12
薫は足元を見た。
「本当だ、影が消えてる……」
首にかけてから30分くらいしかもたない、ということは30分以内に鍵を取って帰って来なければならない。薫は走り出した。
「確か、この前来た時はこっちが玉座の間だった気がする、けど……ほぼ同じデザインがずっと続いてて分かりにくいな……」
扉をそっと開ける。中を見ると、玉座が見えた。
「ここだ!」
薫は中に駆け込んだ。玉座に走り寄り、玉座の背もたれの裏を見る。
「どれだ……装飾がゴテゴテしていて見分けがつかない……」
きらびやかな装飾は目に眩しく、目をくらませる。
「もしかして玉座の裏って……」
薫は座面の裏に手を入れた。これだ!
「あった……黒い鍵……!」
鍵をポケットにしまうと、出口に向かって駆け出した。
長い廊下を抜け、階段を降り、扉がたくさんある通路にたどり着いた。
「どれだっけ……確か、奥の方だったような……」
「出口に行きたいの?」
ふいに誰かに話しかけられた。咄嗟に足元を見ると、影がうっすら見えている。声のした方を向くと、そこには二宮藤子が立っていた。
「目くらまし……姿を消すのではなくて、そこにいると認識させない……なるほど、それなら自由に物を取れるわね」
藤子は呟くと、薫を見据えた。
「教えてあげてもいいわ。その代わり、私に鍵を渡してくれたらね」
「やっぱり鍵を狙っているのか?」
「そうだ、と答えたら渡してくれるの?」
「それはできない!」
薫は通路を走り抜けた。
たくさんの扉の前を通り過ぎたが、それらしい扉は見当たらない。だが違和感に気づいた。
「何で追ってこないんだろう……?」
薫は思わず振り向いた。
「……振り向きましたね」
その声とともに、何かが薫の顔を掠めた。
「冷たっ!……これ、氷か……?」
顔を上げると、アサカが鎌を構えていた。
「……鍵を差し出せば、見逃して差し上げます。……どうしますか?」
「渡せるわけない!」
薫は奥へ奥へ走った。後ろから氷の粒が降ってくる。それでももう振り向かない。
「多分これだ!」
薫は扉を開け、転がり込むように中に入ると、扉を閉めた。薄暗い通路を抜け、門の前まで来ると、レイカが待っていた。
「遅かったじゃない!心配したのよ!」
「ごめん、二宮藤子に追われて……」
「そう、やっぱりね。徒歩じゃ追いつかれるでしょう、こんなときは……」
レイカは大きく息を吸い込み、思いっきり叫んだ。
「キャラメルーーーッ!」
「おう!」
その声とともに、黄土色の毛をした馬がひらりと現れた。
「乗るわよ、薫」
「え、馬!?僕馬に乗ったことないんだけど……多分」
「そうなの?じゃあ今回が初体験ね!」
「ええっ!?」
薫はレイカの手を借りながら、何とかキャラメルに乗った。
「おいおいビビんなよ!こっちまで緊張すんじゃねえか!」
「この馬なんで喋るの!?」
レイカはさらりと言ってのけた。
「そういう馬だからよ」
「よし、相棒と乗馬初心者の男!行くぜ!」
キャラメルは颯爽と走り出した。




