新しい仲間ができました。
「うあー……暇だー……」
家のソファーで若干死んでる私。
なんだかなぁ。
昨日まで楽しかったから暇だなぁ。
講義午前中で終わったし。
プルルルルル
プルルルルル
誰だー?
……アオイだ。
「もしもーし」
「あ、凛? 暇でしょ? 今から行くね!」
「え、ちょっと! アオ……イ」
切れた。
いきなりだな。
まぁ、いっか。たぶんあっちも彼氏のことで進展あったんだろうし。
またガールズトークか……はぁ。
ピンポーン
……早い。
「はーい。開けたよー」
「オッケー」
モニターを操作して、鍵を開けるとアオイが入ってきた。
ちなみに今日もママとパパはいない。パパは仕事で、ママはママ友さん達と遊びに行くとか言ってたっけ?
「凛ー!」
「わっ! イテッ。どうしたの?」
いきなり抱きついてきたアオイのせいで壁に頭ぶつけたー……。
たんこぶにならなきゃいいけど。
「悠くん私のためにバイトしてくれてた!」
「え?」
「この前電話したら正直に話してくれたんだ! 凛のおかげだよー。ありがとう!」
「私は何にもしてないよ。それよりアオイさん?」
「うん?」
「そろそろどいてくれないかな?」
私に抱きついたまま話していたアオイが慌てて退く。
「あ! ごめんごめん。さ! 凛! みんなと遊びに行こう!」
「え!? ちょっと待って! 話が読めない。何いきなり。みんなって誰? どこに行くの?」
「いつだったか大学で同じ講義受けてる美香達のグループと仲良くなって、今度遊ぼうってなったの! んで、その今度が今日! みんなでカラオケだよ!」
「カラオケ!?」
いやいや、無理無理。私人前で歌うの苦手だし。
というか、美香さんって誰?
いまいち意味が分からない。
「さ、これ着て。メイクは今のをちょっと直すだけでいいから! 待たせてるんだ。行こう!」
「えー。ってか、この服どこから持ってきたの?」
「凛の部屋だよ? ささ、お早くー」
あの考え事していた一瞬の隙に?
恐るべし、アオイさん。
「もう」
「すいませーん」
謝る気ゼロですね。
カラオケ……か。暇だったしいいかな?
歌わなければいいし。
散々せかされて、やっと準備ができた私の手を引っ張って行くアオイ。
部屋には既に四、五人の人たちがいた。
……知らない顔ばっかり。男の人いるし。
「おまたせー!」
「遅いよー、アオイちゃん」
「えへへ、ごめんね? あ。凛、紹介するね! このチャライ人が佐伯リクで、隣のメガネ掛けているのが木梨圭くん、その隣が木下美香ちゃん、宮内ライちゃんによっしー!」
適当な席に座って紹介してくれたけど……。
なんで最後の人だけあだ名?
「そうなんだ。でもこれって私が来る意味なくない?」
「だめですよー。凛さん居ないと意味ないですもん」
「そーっすよ。俺達のおごりなんでたっくさん飲むっすよ!」
「はぁ」
ダメだ。このノリについて行けない。みんなフレンドリーすぎるでしょ。
さっきは人前だから名前分かったフリしたけど、正直分からないし覚えていない。
しかも男の人はまずいでしょ。
誠が知ったら絶対怒るし、あの約束もなしになっちゃうかも……。
「あたし美香って言うの! さっき聞いたよね。よろしくね? 美香って呼んでいいから、凛って呼んでもいい?」
わ!
いきなり隣に来た美香さん。
この人が美香さんかー。美人だなー。
髪が明るい茶髪で見た目少し怖いけど……。
「あ、どうぞ」
「もう、堅いなー。敬語禁止ね!」
「……わかった」
「今日はね、みんな凛と仲良くなりたいなーって思って集まったんだよ!」
「え、そうなの?」
意外。
「うん! だから仲良くしようね」
「あー、うん」
女の子って感じの話のテンポに若干付いて行けない。
美香は見た目派手な感じの女の子だけど、あっちからいろいろ話してくれるから楽かも。
隣にいるラナちゃん(あってるかな?)は、おとなしいのかな?
あまり喋らない。
「美香」
「なにー?」
「そちらは……」
「あー! ラナだよ!」
「そうなんだ」
「あ、あの……よろしくお願い、します……」
「あ、よろしくお願いします」
ついこっちも敬語になっちゃったよ。
でもなんかオドオドしてて可愛いかも。
美香も美人だけど、ジャンルが違う。いかにも女の子! って感じ。
「もー、二人とも堅い堅い! お見合いか! 二人も呼び捨てで、敬語禁止ね!」
「わかった」
だけどこの二人が仲いいのって結構意外かも。
タイプが全然違うもん。
「凛、今あたし達のこと意外って思ったでしょ?」
「え! 私声に出してた?」
「出してないよ。でも顔には出てたかな」
そう言ってクスクス笑う美香。
うわー。
最悪だ。私ってそんなに顔に出るタイプだっけ。
「私達は幼馴染なんです……あ! ……幼馴染なの」
ちょ!
ラナ言い換えた! 敬語からタメに!
可愛い! 俯いて恥ずかしそうにしてるし!
でも幼馴染なら納得かも!
「凛さん! 飲みましょ? 歌いましょ?」
「そーっすよ! 初メンで俺らもテンションあがってるっす!」
「わっ!」
誰?
っていうかこの人たちもう飲んでるの? 昼間だよ?
美香とラナの反対側に座ってきた男の人。近いし。
「あ、あの……」
「もー! リクもよっしーも邪魔しないでよ! 私達が凛と話してたのにー」
「なにお前! もう凛さんのこと呼び捨てなの!?」
「くー! うらやましいっす! 校内一美人の方を呼び捨てとは!」
「なな! 俺らも呼び捨てで呼んでいい?」
え、やだ。
誠に怒られる。
「あ、それは……ちょっと」
「くっくっく。佐伯氏、振られたっすね!」
「ちくしょー。じゃあせめて凛ちゃんは?」
「まぁ、それなら……」
「よっしゃ!」
……うわ、付いていけない。
美香ー助けてー……って。アオイ達の所行っちゃってるし。
「おい、佐々木さん固まってるぞ。初めてで緊張してるんだろうからほどほどにしてやれよ?」
来た! 救世主!
黒髪でメガネ掛けてて知的な感じ!
名前なんだっけ?
「なんすか! 木梨氏だって仲良くなりたいから今日来たんすよね?」
「そーだぞ、圭。俺らはその緊張を解いてやろうとしてるの」
思い出した! 木梨圭くんだ。
んで、さっきから語尾に「~っす」って言っているのがよっしー? さんだよね?
茶髪でいかにもチャラそうな人がリク?
おぉ! 人の名前を会って数時間で覚えられるとか、私成長したかも! 前まで二、三日必要だったからね。
「お前ら飲み過ぎだ」
「そんなことないっすよ!」
「そーだぞ! まだ俺の体は酒を求めている!」
なんか居ずらい雰囲気。
木梨さんを見ると「あっち言っていいよ」と言ってくれたので、お言葉に甘えてトイレへ。
なぜトイレかって?
この空気に耐えられないんです!
アオイは知らん振りして美香とラナと話してるし、木梨くんたちはまだ言い合ってる。
でもさ、なんかね……暖かい。
なんでだろうね?
私もこの仲間に入れて欲しいって思う。こんなの初めてだ。
これからこの人たちと仲良くするのかと思うとちょっと胸が躍った。