表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

四話「どんな因果だ」


 予定通り、アンジェとクリスの顔合わせ後には交流を深めるようになり、たまに互いの家でお茶をしたり便箋でやりとりするようになった。二人は気でも合うのかで、飽きもせずにアンジェはクリスからの手紙を受け取ると嬉しそうに開封する。


 私たちももう十歳になる。オーディウス学園への入学資格は十四歳からなので、あと四年で試験である。


 私の背は相変わらず伸びぬまま。

 もはや慣れの領域に達しつつある。


「今日のお茶会はクリスも他のご友人も招待するそうです。楽しみですね!」

「変な輩がいないといいわね」

「もう。失礼ですよ、お姉様」


 今は馬車で移動しており、目指すはクリスの住む屋敷だ。田舎ともあって私たちが住む都から離れており、行くだけで一苦労である。

 その移動距離の長さからお父様やお母様は最初、クリスの家に行くことを心配そうにしていた。

 が、二年もクリスと交流を続ける内に何回も行けば、二人は慣れて送り出すようになった。

 つくづく娘を甘やかす親だ。


「手土産の調度品、気に入ってくださるでしょうか」

「クリスは友人からの贈り物ならきっと何でも喜ぶわ」

「そうですよね。クリスは優しいですから!」


 流石、主人公の友人ポジになる男というか。

 彼は懐が深くて温厚だ。そういうところがアンジェも気に入っている。私としては別に彼と関わりがあれば、何だっていいのだが。


 彼と会うにあたって、よく土産を渡す。代わりに彼からは、田舎で採れた新鮮な野菜をふんだんに送ってくる。

 都での贅沢な食事もいいが、たまにはこの野菜を使った庶民的な料理も悪くない。だから贈り合うことは継続している。


 そして今回彼への土産とする調度品だが、その多くは人伝に紹介された良質な物品だ。格安で譲ってもらっている為、私たちのお小遣いからでも手を出しやすい。


 何故格安で譲ってもらっているか?

 それはそのツテが私の言いなりだからだ。


 八歳の誕生日パーティーでクリスへ陰湿な嫌がらせをしていた集団だが、ちゃんと後日は個人的な茶会に誘った。

 文字通り、茶会である。ただそこで教養の差だったり、魔法によって実力の差を見せつけただけで。


『ひ……っ、ひっぐ、うぇ……』

『お、お姉さま、やりすぎでは?』


 アンジェですら同情する程に格の違いを見せつけてやれば、全員私の命令に逆らわなくなった。情けないことに泣き出す輩もいたな。

 メスガキの練習として踏み台になってもらったつもりなのだが……中には数人から何故か崇拝するように扱われるようになった。

 そいつらがたまに貢いだり、我が家に有利な条件で商談に付き合うようになったのだ。


 ……そこまでやるつもりは無かったが、都合は良い。使わない手は無いので、利用する為にも『仲良く』しているのだ。


 権力や財産のみに甘えず、コネクションを作ることも大事だと実感させられる二年だった。


「ごほっ、けほっ……」

「だ、大丈夫ですか、お姉様?」

「大丈夫よ。少しむせただけ」

「そうですか……最近なんだか時々むせますよね。お医者様に診てもらった方がよろしいのでは……?」

「アンジェは心配性ね。問題無いわよ」


 風邪を引いたのかもしれない。

 ……そうだといいが。


 原作ではアンジェは肺を悪くしており、時折咳が目立つ。それは彼女を蝕む呪いの影響である。

 彼女は衰弱死してしまうのだが、その予兆が咳だ。やがて動悸やふらつきが激しくなり、全身に力が入らなくなる。死期が近付く程、生活もままならなくなって入院を強いられるのだ。

