デレデレ兄貴と海です。
目的地に着いて、二人であーでもないこーでもない言いながら水着を選ぶ。
選び始めて一時間は経ったのになかなか決まらない。
「私この黒のやつがいい!」
「ダメだ! それ露出多い!」
そうかな?
普通にビキニだよ?
下のサイドが紐だけど……。
「しかも黒はエロいからダメ!」
「エロ……! で、でもそんなこと思っているの誠だけだよ!」
「男の俺が言うんだからそうなの!」
……。
埒が明かない。
「じゃあ、この上にパーカー着るから」
本当は暑くて嫌だけど。
「……それ絶対脱がない?」
「泳ぐときも?」
「うん」
えー。さすがにそれはないでしょ。
「でも誠いてくれるでしょ?」
「あたりまえじゃん」
「なら大丈夫じゃない?」
「あ、そうか!」
……しっかりしてくださいよ、誠さん。
先にお昼を食べて海へ出発!
車に揺られて約三十分。
「海だー!」
車から降りた瞬間叫んだ私。
だってだって!
すごく久しぶりなんだもん!
「誠! 誠! 海だよ! 海ー!」
「知ってるよ。喜んでもらえてよかった」
車で水着に着替えて荷物を運ぶ。
早くこの暑苦しいパーカー脱いで泳ぎたい!
それにしても人多いな。
「よし、場所はこれでいいか。凛、泳ぎに行く?」
「行く!」
私のあまりのはしゃぎように誠はずっと嬉しそうにしている。
「じゃあ行こう!」
「うん!」
二人で入ってワーキャー言いながら浮いたり泳いだりする。
すごく楽しい!
「誠ー!」
「ん?」
「連れてきてくれてありがとう!」
そう言って笑うと、誠は顔を赤く染めた。
ん? 熱中症?
「誠! 熱中症気味なの?」
「え? いや、え、違うけど」
ではなんでそんなに戸惑っているんですか?
「だって顔赤いよ?」
「はぁ……」
人が心配してるのに横から失礼なため息が。
「なんでため息?」
「はぁあ……。俺、凛に一生かなわないかも」
「え? どういう意味?」
「こういう意味」
「えっ!わっ……ん……ぁ……まこ、と?」
なんでキス?
誠は唇を離して言った。
「俺のほうが凛のこと好きだから」
「……!」
一気に赤く染まる頬。
「あー、もうその顔誰にも見せたくない。凛、今日泊まるでしょ?」
「う、うん。そのつもりだけど……」
「じゃ、夜覚悟しておいてね。」
どうしていいか分からずフリーズする私を誠は抱きしめ、頭を撫でてきた。
「俺ね、今すごい嫉妬中」
「え?」
「やっぱ凛可愛すぎ。さっきから男達が見てる」
嘘でしょ?
「今俺が嘘言ってると思ったでしょ? でもこれは本当。嘘なら俺もどんなに嬉しいか……」
ずっと抱きついているから誠の鼓動が直接伝わってくる。
すごく早い。
ってか、今日の誠甘すぎ。
「誠、私は誰のものにもならないよ?」
顔を上げて言うと、誠が少し切なそうな表情で……。
「うん」
いつものテンションじゃない。
なんだか心配だけど、たまにはこういうのもいいか。
「ね、そろそろお昼ごはん食べよう? お腹空いた」
「うん……」
「……誠?」
ずっと抱きしめたままの誠。
どうしたんだろう?
「どうしたの?」
心配で聞いてみるけど無言。
「……俺さ」
「ん?」
「年上だから余裕な感じに見せてるけど……離れているときに本当は凛が誰かに取られたらってすごく不安なんだ」
「……」
「だから今日会えてすごく嬉しい。……けど、帰したくなくなる」
「……」
「あのさ……凛が大学卒業したらでいいからさ……一緒に住もう?」
抱きついていた腕を離し、目を見て言ってくれた誠。
いつもと違う真剣な目に胸のドキドキが止まらない。
「……」
「……泣くなよ」
「へ……?」
困ったような顔で涙を拭ってくれる誠のおかげで、自分が初めて泣いていることに気づいた。
でも、止めれらない……。
「お返事は?」
そんなの決まってるじゃん。
「私も……誠と一緒に住みたい……」
精一杯言ったけど泣きながらだったから、何言ってるか分からないかも……。
でもそんな心配は必要なく、誠はちゃんと分かってくれた。
「よかった……。ってか、凛泣きすぎー」
「だって……いきなりだったんだもん。私もずっと思っていたし」
「そっか。ごめんごめん。さ、そろそろ上がろうか? 人もだいぶ少なくなってきたし」
「え?」
辺りを見るとさっきまで大勢の人がいたのに今は半分もいない。
どれだけ入ってたんだろう、私達。
「ふふふ」
「ん? どうしたの? 凛」
なんか幸せだなって思ったけど恥ずかしくて言えないや。
「なんでもない! 夕飯はまだ早いから誠の家行こう!」
「なんだよもうー。 かわいい奴だなー」
「だから、そういうこと……!」
もう!
空が赤くなっていく中、私達は幸せな時間を過ごした。
このまま幸せな日々が続けばいいのにな。