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男の怖さ、十分理解しました。

――突然ですが、女性のみなさん。

世間では女は男に敵わないと言われていますが、自分なら勝てるんじゃないかと思っている方いませんか?

実は私もそう思っている一人でした。

だって襲われたらアソコ蹴ればいいし、手足が塞がれてそれがダメでも頭突きすればいいしね。

でもね、やっぱり所詮女だから。

男には敵わないって言うのが今日、よーく分かりました。

……えぇ、本当によーくよーく。



「アオイー、やだよー」


「しょうがないでしょ。凛がいけないことしたんだから」


「でもさ、男の怖さって何? どんなことされるの?」


「まぁ、それはね。イロイロだと思うよ?」


「なんでいろいろだけ片言?」


「イロイロはイロイロだからだよ」


「意味分からない。……はぁ、行きたくないなぁ」


「もー! あたしの家でウジウジしないで、さっさと行ってきなよー」


「んー……」



現在誠の家に行きたくないのでアオイの家にて避難中。

行きたくないものは行きたくないし。

だけど行かなかったら、しばらく会ってもらえない……。

私はどうしたらいいの?

はぁあ……。

この大きなため息もさっきから何度ついたか。



「もー……行ってくる」


「おっ! いってらっしゃーい!」



私がこんな状態なのに、アオイさんは大変素晴らしい、いい笑顔で。

うらやましいですよ、本当に。

彼氏の悠くんともラブラブらしいし?


アオイの家を出て、バイクで駅まで向かう。

昨日からハマッちゃったんだよね。

ヘルメットは嫌だけど、体が風を切る感じがすごく気持ちいい。

前、誠にバイクは反対されたけどバレなきゃいいよね。

今は午前十一時くらいだから、お昼ごろに着くかな?


駅のホームに行き、ちょうど来ていた電車に乗り込む。

人がほとんどいない。

昼だから?


電車に揺られて一時間半。

やっと駅に着いた。

誠の姿を探すけど見当たらない。

昨日あんなに怒っていたしな……。

……寂しい。


でも私が悪いんだし、自分で行かなくちゃ。

そう思って歩くこと十分。

誠のマンションに到着。

勇気を出して、インターホンを押す……。


ピンポーン


……。


ガチャ。



「遅い」



出てきた誠は一言そう言い、強引に私を家の中に連れ込んだ。



「ちょっと……! 誠! 痛い……んっ……」



なぜここでキス?

というか、いつもの誠じゃないみたい。

誠に掴まれた手首が痛くて抵抗するけどピクリとも動かない。

逃げようとしても、誠の足に挟まれている状態だから邪魔で逃げることが出来ない。

これが俗に言う『壁ドン』ですね!

……たぶん。

というか、そんなこと思っている場合じゃない!

どうしよう、苦しくなってきた……。

やっと唇を離してくれた誠に文句を言う。



「んはぁ……! 誠! なに、突然。手首痛い。離して」


「やだ」


「え……?」



こっちを見た誠の目は冷めているというか、感情が読み取れない。

どうしたの? 



「靴、脱げ」


「え、あ、うん」



いつもと様子が違う誠に素直に従ってしまう。

私が靴を脱ぐと、手首を掴んだままベッドルームに引っ張られた。

部屋に入ると、ベッドに向かって突き飛ばされる。

起きようとしても、そんな隙を与えずに誠が覆いかぶさってきた。



「誠! ……ん、ふぁ……やだ……」



なんかいつもの誠と違いすぎて、別人みたいに思えてきた。

自然と涙が溢れてきたけど、そんなことお構いなしに行為を進めていく誠。

やだ……怖いよ。



「まこ、と……」



体が恐怖を感じ、震えてきた。



「ったく……泣くなよ」


「だって……誠が……」


「はぁ……お前が男を甘く見すぎてるんだよ。ごめん、手首痛かったよな……」



あれ?

口調はまだ怒ってそうだけど、いつもの誠だ。



「……」



いつもの誠だって分かっているけど、さっきの恐怖が邪魔してうまく声が出せない。



「凛、本当にごめんな。さっきの全部演技だから。お願いだからそんな目で見ないで……」



そんな目?

部屋の中にある鏡のほうを見ると、そこには怯えきった表情の私が映っていた。

優しく抱きしめてくれる誠。

そのおかげで体の震えは止まったけど、涙は止まらない。

なんでだろう、もう大丈夫なのに。



「誠?」


「なに?」


「もう、怖くないから大丈夫」


「そっか」



そう言いながら体を離した誠は、自分の指のあとが残っている私の手首を優しく撫でる。



「あのさ、一回服直して。我慢できなくなる……」


「え? あ、うん……」



さっきの乱暴で服がかなり乱れていた。



「凛、あのさ……」


「ん?」



服を直し、誠に向き合うとすごく悲しそうな顔をしていた。

なんで? さっきの私のせい?



「俺って、そんなに頼りないかな……」


「え……?」


「だって凛、連絡してくれなかったし……」



眉毛を下げ、しょぼんと項垂れる誠。

なんでそうなるの? 違うよ。

そう言いたいのに、誠の顔を見たら言えない。

だから誠がさっきしてくれたみたいにそっと抱きしめた。



「……凛?」


「誠、ごめんね。私、何回も誠に助けて欲しいって思ったよ? ちゃんと助け求めようとしてた。だけどね、もしそれがバレてみんなに何かあったらと思うと出来なかった……。誠と同じぐらいみんなのことが好きだから」


「そう、なんだ……。ごめん、力になれなくて」


「ううん、謝らないで。誠仕事だったんでしょ?」


「仕事なんて! ……凛が連絡くれたら絶対にすぐ向かった」



まるで駄々をこねる子供みたいな誠にさっきまでの恐怖心は一切なくなり、愛おしさが込み上げてくる。



「ダメだよ。仕事クビになっちゃう。誠にクビになられたら私困るんだからね。あと一年だよ? 一緒に住むまで」


「あ」


「だから、ダメ。でも今回はごめんなさい。私が悪かった。今度何かあったら電話するから。電話がダメだったらメールもするし」


「うん。ごめん。俺、なんで凛守れていないんだろうってすごく思って、昨日あんな言い方したんだ」


「そっか。じゃあおあいこだね」


「そうだね」



二人で笑って離れると、なんだか妙に照れくさかった。



「私お昼作るよ。もう一時だし」


「フフッ。そうだね。凛料理だ! 今日は何作るの?」


「うーんとね……」



ベッドから降りてキッチンへ向かう。

機嫌、直ったかな。



「今日は……って、材料ないね。買ってこよう」


「あ、そうだった。材料買ってないや」



普段料理をしない誠はいつも私が来る日には適当に材料を買っててくれるんだけど、今回はいきなりだったし、あんな状況じゃ無理だよね。

二人で出かける用意をして、車に乗り込む。

車内であまり会話はなかったけど、お互いが近くにいるだけですごく安心できて、もうそれ以上は十分だった。


――そして私は今日大切なことを二つ学んだ。

一つ目は男の人を甘く見るのはもうやめようってことと、二つ目はアオイの勘は当たる。


ちゃんと覚えておかなくちゃ。




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