デレデレ兄貴の登場です。
一定のリズムで心地よく揺れる車内。早くも睡魔に襲われている私。
約束が十一時で、家から誠のところの駅まで一時間半。
服やら髪型やらメイクやらでさらに一時間半。
余裕を持って七時半に起きたのになんかギリギリになっちゃった。
どれだけ時間かかってるんだろう。
でもそれが誠の為なら苦にはならない。
揺られたり乗り換えで約一時間半後。
やっと着いた。
改札を出ると、三週間ぶりの姿が。
「誠!」
私が呼ぶとうれしそうに駆け寄ってくる彼。
「凛ー! 会いたかった!」
勢いよく抱きついてきた誠。
だけどここは改札を出てすぐのところ。
人もたくさんにいる。
「ちょ、離して。みんなが見てる!」
小声で言っても一向に離す気配がない。
「見られてもいいよ。ってか、見せ付けてやれ」
さっきまでと声のトーンが違う。色気のある声。
それに顔が熱くなるのを感じながらも抵抗する。
「なに言って……ん……」
信じられない。
キスしてきたし。
その場で誠のスネを軽く蹴る。
「イタッ!」
瞬時に離す誠。
「誠が悪いんだよ? 私が嫌だって言ってるのにやめないから」
「だって……」
拗ねたような声にやりすぎたかな。と、少し反省……。
「凛が前より可愛くなりすぎて男の目線がうざいんだもん!」
だもん!って……。
前言撤回。
まだ足りなかったみたい。
このままやっいてもキリがないからスルーして違う話題を振ってみた。
「ところで今日どこ行くの?」
「スルーされた……」
……面倒くさいな。
仕方ない。こういう時は……。
「……ごめんね? でも久しぶりに会えたから早くデートしたくて……」
軽く俯きながら話す。
言ってるこっちが恥ずかしいわ!
「可愛い子ぶったってダメだよ? でも今回は許す!」
「ありがとう!」
やった!
なんか罪悪感あるけど、あっちも理解してるしいいか。
「あ、今日はさ、海行こう!」
「海!?」
なんで海?
うれしいけど……。
「でも水着とか持って来てないよ?」
「うん! だから今から買いに行こう。最近新しくできたとこに、いっぱい水着が売ってるって同僚が言ってたからそこに行く! 俺が選ぶ」
この目は本気だ。
誠はいっつも唐突。
ってか同僚のひとに何聞いてるの。
「お金そんな持ってきてないよ?」
「そんなの俺買ってやるから。さ、車乗って!」
「……うん」
なんだかなぁ。誠にうまく乗せられている気がする。
でも海好きだからいっか!
そう思って誠の車に乗り込むと、いきなりキスされた。
「ちょ……ん……はぁ……」
「凛可愛い。家に閉じ込めたい」
「それ……犯罪だから」
照れ隠しで言うけど、毎回誠とのキスは脳みそがとろけそうになるから困る。
やっと離してくれた誠は悪魔みたいにニヤリと笑った。
「よし、お仕置き半分完了!」
「え? お仕置き?」
私何かしたっけ?
「さっき可愛いことしてくれたお仕置きです!」
「まじですか」
やらなきゃ良かった。
けど……ううん、なんでもないや!
誠は大層機嫌がよろしいようで、ノリノリのまま目的地まで車を運転しだした。
私?
私は助手席で若干ぐったりです……。