 私もきっとそうなるのだろう。


 もちろん苦しいのは嫌だ。だが死んでメスガキなどというふざけたキャラを演じ終え、来世で勝ち組の人生を約束される為ならば、最後の試練とでも捉えればいい。


 最近こそマシになったが、メスガキでいることにまだまだ嫌悪感は拭えないな。こんなもの、屈辱でしかない。


 だが死ぬまでの辛抱だ。


「あっ、見えましたよ。クリスのお屋敷です!」


 田舎の空気は澄んでいて気持ちがいいが、どうも気が緩む。長居はしたくない。

 もう私が間に入らなくとも、クリスとアンジェは十分に仲が良い。二人は放っておいて、お茶会も適当に済ませるとしよう。

 クリスの交友関係に興味も無いし、こんなところで仲良しこよししている方が気がたるんでしまう。


 クリスの屋敷に着くなり、茶会は失礼にならない程度に消極的に参加した。


 類は友を呼ぶのか、クリスの呼んだ者たちは貴族社会での争いや化かし合いとは縁の無さそうな者ばかりだった。何せ私の呪いを聞いて、同情的な目を向ける者がほとんどだ。

 人の弱みを握ったり、揚げ足を取ることで成り上がった都会の成金貴族とは大違いである。メスガキムーブをしてもこちらがすり減るだけだろう。


 私は隙あらばメスガキとしてイキろうと心がけているが、相手は選ぶ。プライドが高くなさそうでまともな奴とメスガキは相性が悪いのだ。


 例えば前世の私が今私が演じるロリミア・ポッピンドールのようなガキに煽られたとて、無視するだろう。そういうことだ。


 まともな奴はメスガキなんて相手にしないからな。


「都から離れていたから、ここまで来るのに疲れただろう。今日は泊まると聞いているから、二人分の客室は用意している。休みたかったらそこで休むといいよ」

「まあ、ありがとうございます、クリス!」

「気前が良いわね」

「はは、それを言うか? 今日のお土産のクラシカルティーセット、都の貴族の間で流行っている高価なものだと聞いたよ。ロリミアとアンジェのお小遣いから買ったんじゃ、すごい痛手だったんじゃないか?」

「親切な友人が格安で持ち込んできたから、せっかくだし買っただけよ。でも私もアンジェもいつものセットの方が落ち着くもの。気に入らなかったら誰かにあげても良いわ」

「とんでもない。大事に使わせてもらうよ」


 アンジェは『親切な友人』という言葉に若干苦笑を見せているが、上辺を見れば間違ってないだろう。

 クリスも少ししてからそれに気付くと、「君ってやつは……」と少し呆れたような目を私に向けた。

 

