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リコリス・ミッドナイト・ヘブン  作者: ネオもろこし
千年の黄昏(ミレニアム・トワイライト)編

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第二十三話「螺錠門の決闘」1

第一章 十二の機械神


 京帝の地下深く、レジスタンス『夜烏(よがらす)』のアジト。鍾乳洞の湿った空気の中、白雪美流愛(しらゆき みるあ)たちは、じりじりとした焦燥感と共に待ち続けていた。


「……遅い」


 辰巳響たつみ ひびきが、貧乏ゆすりをしながら呟く。 彼女の視線は、地上へと続くトンネルの闇に釘付けになっている。 灯が「ケジメをつけてくる」と言って出て行ってから、数時間が経過していた。 夜が明け、また次の夜が来ようとしている。


「まさか、一人で突っ込んで死んだんじゃないでしょうね」


「不吉な予測はやめろ。……あの吸血鬼の生命力は、ゴキブリ並みだ」


 鉄鏡花(くろがね きょうか)が端末を操作しながら軽口を叩くが、その指の動きは僅かに速い。 天羽祈(あもう いのり)は、入り口で手を組み、祈るように立ち尽くしている。


 その時。 暗闇の奥から、重たい足音が響いた。 ズルッ、ズルッという、何かを引きずるような音。


「灯さん!」


 祈が叫び、駆け寄る。現れたのは、泥と血にまみれた久遠灯(くおん あかり)だった。 黒いコートは切り裂かれ、左肩には刃物で貫かれたような痛々しい傷跡が残っている。 だが、傷口からは湯気が立ち昇り、既に再生が始まっていた。


「……よう。待たせたな」


 灯は、壁に手をついて荒い息を吐いた。その顔色は蒼白だが、瞳に宿る光は、出かける前よりも遥かに強く、そして澄んでいた。 迷いが消え、獲物を狙う獣の目に変わっている。


「ひどい怪我……! 何があったんですか?」


「ちょっとした痴話喧嘩さ。……別れ話がこじれてな」


 灯はニヤリと笑い、懐から折れ曲がった「わかば」を取り出した。 美流愛が呆れたようにため息をつく。


「フラれた顔じゃないわね。……スッキリした顔してる」


「ああ。1000年分の未練を、墓場に置いてきた」


 灯は煙草に火をつけ、深く紫煙を吸い込んだ。 そして、全員を見回す。


「行くぞ、野郎ども。……準備はいいな?」


 その一言で、場の空気が変わった。 張り詰めた緊張感が、爆発的な闘志へと変換される。


「いつでもいけるぜ。アタシの充電も完了だ」 響が拳を鳴らし、青白いスパークを散らす。 「システム、オールグリーン。……いつでも殺れる」 鏡花が義手の駆動音を鳴らす。 「お供します、お姉様! そして灯様!」 双子がナイフを構える。「……はい!」 祈が杖を握りしめる。


「目指すは京帝の中枢、御所(ごしょ)。……そこにいるクソジジイと泥人形をぶっ飛ばして、アタシらの未来を取り戻す」


 灯は、吸い殻をもみ消し、出口へと歩き出した。


「カチコミだ。……遅れるなよ!」


「「「おう!!」」」


 雄叫びと共に、7人の魔女と百鬼夜行が動き出す。地下の暗闇から、地上の戦場へ。1000年の因縁に終止符を打つための、最後の行進が始まった。


 地下水路の湿った闇を抜け、私たちは地上へと這い出した。 マンホールの蓋が弾き飛ばされ、京帝の冷たい夜気が肺腑に満ちる。 雨上がりの夜空の下、目の前に立ちはだかるのは、巨大な朱塗りの絶壁だった。


 螺錠門(らじょうもん)


 京帝の中枢・平安京(ヘイアンキョウ)エリアへの入り口。 高さ50メートルを超える楼門は、物理的な防壁であると同時に、最強の結界の発生源でもあった。門の周囲には不可視の圧力が渦巻き、近づく者を拒絶している。


 だが、それ以上に異様なのは、門の前に整列している十二体の影だった。


「……出たな」


 灯がM500を構える。 彼らは静寂の中に佇んでいた。大きさは人間大から巨木のようなサイズまで様々だが、共通しているのは、全身を覆う古風な甲冑と、そこから露出する無機質な機械部品の融合。兜の隙間からは、呪いのような紫色の炎が漏れ出している。


十二神将(じゅうにしんしょう)』。


 烏丸保憲が召喚し、鏡花の技術を盗用して改造を施した、京帝防衛の切り札。 かつての英雄や武人の死体をベースに作られた「死体兵器(ネクロ・サイボーグ)」だ。


「……趣味の悪いフィギュアだこと」


 白雪美流愛(しらゆき みるあ)が、冷ややかに吐き捨てた。彼女は泥だらけのドレスの裾を払い、一歩前へと踏み出す。その両隣には、影のように双子の妹たちが寄り添っていた。


「お姉様。……あんなガラクタ、美学に反します」


「お姉様の視界に入れる価値もありません。……破壊しましょう」


 白雪亞莉愛(アリア)と白雪華琉愛(カルア)が、大型のククリナイフを抜く。


「許可するわ。……派手に散らかしなさい」


「「御意!」」


 双子が地面を蹴った。それを合図に、十二神将が一斉に起動する。 兜の奥の炎が燃え上がり、錆びついた巨大な武具が振り上げられた。


 ズゥゥゥン……。


 空気が震える。 圧倒的な質量と呪力が、津波のように押し寄せてくる。


「ビビってんじゃねぇぞ、野郎ども!」


 灯が、S&W M500の撃鉄を親指で弾いた。カチリ、という硬質な音が、開戦のゴングとなる。 彼女はニヤリと笑った。その不敵な笑みは、1000年前の悲劇の姫君のものではない。修羅場をくぐり抜けてきた、現代の解決屋の顔だ。


「道を開けろ! 1000年ぶりの里帰りだ、派手に出迎えろよ!」


「おおおおおっ!!」


 灯の号令と共に、レジスタンスの妖怪たちが雄叫びを上げた。恐怖を怒りに変え、抑圧された年月を牙に変えて。百鬼夜行が、機械仕掛けの神々へと雪崩れ込む。


 科学と呪術、妖怪と人間、過去と未来。 全てが入り乱れる、カオスな総力戦が幕を開けた。螺錠門の闇を、マズルフラッシュと魔術の光が焼き焦がしていく。

自分が読みたい物語を書いています。

可能な限り更新できるようにしていきたいなぁと思っています。

(制作に関してAIを利用しています)

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