エピソード0
「父からの手紙」を書くきっかけになった、ビデオテープを見つけたときの話です。
つい先日テレビラックを整理していて、ビデオデッキも処分する?と夫と私で話していました。
ビデオデッキももういらないよね?処分する?と言いながら中を見たら、古いVHSテープが入ってました。
ラベルには父の字で「きむこの成人式」
両親が電器店に勤めていた関係で、お客さんに使い方を説明する為に父が、色々と新しい電化製品を試していたのです。
そのお試しの一つとして、私や妹の運動会や成人式などの記録を父がしていたのです。
とは言っても、素人の記録ですからカメラワーク等全く考えもせずに録画されたものなのですが。
意外にも使用できたビデオデッキなので、娘の運動会のテープを入れて見ました。昔、小学一年生の娘の運動会に来た父が録画してくれたビデオが手元にあったのです。
あれ?これ誰?といかにも年配の男性が歩いている様子を執拗に追いかける映像を見て夫が聞くのに、ああ、その人、お父さんの伯父さん、と答えた私には3年ほど前に届いた「父の手紙」が頭をかすめました。
「ああ!お父さんの手紙!あれ書いたのこの運動会の前の日やん!!」
この話を読んで下さった方はもうご存知でしょうが、その父の手紙が縁で私たち夫婦は五島列島まで、出かけることになりました。
その出来事を思い出したのはそれこそ、このビデオデッキの処分からのビデオ鑑賞がきっかけです。
センチメンタルな気持ちから、ビデオデッキとビデオの処分は先送りとなりました。
いろんな事件があって、今はもう小学校や中学校に気軽に入っていくことは出来ません。大伯父が「運動会か賑やかやな、ちょっと見に行こうか」などと思い立って小学校のグランドにいた事で起きた再会は、今の時代では起こり得ません。
子どもの安全を考えればそれは正しいのですが、少し寂しい気もします。
祖母とよく似たスラッと細身の大伯父と祖母似の父、遠い思い出のVHSのビデオテープの中で二人は笑っておりました。




