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「ここだ……」
薫は息を切らしながら、扉にある二つの鍵穴を見た。一つの鍵穴には白い鍵が刺さっている。白い鍵に手をかけ抜こうとしたが、ソルマの言う通りびくともしない。
すると薫の肩を藤子が掴んだ。
「それは、黒い鍵が刺さらないと抜けないわ。同時に抜かないといけないのよ」
「でも、黒い鍵を刺した途端に、貴女はこの部屋に入るつもりなんだよね?」
「そうね」
藤子はあっさり認めた。
そのとき、薫の頭を鋭い痛みが襲った。薫は思わずしゃがみこんだ。息をするだけで痛みが増す。
「か、薫……?どうしたのよ、いきなり……」
藤子の声すら頭痛に響く。痛みの中で、薫はかつて見た夢を思い出した。
小さな実験室で対峙する女性。目の前の女性とよく似た人だった。
「ん……?」
薫の口から自然と言葉が零れた。
「……姉さん……?」
「……っ!?」
すると藤子は薫の手から黒い鍵を奪い取った。鍵穴に差し込み、回し、薫から逃げるように扉の中へ入っていった。痛みで立ち上がることもできない薫はそのまま取り残された。
「痛……これで、他の記憶も思い出せないかな……」
呟いてはみたものの、他の記憶が出てくる気配もない。やがて頭痛は小さくなっていった。
「あれだけ痛くて、思い出したのは姉さんだけか……しかも姉を『姉さん』と呼んでいたということしか思い出せないし。痛み損だなあ」
立ち上がり扉を見ると、扉は開いていた。
薫は意を決して、藤子を――葵を、追いかけた。




