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Clavis  作者: 松岸煉歌
6/17

5

翌日、杏夏は帰って来た。

薫はこれまでの顛末を話した。

「……というわけなんだ。……ごめんなさい、引き出し開けちゃって…」

「うーん、もうそれはいいよ、いいんだけど……取られたのはちょっと厄介だな……」

杏夏は丸眼鏡を上げた。

「実はね、君と私はあの鍵を取り返すために、二宮藤子という人物を追っていたの」

「それは誰?」

「鍵を手下に集めさせて、自分の願いを叶えようとしてるの。それがなんなのか分からないけど……少なくともあんまり良い願いじゃないのは確か」

「願いってどういうこと?」

「ああ言い忘れてたね、はざまの塔っていう場所に願いを叶える装置があるんだけど、その装置の部屋を開けるために白い鍵と黒い鍵が必要なんだ」

そこで一度言葉を切り、杏夏は続けた。

「白い鍵は一度取られちゃったから、取り戻したところだったの」

「そう……だったんだ」

「でもまあ覚えてないのはしょうがないし、今回のことは気にしないで!それでも、赤盛さんから取り返す必要はあるから、手伝ってもらえると嬉しいんだけど」

「分かった、手伝うよ。僕は何すればいい?」

「とりあえずB-23のキャビネットに入っている機械を取ってきてほしいな」

「B-23だね」

薫は部屋を出て行った。


「鯨井、お前」

杏夏が振り向くと、白林が不機嫌そうに立っていた。

「……何でしょう」

「いくら薫の記憶がないからといって、あんな嘘をよくも……」

「あとで埋め合わせはします」

杏夏はぽつりと呟いて、薫のもとへ走っていった。


薫は機械を取り出しているところだった。

「ありがとう薫君!」

「これって入構証の管理システムだよね?」

「そうそう、入構証があれば居場所が分かるんだよね!よし、ここをこうして認証して……出た!……あれ、すぐそこの廊下?」

「入構証、捨てられてるっぽいね」

「そっか~まあ普通そうだよね~。仕方ない、これ使って追いかけよう」

杏夏はハガキの半分くらいのサイズの箱を取り出した。

「それ何?」

「魔力の残滓を探す装置。ちょっと出かける準備してくるから待ってて!」

杏夏は走って行ってしまった。


「……薫!?」

振り返るとそこには薫より少し歳上に見える女性がいた。

「ええと……もし前に会っていたら申し訳ないのですが…どなたですか?」

女性ははっと目を見開いたが、すぐ元の表情に戻った。

「……二宮藤子。それが私の名前」

「二宮藤子……!?どうしてここに?」

「どうしてってそれは……荷物を取りに来ただけよ」

「ここの研究員なんですか?……というか何故僕の名前を?」

「従姉妹。従姉妹なのよ、私達。私は隣の研究室にいるんだけど、これから長期休暇を取るから……」

藤子は薫の持つ装置に目をやった。

「その装置を使って、赤盛さんを探すんでしょう。彼女なら魔法の国に向かったはずよ。ここからだと列車で国境まで行くのが近いわね」

「貴女が瑠衣を従えているんじゃないんですか?なぜ瑠衣の居場所を?」

「別に従えているわけじゃないわ。何となくそういう流れになっただけ。じゃあ、もう行くね」

藤子はドアノブを掴むと、小さく呟いた。

「『薫の回復』……その願いはもう良いわ。本当に叶えたかった願いを、叶える」

薫にはその呟きは聞こえなかった。

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