お金なんて要りません。
「え……?」
なに、これ?
ポストの前で立ち尽くす私。
手には多額の現金。
たぶん五、六百万ぐらいはあると思う。
なんでこうなったかは分からない。
だっていつもみたいに新聞取りに行ったら大きい封筒があって、そこに入ってたんだもん。
とりあえずママとパパに報告しなきゃ!
「ママ! パパ!」
「あら、どうしたの?」
「凛ちゃんがそんなに慌てるなんて珍しいな」
のんきに朝ごはんを食べている二人の前にさっきの封筒の中身をテーブルに出して見せる。
すると二人とも顔をしかめた。
「なんだ? これは」
「凛、これどうしたの?」
「ポストに、入ってたの……」
「こんな大金……」
「とにかく、警察に持って行こう。こういうことは早めに対処したほうがいい」
「そうね。凛。後で一緒に行きましょう」
「う、うん……」
「俺は?」
「あなたは会社でしょ」
「……」
三人でとりあえず結論を出し、朝ごはんを食べることに。
「ご馳走様でした。俺は会社行ってくるけど、何かあったら二人とも連絡ちょうだいね」
「うん。いってらっしゃい」
「あなたもちゃんと仕事してね」
「分かってるよ。いってきます」
「いってらっしゃい」
そういってキスを交わす二人。
おーい。
ここにお年頃の娘さんが居るんですけどー。
お二人さんのお別れが終わってから、身支度を整えて警察に行くことにした。
警察に行くと、太った男の人が話を聞いてくれた。
でもすごくいい人だったよ。ちゃんと聞いてくれたし。お金は回収されちゃったけど。
長い時間座っていたからお尻が痛い……。
しばらくこんな状態が続くなら捜査してくれるらしいけど、今はただ様子見るだけしか出来ないんだって言われた。
そしてこの日は何もなく終わった。
次の日。
いつものように新聞を取りに行くと、今日は白い小さな封筒が入っていた。
それも私宛に。
「なんだろう? これ」
開けてみると手紙が入っていた。
『凛ちゃん。こんにちは。昨日のお金なんで警察に出しちゃったの? せっかく僕が凛ちゃんのために入れておいたのに。あ、いきなりでビックリしちゃったんだね。じゃあ今度はちゃんと言うね。あと、誰かにこの事言ったら君や仲間がどうるか考えてね。このセカイに他の奴らは要らないけどあいつ等を消したらきっと凛ちゃんは悲しむよね。だから今は何もしないよ。でもあいつ等が邪魔してきたら消すしかなくなっちゃうんだ。そこらへん理解してね。今夜十時に駅のコインロッカーに来て。鍵は封筒に入れておいたから。その番号のロッカーを開けてごらん。もっと凛ちゃんが喜ぶもの入れておくから。じゃあね。愛しているよ。俺だけの凛ちゃん』
「ヒッ……!」
……なにこれ?
気持ち悪い気持ち悪い。
封筒を良く見ると鍵が入っていて鍵には「073」と数字が入っていた。
しかもこれ……私の誕生日。
気味が悪くなって急いで家に入り、自分の部屋のベッドに包まった。
なんで?
なんなの?
気持ち悪い。
「うっ……っ……ヒック……」
なんで私がこんな怖い目に合わなきゃいけないの?
ママ達がリビングに戻ってこない私を心配して、何度か部屋に来たけど鍵をかけて「具合が悪い」と言ってそっとしておいてもらった。
助けてよ、誠……。
みんな……。
大学の講義に出てこない私を心配してアオイや、美香、ラナちゃんなど、他の人たちもメールくれたけど、大丈夫、と返して電源を切った。
何時間泣いたのか分からないけど、やっと泣き止んだ。
でもどうしよう。
お腹減ってきた。ベッドに籠ってからかなりの時間が経ったと思う。
「なにかあるかな……?」
部屋から出てキッチンに向かうと、ご飯にラップがかけてあって、隣にはメモ書きが置いてあった。
『大丈夫? 具合悪いなら、なおさら栄養のあるもの食べなさい。ママはちょっとお買い物行ってくるね』
ママ……。
具合悪くないって知ってると思うのに。ごめんなさい。
だからこそ、ママやみんなには迷惑かけないから。
ご飯を温め直して食べると、最高においしかった。
そして部屋に戻って計画を練った。
もちろん、変態さん用のね。