兄貴がお世話になります。
「みんな今日はありがとう。私の彼氏がごめんね……」
遂に土曜日。
おととい誠から連絡があって、土曜の一時にカラオケ集合になったからそのちょっと前にみんな集まってくれた。
「だーかーら! 謝るなって!」
美香……。
「そーっすよ! 元はといえば佐伯氏が悪いんっすから!」
よっしー……。
「ありがとう……。それにしても誠遅い。なにしてるんだろう……」
遅いから部屋を取って待つことにした。
それから五分後。
プルルルル
プルルルル
「あ、誠からだ。ちょっと待ってて」
「はーい!」
部屋から出て緊張しながら通話ボタンを押した。
「も、もしもし?」
「あ、凛―?」
ん?
なんか声がいつものテンションの気が……。
「うん。なにしてるの? みんな待ってるよ」
「全員揃ってる? ってか、俺が言ったときみんな何て言ってた?」
「揃ってるよ。即答でいいって言ってくれたよ? 本当にいい人たち」
「そっか。じゃあその人たちに代わってくれる? 一人ずつ」
一人ずつ?
なんでだろう? 誠今日来るんじゃないのかな?
「誠今日来ないの?」
「いいから。代わってもらって?」
「……分かった」
納得できないまま部屋に戻ってみんなにそのことを言うと、また快く承諾してくれた。
本当、みんな大好き。
「誠? 聞こえた? 今から変わるね」
「うん」
まずは私の隣に居る美香に代わった。
美香はさっと受け取ると、真面目な感じに話し始めた。
「こんにちは。凛さんと仲良くさせていただいている木下美香といいます。……はい……そんな! それは私が言いたいくらいで。……はい。分かりました。失礼しまーす」
結構ちゃんとしてるんだ。
なに話したんだろう?
次はリク。
自分がこうなった原因だと思っているからか、すごい緊張しているのが伝わってくる。
違うって言ってるのに。
「あ、あの、佐伯リクと申しまふ……あ! すいません……。いえ! もちろんそんな気持ちはありません。……はい、純粋に友達です。……はい……俺なんかがいいんですか? もちろんです。……はい、では後で。失礼します」
長かったな。
本当、なに話してるんだろう?
それからアオイ、ラナ、よっしー、最後に木梨くんが電話に出てくれて、私の元へ帰ってきた。
「誠、みんなになに言ったの?」
「凛をよろしくねって」
「……え?」
「嬉しかったんだろ? 友達増えて。凛が嬉しいことは俺も嬉しいんだ。だけど男共が凛に気があったりしないか確認したかったから、今日集まってもらったんだ。あと、大切にしてくれるかどうか」
そうなんだ……。
なんか誠がすごくかっこよく思える。
「フフッ。そっか。どうだった? 私の新しい仲間は。いい人たちだったでしょ?」
「うん。いい人たち見つけたね。大切にしろよ?」
「うん!」
「今日わざわざ集めてごめんって言っといて。あと、今度からこういうの報告して。俺も何もかもダメって言うわけじゃないからさ」
「そうだね。ごめん。今度からちゃんと言う! あと今度みんなを紹介するね」
「うん。今日はみんなで遊んできな。俺家に居るから」
「え! そうなの? じゃあ来れば良かったのに」
「だってあんな感じに言った後、どんな顔して言えばいいか分からなかったから電話にした」
「そうなんだ。なんか誠らしいかも。じゃあなるべく早く帰るね」
「うん。待ってる」
「はーい。じゃあまた」
電話を切ると、みんながなぜかニヤニヤしてこっちを見ていた。
「え、何?」
「いや、佐々原氏もそんな顔するんっすね」
「な! 女の子ーって感じの顔」
「凛かーわいいー!」
「幸せそうだったよ」
「誠さんはいい人だよ! 凛のことになったら怖いけど」
「たしかに。最初すごく怖い人かと思った」
「もー! みんな! ってか、ラナとか木梨くんまで……」
私が怒ってもみんな口元は緩んだまま。
「あ、誠さん何だって?」
「あー、今日は呼び出してごめんねだって。いっぱい楽しんで来いって言ってたよ」
「よっしゃ! じゃあこの前歌全然歌わなかったから今日は歌いまくろーぜ!」
「おー!」
やっぱこのメンバーだと楽しいや!
何時間かみんなで歌って(私は聴いているだけだった)疲れたのでお開きにすることに。
みんなと別れてから、家に早く帰りたくて自然と早足になる。
この前会ったばかりだけど、好きな人と会えるのはやっぱり嬉しい。
やっとの思いで家に着き、玄関のドアを開ける。
「ただいま!」
「凛、おかえり」
「ただい……え……」
出迎えてくれた誠。
でもその手は……真っ赤に染まっていた……。
なんで……?