なにやら大変なことになりそうです。
変態男の件とかいろいろあったけど、それから日々は平和に過ぎ、あっという間に季節は冬になった。
私と誠は初のクリスマス旅行を企画しているんだ!
誠の部屋でまったりしながら一緒にパンフレットを見る。
だけど今は十一月。
予約なんて取れるのかな? クリスマスって混むんじゃないの?
「もうどこでも良くない?」
「ダメだよ! 旅行なんて初めてじゃん。こういうのは俺大事にしたいの」
「はぁ。じゃあどこにする?」
「うーん……ここは? 部屋に露天風呂付いてるんだって!」
誠の指差すところを見ると、落ち着いた雰囲気の結構いい旅館。
『織鈴亭』っていうんだ。
どういう意味なんだろう?
「いいね。そこで決定」
「凛、ちゃんと考えてる?」
「考えてるよ。でも早くしないと予約取れないよ? 人気の宿って書いてあるのに」
「それもそうだね。じゃあ電話しようか」
「え?」
「ん? なに?」
「旅行会社に行こうよ」
「え? なんで?」
あれ?
「旅行会社で予約取ったら宿泊料とか前払いなんだよ?」
「あ、そうなの?」
「うん。たくさんお金持って行くより楽じゃない?」
「そうだね! 凛ありがとう」
「いえいえ。じゃあ行こう?」
「うん」
初めての旅行会社になぜか二人でドキドキしながらなんとか予約を済ませ、近くのお店をブラブラ見る。
誠はクリスマスを挟んだ五日間休暇を取るため、今日から旅行までずっと会えない。
変態男の事があってから誠とは一週間に一回会うようになっていたから、一ヶ月も会えないのはちょっと……いや、かなり寂しい。
だけどしょうがない。
私のために仕事頑張ってくれているわけだし。
そう思っていると、いつの間にか目の前に誠の顔があった。
「わっ!」
「凛、どうしたの?」
困ったように眉を下げて聞いてくる誠に申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
誠も寂しいって思ってくれているはずなんだ。
私だけ寂しいって言っていたら誠も困ると思う。
だからしっかりしなくちゃ。
「ごめんね。ちょっと考え事してた」
「考え事?」
「うん。誠、旅行までの一ヶ月忙しいんでしょ?」
「あー、そのことか。うん。でもちゃんと電話とかメールするから。俺浮気しないし」
「浮気したら怒るからね」
「分かってるよ。もうこんな時間だ。今日はもうバイバイだね」
携帯を見ると、もう七時。
電車で帰ると、家に着くのは八時半とかになっちゃう。
私はそれでもいいけど、誠が許してくれない。
女の子がそんな時間に出歩くなんて! って、うるさいから。
「……」
もう少し、このままで居たい。
まだ離れたくないな。
「凛?」
誠が心配そうに言ってくれるけど、やっぱり一ヶ月はキツイよ。
「俺、今日はあっちまで送ろうか?」
「え? でも……」
「離れるの、まだ嫌なんだろ?」
「それは……そうだけど……。でも悪いし。それにママ達に会っちゃったらバレるよ?」
そう。
まだママ達にはこの関係のこと内緒だからバレたら厄介なことになる。
それに自分の子供のように育ててくれたパパにも申し訳ない。
「でも母さん達、凛が毎週会いに行っているの知ってるんだろ?」
「ううん」
「え?」
いやいや、言えないでしょ。
たまにならまだ誤魔化せるかもしれないけど、毎週毎週会っているのを知っていてこの関係のこと気づいてなかったら逆におかしいと思うけど。
「あ、言ってないのか。じゃあ言うか」
「へ? 何を?」
「俺達のこと」
「え!」
嘘でしょ?
だめだよ!
「だってママ達に言ったら二人傷付いちゃうかもよ?」
「なんで?」
「なんでって……」
……なんでだろう?
私はなんでこんなにバレるのを恐れているの?
兄妹が付き合うなんていけないって事は知っているけど、元はといえば私達他人だし。
「大丈夫だよ。親父も母さんもこんなことでへこむ人じゃないでしょ。むしろ喜ぶと思うけど」
「そうかな?」
でもさ……。
私が親の立場だったらどう思うだろう?
我が子のように育ててきた子と、自分の娘が付き合っているなんて。
……んー、意外と大丈夫かな?
逆に嬉しいかもしれない。
いや、それはないか。
「よし、車に乗って」
「本当に言うの?」
「あたりまえ。思い立ったらすぐ行動!」
「はぁ……」
本当に、大丈夫なんだろうか……。
不安だ。
だけどここは誠に任せよう。
そう思い、車に乗って私の、私達家族の待つ家へ出発した。
だけど私達が思っている以上に現実は厳しかった。




