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薫は葵とともに図書館に立ち寄った。葵はさっさと開架図書のコーナーに入っていってしまった。薫はカウンターにいるニアルにペンダントを見せた。
「そういえばこれ……」
「あーこれね、アサカちゃんに返しておいて」
「えっ?」
「はい、これは元々私の物です。……少しはお役にたちましたか…?」
いつの間にか隣にいたアサカは、表情の読めない顔でペンダントを受け取った。
「あなたはどうして姉さん……二宮藤子に従っていたんですか?」
「館長さんに頼まれたのです。鍵を取り戻すように、と」
ペンダントをかけながら、アサカはニアルをちらりと見た。
「妹が人質に取られているようなものですし、従う以外の選択肢はありませんでした」
ニアルはぎょっと目を見開いた。
「ちょっとアサカちゃん、人聞きの悪いこと言わないでよ!僕がソルマをどうこうするわけないじゃん!」
「すみません、冗談です」
冗談と本気の境目が分かりにくい人だ。薫は尋ねた。
「ところで妹って?」
「……まだきちんと説明していませんでしたね。レイカとソルマは私の妹です」
「名字が一緒だったでしょ」
声の主の方を見ると、葵だった。
「館長さん、これとこれ、借りますね。それと、薫に聞きたいことがあるのだけど」
「何?」
「はざまの塔で、薫はもう二度と過去を思い出せないというようなことを言っていたけど、あれどういう意味?」
「え、ああ、僕の願いを叶える代償として、思い出すはずだった記憶を渡してしまったから」
「え!?なんでそんな大事なもの渡したのよ!」
「自分を代償にした姉さんに言われたくないんだけど。それに、今の状況でも別に困ってないし……それよりも姉さんを失う方が取り返しがつかないと思ったから」
葵は大きなため息をついた。
「はあ、まったく……仕方のない弟ね」
「薫さん、杏夏さんから電話が来てます!」
ソルマに呼ばれ、薫は電話を代わった。
「もしもし、杏夏さん?」
「薫君!それで、どうだった?うまくいった?」
「うん、姉さんにも会えたし、願いも叶えられたし」
「……ん?願いを叶えたって、鍵使っちゃったってこと?」
「……あ」
そうだ、もともと鍵を取り返すという話だったのだ。
「あっははは!そっかそっか、使っちゃったか!しょうがない、君をだました罰が当たったってことだね!」
「だましたって何!?」
「もともと鍵を追っていたのは私だけで、薫君は関係なかったんだよね」
「ええ!?」
「ほんとごめん!お詫びに何か一つなんでもお願い聞くよ」
「なんでも?それなら……」
薫は天井を見上げ、何を願おうか考えた。




