なんか俺、まずい事しちゃった?」



リクが声を小さくして聞いてきた。

今さら小さくしても遅い!

リクに部屋に戻るよう合図して、ご立腹の彼に機嫌を直してもらうことに全力を注ぐことにした。



「あのね? これはアオイに誘われて行ったら男の子とか居て、私来る意味ないって言ったんだけど、その人たちみんな私と仲良くしてくれたかったみたいだから抜け出せなくて……」



……私最低だ。

このことアオイや、みんなのせいにしてる……。

悪いのはちゃんと誠に嘘ついたり、アオイに確認したりしなかった自分なのに。



「……言い訳はそれだけ?」



どうしよう。

本気で怒ってらっしゃる……。



「……ごめんなさい。でもね、新しい友達とかできたの久しぶりだったし、女の子の友達も出来て嬉しかったの。……今までアオイしかいなかったから……。ごめん。こんなの言い訳だよね。誠に偉そうなこと言う権利ないよね……」



昨日別れるとき浮気するなとか言っておいて自分がしてるとか。

本当に情けない。

なんか涙出てきた。でも今は泣いちゃいけない時だから必死に我慢する。



「……今週の土曜、仕事休みだからそっちに行く。今いるメンバー集めておいて」


「……わかった」



ブチ



あっちから切れた電話。

いつもなら私が切るの待っててくれるのに……。

それが悲しくて余計涙が出てきて、拭っても拭っても溢れてくる涙を誰かに見られたくなくて、急いでトイレに駆け込んだ。



「……ッ……ヒック……なんで……ッ……こうなっちゃうんだろう……」



しばらく涙を流していると、誰かがトイレに入ってきた。

まずい。こんなカッコ悪いところ見られたくない。

そう思って込み上げてくる嗚咽を止めようとするけど、なかなか止まらない。



「凛? そこにいるの?」



なんで……美香が?



「美香……?」


「やっぱりここだ。出てきて。さっきリクのやつがなんかしたんでしょ?」


「ううん。リクは悪くない。私が本当のこと話さなかったから……」


「本当のこと? とりあえず話したいから出てきな? 泣き止んでからでもいいから」


「……うん」



美香優しいな。

今日会ったばかりの私に優しくしてくれるなんて。

さっきまで酔っていたはずなのに、今はそんな素振りを見せない美香がかっこいいと思った。

トイレから出ると、心配そうに眉を下げた美香が居た。



「凛、大丈夫? なにがあったか話してくれる?」



黙って頷き、さっきの出来事を話した。

誠と兄妹ってことは伏せて……。



「そっか。話してくれてありがとう。土曜日はみんな空いてると思うよ? いつもあたし達土曜に遊んでるから」


「そうなんだ。本当にごめんね。せっかく楽しいカラオケだったのに……」



私が謝ると、美香は笑って、私が言われて一番嬉しい言葉を言ってくれた。



「謝らなくていいよ! あたし達会ったばかりだけどさ、凛もアオイもただの友達なんか思ってないから。あたし達はもう親友だよ? だから、親友に遠慮はしなくていいよ。今部屋にいるメンバーもみんな親友。ってか仲間! だから無理すんな」



そう言って頭を撫でてくれた美香。

嬉しくて嬉しくて、また出てきそうになる涙を堪えるのに必死だった。


それから戻ってみんなに謝り、土曜日のことを聞いたら全員快く承諾してくれた。

リクも謝ってきてくれたので、慌てて止めた。

だって悪いのはリクじゃないもんね。それにあのまま嘘ついていたら余計に、後ろめたくなっていたと思うから、ある意味言うチャンスをくれたリクには感謝もしている。


そういうとリクは「女神やー!」と騒ぎ出し、みんなが一斉に笑った。

もちろん私も。


それからみんなでメアドを交換して、家に戻った。


みんな笑っててくれて良かった。

しょんぼりされたら余計に申し訳なく思う。


今日は火曜日。

誠が来るのは土曜日。

なにをするのかは分からないけど、今は誠とみんなを信じる。




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