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遂に打ち明けてしまいました。

車に長い間揺られてやっと着いた我が家。



「よし、行くか」


「……うん」



うわぁ……。

お腹痛くなってきた。

誠も緊張しているみたいで、表情が硬い。

玄関の鍵を開けるとママが出迎えてくれた。



「おかえりー。あら、誠まで。二人とも怖い顔してどうしたの?」


「ただいま。……ママ、パパ居る?」


「パパ? リビングで夕飯食べてるわよ?」


「そっか」


「母さん。話したいことがあるからリビングに行こう?」


「なーに? かしこまっちゃって。いいわ。行きましょう」



靴を脱いでリビングに入ると、お風呂から上がったパパがビール片手に野球を見ながら夕飯を食べていた。



「おー。おかえりー。誠まで。久しぶりだな。なんかあったか?」


「ただいま」


「さ、二人とも。座って」



私達は誠たちが引っ越して以来、ずっと変わっていない定位置に座った。

私の隣に誠、誠の前にパパ。その隣にママ。

やっぱりみんなが揃うと落ち着くなぁ。



「んで、なに? 話したいことって」


「あのさ……」



異様な空気を察知したのか、パパは見ていたテレビを消し、こっちに耳を傾けた。



「俺達、付き合ってるんだ」



言ったー!

すごいね、誠。

本当に言っちゃったよ。



「え!?」


「あら、そのこと?」



驚いて危うくビールを落としそうになるパパとは反対に、落ち着いているママ。

しかも、そのこと? って?



「そのことって。ママ知ってたの?」


「あら、隠しているつもりだったの?」


「え?」



そりゃ、もちろんですよ。



「毎週毎週会いに行っていたらそりゃ分かるわよ。それに凛デートの前日とか、当日の朝によく歌ってたじゃない」


「え!」



私、またやっちゃったの?

確か、前にもアオイにそんなことを言われたような気が……。



「ちょっと待って! 話が読めない!」


「パパも!」



二人のほうを見ると、目を丸くして驚いてる。



「凛が歌ってた?」


「ええ、そうよ。たしかね……『あっしたはデート! まっことっとデート! たーのーしーみー!』みたいな感じだったかしら」



恥ずかしい!

なんでそんなこと今言うのさ!

チラッと誠を見ると、それはそれはとてもいい笑顔でこちらを見ていた。



「そんなに楽しみだったんだー」



誠さん。ニヤニヤが抑えきれてないです。

なのに変に抑えようとしているから面白い顔になってます!



「ちょっと! 三人とも待って。二人が付き合っている? どうして? いつから? なんで?」



次々と質問をぶつけてくるパパ。



「はいはい。この話はまた明日。凛。今日はお風呂に入ってもう寝ちゃいなさい。目の下のクマがひどいわ。誠。明日は仕事?」


「あ、うん」


「じゃあ終わったらまた家に来ること。今後のことを話しましょう」


「はい」



そう言うと、ママは食器を片し始めた。

パパはというと……状況がまだ分からないのか固まっている。



「凛」


「ん?」



誠に呼ばれて振り向くと、手を引かれて私の部屋に連れて来られた。



「なに?」


「凛。今は母さんああいうけど、まだ安心しちゃいけないと思うんだ」



真剣な誠の表情にこっちも釣られて真剣になる。



「どうして?」


「だってまだ母さんの意見を聞いてないし、親父も状況が理解できてない。……だからさ」


「ん?」


「もし、明日、俺達のことが反対されても別れないでくれよな……」



久しぶりの弱弱しい誠。

そんな誠を見ていたら、なぜか笑えてきた。



「あはは! 今さら何言ってるの。そんなの付き合ったときから覚悟は出来てるよ。たとえ、ママたちに勘当されても私は誠に付いていくから」



そうだよ。

そんなの当たり前じゃないか。

今私にとって一番大事なのは誠だ。



「そっか。俺も絶対別れないからな」


「うん!」



それからどちらからともなく軽いキスをした。

もう帰らなくちゃいけない誠を玄関まで見送る。



「じゃあ、また明日。でもなんかあったらいつでも連絡してね」


「うん、わかった」


「じゃあ、おやすみ」


「おやすみ」



誠を見送り、ママに言われたとおりお風呂に入ろうと自分の部屋に着替えを取りに行き、リビングの前を通るとママとパパの話し声が聞こえた。



「凛と誠が……。どうして……?」


「仕方ないでしょ。もう付き合っているものは付き合っているんだから」


「でもあの二人は血が繋がっていないとはいえ、兄妹だぞ? その二人が……。はぁ……」



ひどく落胆した様子のパパ。

さっきまでの幸せ気分が一気に吹っ飛んだ。

やっぱり言っちゃいけなかったんだ。

私達は兄妹だもん。ダメなんだ。



「そんなに落ち込まないで。あなたも今日は寝ましょう? 明日も仕事でしょ? あの子達のことは明日決めましょう。二人もいろいろ話したいこともあるでしょうから」


「そうだな……」



二人が立ち上がる気配がしたので、慌ててお風呂場に逃げ込んだ。

私達はこれからどうしたら良いんだろう。

好きなのに一緒になれないって、こんなにも辛いことなのかな……?

ねぇ、誠……。




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