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待ち合わせをしていたニアルとともに列車や馬車を乗り継ぎ、魔法の国の図書館にたどり着いた。
「ここが魔道図書館だよ。今開けるからね」
ニアルは扉を押し開けた。するとカウンターの中にいた少女が声をかけてきた。
「おかえりなさい、館長さん!お客さんですか?」
「うん、ちょっとこの国で探し物をするから、泊めてあげてほしいんだ」
「探し物?」
薫はここに来るまでの事情を手短に説明した。
「館長さん手伝ってあげたらいいじゃないですかー」
「いやでもね、もうこれ以上の面倒事は……」
「もー、めんどくさがりなんだから!」
少女は薫に向き直った。
「館長さん、今はあんなこと言ってますけど、きっとなんだかんだ協力してくれます!私もお手伝いできることはしますから、何かあったらいつでも言ってくださいね」
「うん、ありがとう。ところで、僕は水本薫。君の名前は?」
「あっ名乗るの忘れて失礼しました!私はソルマ=クレッセントと言います。12歳です!この図書館で司書をやってます」
「12歳で司書!?」
「えっへん!皆さん驚くんです!」
ソルマは得意げに笑った。
「では手始めに、お探しのものに関する本を調べてみませんか?ご案内できますよ!」
「ソルマ、まずは荷物を置かせてあげようね」
ニアルは苦笑いした。
「そうでした!置いてきたら、一緒に探しましょう!」
荷物を置いて、ソルマと書架のある部屋に入った。
「ふむふむ。はざまの塔……私も聞いたことはあります。謎に包まれすぎて本は少ないのですが……一番詳しく書いてあるのはこのあたりですかね。それでもほんのちょっとしか書かれていませんが」
ソルマは一冊の本を手に取り、薫に渡した。
「ありがとう」
薫はぱらぱらとページをめくった。
「あっこれだ。『はざまの塔は科学の国と魔法の国の間にある塔。中にはなんでも願いを叶えてくれる装置がある。装置へ向かう回廊には魔術防壁があり、非常に高い魔力を持つ者、あるいは魔力を全く持たない者しか通ることはできない』……瑠衣の言っていた通りだ」
「なんでも願いを叶えてくれるって良いですね~、むむ、でも……『願いを叶えるには願いに釣り合うと装置が判断した代償を要求される』……なるほど、なんでもとは言っても、タダでは叶えてくれないんですね。装置にたどり着くまでも『世界のどこかにある白い鍵と黒い鍵を使って扉を開ける必要がある』って、難しそうなのに……」
「代償……か」
二宮藤子は代償のことを知っていて願いを叶えようとしているのだろうか?瑠衣は、アサカは、知っているのだろうか。
二人がカウンターに戻ると、金髪の若い女性とニアルが話し込んでいた。ニアルがこちらに気づいて笑いかけた。
「あっ二人ともおかえり。いい本あった?」
「はざまの塔のことは何となく分かりました」
「そうか、それならよかった。王宮に入るツテ、見つかりそうだよ」
そういってニアルは金髪の女性を指した。
「こちらにいらっしゃるのがレイカ=クレッセント伍長。ソルマのお姉さんだ」
紹介された女性は片方の眉を上げた。
「王宮へのツテ?女王陛下に謁見したいの?」
ソルマは薫の方を向いた。
「薫さん、お姉ちゃんに探し物のことお話ししていいですか?」
「うん、お願い」
ソルマはレイカに事情を話した。レイカはふーむと首を傾げた。
「黒い鍵ねえ、そういえばそんなものあるって聞いたような……とりあえずまずは女王に話を聞いてみましょう。明日でいいかしら?」
「えっ、ありがたいけど、そんなすぐに会えるものなの?」
「当たり前でしょ、私は伍長なんだから」
伍長がどれくらい偉いのかは正直分からなかったが、翌日女王に会いに行く約束をした。




