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瑠衣と別れ、杏夏と薫は車に乗った。
「杏夏さん、やっぱり王宮に入るにはそれなりのツテが必要だよね、どうするの?」
「ツテなら心当たりがあるんだよね。今からそこに行ってもいい?」
「うん、分かった」
杏夏は車をしばらく走らせると、科学の国の大統領の公邸の前で停めた。
「さ、入るよ薫君」
「え」
当たり前のようにすたすた入っていく杏夏を、薫はあわてて追いかけた。
杏夏の話では、研究所の入構証があれば入れるエリアがあるらしい。
認証をクリアして部屋に入ると、モノクルをかけた男性が座っていた。
「やあ、こんにちは。お暇なら本でも一冊どうかな?」
「あなたは……ニアルさん?」
「そうそう!よく覚えててくれたね!ニアルだよ。今日は科学の国の大統領にいくつか本を見繕いに来たんだ」
ニアルは嬉しそうに持っていた本を置いた。杏夏が続ける。
「ニアル、ちょっと頼まれてほしいんだけど」
薫と杏夏はこれまでの事情を説明した。
「どうでしょう、協力してもらえないでしょうか」
「お願いニアル!」
「やだね」
するとそこへ衛兵がやってきた。
「シュバルッパさん、閣下がお呼びです」
「はーい」
ニアルはそのまま本を数冊持って奥の部屋へ入ってしまった。
杏夏は腕を組んだ。
「うーんどうしよう。ニアルくらいしかツテはないんだけどなあ」
「でもさ、杏夏さん」
薫は言った。
「無理とかできないんじゃなくて嫌だっていうだけなんだから、協力してくれるかも」
「そうかなあ……?……そんな気もしなくもない、かな……?」
しばらくするとニアルは戻ってきた。
「さっきの話ですけど、どうして嫌なんですか?」
「嫌に決まってるじゃないか、そんな状況の王宮に入れば絶対タダじゃ済まないし」
「そこをなんとか……中に入るところまでお手伝いいただければ、あとは僕がやるので」
ニアルは顎に手を当て、うーんと唸った。
「そうだな……まあでも、魔法の国の図書館までなら交通費をおごってもいいよ。何なら図書館に泊まっても良い。協力者は図書館で探したらいいんじゃない?」
杏夏は小さくガッツポーズをした。
薫は杏夏と研究所に戻り、荷物をまとめた。
すると政臣がやってきた。
「魔法の国へ行くんだって?」
「そうなんです。長期休暇をとって申し訳ないんですけど……」
「うん、それなんだけど」
政臣は二人から目をそらしながら眉を寄せた。
「杏夏さんの休暇は受理されなかったんだ。休暇取りすぎだって」
「え!?今年に入ってから40日しかとってないのに!?」
「まだ今年が始まって半年も経っていないのに40日は取りすぎだよ。ちょっと擁護のしようがなかった」
「そんなあ~」
杏夏はへたり込んだ。杏夏は弱弱しい声で言った。
「仕方ない、薫君1人で行ってもらうしかないかな」
「え、僕ひとり!?」
「しょうがないじゃん、白林教授がわからずやなんだから!」
白林教授が休暇を承認するんだな、と薫は思った。
政臣は薫の肩に手を置いた。
「何しに行くのか僕は知らないけどさ、魔法の国は研究のために時々行くこともあるし、いい経験になるんじゃないのかな?帰ってきたら色々聞かせてよ」
そうして、薫は1人で魔法の国へ行くことになった。




