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8 キャスリィンとの会話

「ナタリア〜、テキストNの魔方陣の効率化の宿題見せて〜、お願い〜」

 当時、言ってきたのは、キャスリィン・ホライ。同じクラスの女生徒でピンクブランドをショートカットにした子爵令嬢。初等科の頃からの付き合いで、私と同様に騎士団の人と付き合ってるという共通点をもつ。確か、彼女のお相手は第三騎士団だったかな。幼馴染の伯爵家の三男で、三つ年上。彼女が卒業したら結婚するって言ってた。つまりは婚約している。ついでに言うと、私にカーライル様を紹介したのも彼女だったりする。


「キャスリィン、宿題は自分でしないと」

「そんな事言わないで、お願い。今度奢るからさ。ねっ」

「ダメって言っても、このままじゃ提出が間に合わない──仕方ないわね」

「ありがとう〜。持つべきものは、真面目な友よね。ねっ」

「ねって、もう」


 この友人は、いつもこんな感じだった。ちゃんと自分で勉強しないと、分からないところは分からないままだし、駄目だよ、って言ったこともある。そうしたら、『え〜でも、ナタリアみたいに真面目じゃないし、卒業したら結婚だし。ぶっちゃけ、卒業だけできたらOKかな』って。悪い子じゃないし、お互い様なところもある。それに、彼女──というか、彼女達の状況からすると、仕方がないかなとも思う。〝彼女達〟っていうのは、私みたいに文官を目指すのではなく、卒業後は領地に帰ったり、結婚する貴族令嬢のこと。所謂、昔ながらの貴族令嬢の進路というもの。そんな彼女達にしたら、魔方陣の課題なんて必要ないだろう。必要あるとしても、地理と語学、社交術くらいでしょう。


「──でもさ、ナタリア、貴女、カーライル副団長と別れるの?」

 私のテキストを写しながら、聞いてきたから、ちょっとビクッと反応する。

「えっ?」

「ウチの彼氏がね、言ってたんだ。最近、第二の副団長が家にも帰れず、貴女の所にも行けず、団の仮眠室で寝泊りしてるって」

「…………そうなんだ」

「どうしたの?何があったの?別れるの?」

「ううん……決めてない…………」

「そう、彼、結婚しちゃったもんね」

「う…………」

「でもよ、彼、結婚してからも貴女の所に入り浸ってたんじゃないの?」

「う……うん」

「何?喧嘩?──でも、貴女は喧嘩するようなタイプじゃないし──付き合ってから一度も喧嘩なんかしてないでしょ」


 確かに、彼と私は喧嘩をした事がない。そもそも喧嘩になる事すらなかった。彼はいつも優しげに微笑みながら、私の我儘を聞いてくれていた。まぁ、内情か分かった今となっては、悲しいだけ。だってそうでしょう、私はただのカモフラージュだったんですから。

 そう、彼は、私に、いや女そのものに興味がかなったんですから…………。



「そう言えば、知ってる?ルビー先輩の事」

 泣きそうになる私の瞳に気がついたのか、彼女はちょっと声を大きくして話題を変えてきた。

 モテンス男爵家の次女のルビー・モテンス。二年上の先輩。既に学園を卒業しているが、その名前は有名だった。燃えるような紅金色(レッドブロンズ)の髪の色気溢れる女性で、視線を絡ますだけで男達を虜にする、学園一の美女と言われた人。

「あの人、卒業してからどうしてると思う?」

「えっ?知らない」

「囲われてるんだって」

「囲われてる?それって、捕まってるとかじゃなくて、つまり、その、男と女的な?」

「そう、愛人。妾って言うのかな?」

「えっ、誰の?知ってる人?」

「クレイシュ・フォン・デ・サイハンディス第二王子殿下よ」

「第二王子殿下?本当?確か、別の方と御婚約されてたはずじゃない?」

「それでも──なのよ。真実の愛とか言ってるらしいわよ」

「真実の愛…………」

 またそのワード。カーライル様も言ってた。流行してるんですか?そんな乙女チックな言葉が。


「すっごいわよね〜。もう未来の側妃まっしぐら」

「でも、ルビー先輩って、私と同じ男爵家でしょ、王族と縁続きになんてなれるの?」

 そう、側妃を含んだ王族との縁続きになれるのは、伯爵以上の上級貴族家の出自が条件だ。余程の事が無い限りは、それが覆される事はない。例えば、英雄と呼ばれたり、聖女に認定されたりとか──物語の中の話。


「それはそれ、王族得意の血統マジックってやつじゃない?侯爵家に養子に入るとか」

「ああ、やっぱり」

「でも、ないか〜。あの人、頭悪いもん」

「えっ、やっぱりそうなの。学園の成績、下から数えた方が⋯⋯って、噂」

「ホントホント、下から数えた方がってより、確実に下」

「本当?」

「本当だって、だって、魔法陣力学のサウスウェイ先生がぼやいていたの聞いたもん。だから、テキストNの魔方陣の効率化の宿題早く見せてよ〜。これ出しとかないと、私もあの人みたいに先生に覚えられちゃう〜」


 宿題のテキストを取り出しながら、ついついルビー先輩と第二王子殿下の関係と、自分とカーライル様の関係を比べてしまう。

 先輩は、ちゃんと女として見てもらえてるんだ──イイなぁ。

 なんとなく、腹が立った。


【昊ノ燈】と申します。


読んでいただき、ありがとうございます。

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