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Clavis  作者: 松岸煉歌
7/17

6

杏夏とともに、薫は車に乗り込んだ。

「杏夏さん、多分瑠衣は魔法の国に向かったと思う」

「あーなるほど、確かにもう1つの鍵は魔法の国にあるからね。だとすると、駅に行けばいい感じかな?」

「多分そう、違ってたらごめん」

「大丈夫大丈夫!さあ行こう!」


車を十数分走らせ、駅に着いた。

「うんうん、装置もちゃんと瑠衣ちゃんの魔力に反応してる。とりあえず改札通っちゃおう!ほらこれ薫君の定期券」

「何で僕の定期券を杏夏さんが持ってるの……?」

「う、うーん、まあちょっと独自のルートで?」

怪しいことこの上ない。だが今は杏夏を信用するしかない。

改札を通りホームへの階段を駆け下りた。

「あっ、瑠衣だ!」

ホームには瑠衣が並んでいた。

薫はホームの人の波をかき分け、瑠衣の腕を掴んだ。

「瑠衣!」

「……!」

瑠衣は一瞬目を見開いたが、すぐ腕を振りほどいてホームを走り出した。

駅にアナウンスが鳴り響く。

「電車が遅れております。ご迷惑をお掛けし申し訳ございません。繰り返します……」

「薫君、当分電車は来なさそうだし、とりあえず捕まえたらOKってことで!」

薫は頷き、薫と杏夏は瑠衣を追いかけた。

すると、巨大な鎌を持った女性が瑠衣の前に降り立った。

「アサカ……」

アサカと呼ばれた女性は眉一つ動かさず言った。

「よく取ってきてくれましたね。その鍵は頂いていきます」

「これは私が手に入れたの!あんたなんかに渡すわけないでしょ!そんなことしたら……」

「病気の妹が死んでしまう、でしょう?……私にも妹がいますし、そちらの事情は分かります。……ですが、私には関係ありません」

病気の妹?薫は杏夏と顔を見合わせた。

アサカは鎌を振り上げた。

「瑠衣、危ない!」

薫は瑠衣を突き飛ばしたその瞬間、ガラス片のようなものが薫の頬を突き刺した。

「痛っ!」

頬を触ると、濡れた。

「ガラスじゃない、氷だ……」

「薫君、大丈夫!?」

駆けつけた杏夏は、アサカにスプレー缶を向けた。アサカは顔色一つ変えない。

「……それは、魔力を変換するスプレー缶ですね。残念ですが、私の方がより魔術ランクが高いので、あまり効かないと思いますが」

「魔法が、効かない……」

薫は逡巡した。魔法が無理なら、物理は?

「申し訳ないけどくらえ!」

薫はスプレー缶をひったくり、そのまま投げつけた。

「きゃっ!」

バランスを崩したアサカは倒れ込んだ。その隙に、薫は瑠衣を引っ張り、杏夏とともに改札階へのエレベーターに乗り込んだ。


改札階に着くと、3人でエレベーターを降りた。

瑠衣はポケットの中を探った。

「ああ、やっぱりアサカに取られたわ、鍵」

「瑠衣はどうしてこんなことを?」

「はざまの塔で願いを叶えるためよ」

瑠衣は続けた。

「二宮藤子、ていう女がいるの。彼女は魔力が高いから、願いを叶える装置の目の前まで行けるんだって」

薫は唾を飲み込んだ。杏夏から聞いた名前、そして研究室で会った女性と同じ名前だ。

「魔力が高くないと装置の目の前に行けないの?」

「そうね、強い魔術防壁があるから、対抗出来るだけの魔力がないと進めないみたい。あるいは、魔力が全くない人も防壁に邪魔されないから進めるようだけど」

瑠衣は壁にもたれかかった。

「手下たちの中で貢献度が最も高い者に、装置を使ってなんでも願いを叶える権利を与えると言っていたの。私も手下だし、さっきのアサカ=クレッセントっていう女も手下の1人。正直アサカは自力で装置にたどり着けるはずなんだけど……」

杏夏が尋ねた。

「これから二宮はどうするつもりか、瑠衣ちゃん分かる?」

「今度は魔法の国の王宮に乗り込んで、女王から鍵を奪うつもりみたい」

薫は口を開いた。

「じゃあ、魔法の国に行かなきゃいけないってことだよね、杏夏さん」

「そうだね、二宮に鍵をとられる前に確保しなくちゃ」

それを聞いた薫は瑠衣に向き直った。

「行くところがないなら、ついてきて協力してくれないかな?」

「ありがたいけど、私は行かないわ」

瑠衣はポケットに両手を入れた。

「待たなきゃいけない人がいるし。だから私はいいのよ、二人で行ってきなさい。……幸運を祈るわ」

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