いろんな意味で死にそうです。
「はぁ……」
「凛……大丈夫? あれから全然元気ないよ? ご飯もまともに食べてないんでしょ?」
「……うん」
あの日からあっという間に数ヶ月が経ち、新年も迎え桜が咲き始めた頃。
あれから誠とは何も連絡を取らず、ママたちも知っているはずなのに気をつかってか、何も言わない。
もちろんクリスマス旅行も無くなった。新年も誠は帰ってきていない。
私はというと、ご飯はまとも取れず、みるみる痩せていった。
何を食べてもおいしく感じなくなってから、みんなはいろんなお店や手料理などを出してくれたけど、やっぱり食べられなくて謝るばかり。
本当に辛い。
「アオイ、ごめんね」
私が謝ると、アオイは必ず悲しそうな表情をする。
それが申し訳なくて、みんなの誘いも少しずつ断るようになっていた。
でもアオイだけは今日みたいに根気よく家に来てくれたり、ご飯を作ってくれたりしてくれる。
みんなも誘ってくれるけど、それぞれやることがあるから毎日ではない。
「凛謝らなくていいって。それより本当に心配だよ。みんなも心配してる」
「そう、なんだ」
もう、なんか嫌だな。
みんなにも迷惑掛けて何してるんだろう……?
「うん。あ、もうこんな時間だ! 今日は帰るね! また明日来るから。ちゃんとご飯食べるんだよ?」
「うん。ありがとう」
「いえいえ! じゃあね!」
にこっと笑って出て行くアオイ。
だけどその笑顔が少し悲しそうに見えてしまうのは気のせいなのかな?
何もすることがなくて、ボーっとしているとインターホンが鳴った。
「誰だろう……?」
栄養不足のため若干ふらつきながら玄関のドアを開けるけど、訪ねてきた人物を確認すると同時に思わずドアを閉めてしまった。
なんで?
なんでいるの?
「凛、開けて」
「なんで、いるの? 誠」
――誠。
数ヶ月ぶりに呼んだ愛おしい人の名前。
「凛、俺と顔を合わせたくないのは分かる。でも今はここ開けて」
「……」
渋々開けると、飛び込んできた数ヶ月ぶりの世界で一番大好きな人。
「誠……」
「凛ッ!」
「ひゃっ!」
私を強く引き寄せ、抱きしめる誠。
久々の誠。
ずっとずっと会いたくて堪らなかった誠。
その誠が今ここにいる。私を抱きしめてくれている。
変わらない誠の香り。
自然と涙が溢れてくる。
「凛。ごめん。ごめんね」
「……うッ……なんで……いる、の?」
「ずっとリクから連絡もらってたんだ。最初のほうは『かなり落ち込んでる』って。でももう俺にはどうすることも出来ないって諦めてたんだけど、昨日また連絡あって『凛ちゃんが痩せすぎてもう見てられない』って。それで居ても立ってもいられなくて来た」
そうなんだ。
リク……いつもありがとう。みんなも。
「俺さ、やっぱり凛と別れるなんて無理だ。この数ヶ月ずっとイライラして、凛料理とか凛の笑った顔とか思い出して……。一時期死のうと思ったこともあるんだよ? だからさ……別れるなんて言わないでくれ。凛が居ないともうダメなんだ……」
「誠……。私も、だよ。毎日毎日……誠のこと思い出して、ご飯食べれなくなっちゃって。本当に……会いたかった……」
「凛!」
抱きしめていた腕を緩め、顔を近づけてくる誠。
そして、数ヶ月ぶりにキスをした。
それは今までしたことのないような、優しい……本当に優しいキスだった――。