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「薫君、ちょっと」
ニアルは出発の支度をしようとしている薫を呼び止めた。
「これ、持っていくといいよ」
それは十字のペンダントだった。
「何ですか、これ?」
「一時的に目くらましの魔術をかけているんだ。こういうの何かと便利でしょ?首にかけた人の魔力を消費しながら効果を発揮するから長持ちすると思うよ」
「僕、魔力ないらしいんですけど…」
「うわマジで!?それなら……」
ニアルはペンダントを握りしめ、ぐっと力をこめた。
「とりあえず僕の魔力を入れておいたけど、首にかけてから30分くらいしかもたないから頑張って!目くらまし出来てるうちは影が消えるから、影が見えてきたら魔法が切れかけてるサインね」
レイカは横からペンダントを手に取り、まじまじと見つめた。
「へえ、いいわねこれ」
「これ使ってる間はレイカちゃんは近づかないでね。レイカちゃんの魔力に影響されちゃうから」
「首にかけた人の魔力を消費するんでしょ?魔力だけはあるし、私が着けちゃだめなの?」
「レイカちゃんの魔力は強すぎ、ペンダントが壊れる」
「ふーん……なんかこれ、見覚えがあるのよね……ま、いいか」
レイカは薫にペンダントを返した。
「じゃあ、行くわよ。忘れ物はないわね?」
「うん、大丈夫。行ってきます」
「行ってらっしゃーい」
王宮へたどり着くと、門は衛兵達に守られていた。
「何かさ、衛兵の数が多くない?」
「そりゃ今日は女王陛下がいらっしゃらないもの。こっちから入るわよ」
レイカについて行くと、裏の使用人口に着いた。
「ここから入っていいの?」
「陛下が入っていいって仰っていたのだから良いでしょう。この国では陛下がルールだもの」
レイカは慣れたように門を押し開けた。薄暗い通路に二人の足音だけが響く。
扉の前でレイカが立ち止まった。
「私はここまでね。私はペンダントを持っていないし、見つかっちゃうわ」
「魔法で姿をくらましたりは出来ないの?」
「私、魔力はあるんだけど魔法が使えないのよ。いえ、厳密には泣けば魔法を使えるんだけど、ずっと泣いているわけにはいかないでしょう?」
レイカは背中をぽんと叩いた。
「あなたならきっと大丈夫よ。私は外であなたが逃げる準備をしておくから、行ってきなさい!」
「……うん、ありがとう」
薫はペンダントをかけ、扉を開けた。