 失礼な。別に合意の元で買ったのだから、問題は無いぞ。


 他の招待客も流行のティーセットに興味があるのか、クリスが実際にテーブルに乗せてみるなり物見遊山のごとく集まった。


 それを見計らい、私は自然と茶会を抜け出すことにした。


「アンジェ、あとは任せたわ。……少し疲れたみたい」

「分かりました。あ、でもお姉様、咳をしていらっしゃいましたから……まさか風邪を!?」

「違うわ。とにかく、あとは楽しんでらっしゃい」


 この茶会の空気は私には合わない。主催者や彼の友人たちは同類だ。相手を蹴落とすなんて思考は存在せず、純粋に仲良くしてこようとする。

 この場で意地悪なメスガキを練習がてら演じたところで、クリスやアンジェの顔に泥を塗るだけで意味は無い。大人しくするのが吉である。


 屋敷の執事に部屋を案内させるなり、周りから人の気配が消えたことで人目も気にせずベッドへと身を投げ出した。


「はぁ〜〜〜〜……」


 最近でこそメスガキムーブも板についてきたが、それでも自分を偽って気を張ってることに変わりは無い。それは思いの外、精神力を使う。

 こうした一人の時間も必要だった。


「それにしても、子どもは茶会やパーティーや勉強以外、やれることが無いな……いっそ私も商談に参加させてくれれば、退屈凌ぎにはなるんだがな」


 私の家より地味だが、上品さが目立つ部屋に私の幼い声が散開する。

 元々子どもは嫌いな為、子どもの声も嫌いだった。が、それでもたまには独り言を吐き出さないとならないくらいに精神的に堪えている。


「チッ……娘に甘い弊害か。商売や事業に全く関わらせてくれん。まあ私が携わったところで、見た目でナメられるのは目に見えているが……」


 腹立たしいな。人の第一印象のほとんどは見た目で完結するが、私は死ぬまでその見た目が問題なのだ。

 まあ子どもの姿で油断させて相手を最大級に煽ることに関しては、これ以上無い素材ではあるが……


 溜息を枕に吐いて顔を上げれば、邪魔なリボンのバレッタを取って適当にドレッサーの上に置いた。


「……このリボンとももう二年か」


 確か、アンジェが「お揃いが良い」とかほざいてなかなか買うものを決めなかった為、彼女が納得しそうな言い分で買わせたものだ。

 何故女はお揃いが好きなんだろうな……理解に苦しむ。

 

 だが、このリボンは子どもらしさを助長させるのでメスガキと相性が良い。アンジェにしては良いプレゼントだ。

 ただし鏡でリボンをつけた自分の姿を見ると叩き割りたくなる。


 ドレッサーの鏡で何年経っても変わらない自分の顔をひとしきり睨み見た後、持ってきた魔導書を取り出しては時間潰しに読んだ。




 茶会が終わってクリスの友人たちが各々帰った後、唯一クリスの屋敷に宿泊している私たちの晩御飯は、ここいらで育てられた採れたて新鮮の野菜料理だった。

 たまに食べる分には美味い。


 翌朝もベジタブルな料理がメインであり、葉物が主菜の朝食を食べた。クリスの父の持つ土地であるこの田舎では酪農も営んであるのか、濃厚なミルクを使ったシチューも朝からふんだんにいただくことになった。

 それを食べたアンジェは「こんなに美味しいのにヘルシーです! 食べても食べても罪悪感が無いです!」と頰を緩めていた。

 

 そんなに太ることに忌避感があるものなのか。


「お姉様は食べても食べても太らないのでずるいです」

「その分、頭を使ってるからじゃないかしら」

「わ、私が頭を使ってないみたいじゃないですか!」

「あら、そんなに過剰反応するなんて、もしかして図星?」

「〜〜〜〜っ! お姉様はいじわるです!」


 最近、アンジェは勉強も真面目に頑張るようになった。少しは成長したと思って、見直したのだが……このムキのなりようはまだまだ子どもだと感じさせられる。


「まあ、太らないのは呪いのせいじゃないかしら」

「えっ、呪いですか……?」

「ええ。身長はともかく、体重まで変わらないだなんて、そうとしか考えられないでしょ」


 私は十歳になってもなお、百二十センチ――つまり六歳の頃からミリ単位でも変わらないのだ。アンジェなんて百四十センチを越えたのに。

 そして体重も全く同じだ。どんなに測っても変化無し。アンジェと同じ食べ物を食べているし、彼女の体重は従来通りに増えているのに、だ。

 質量保存の法則も、ファンタジーの前では優先順位の低い決まりに過ぎぬのだろう。


「ご、ごめんなさい、お姉様。呪いだとは知らずに羨ましがって……」

「私が呪いのことをずっと引きずる陰気くさい人間だとでも思っているの? とっくに割り切ってるから、気にしなくていいわよ」

「……はい」

「まあ呪いにはたまに感謝するわね。アンジェと違って、食べた分のエネルギーがお腹じゃなくて脳にいくもの」

「お姉様は私が太っているとおっしゃられたいのですか!?」


 ショックを受けた様子で口を開くアンジェ。

 ちょっとした軽口だろうに。


 帰りは夕方だ。それまでどう過ごすかの話になり、アンジェとクリスが二人で駄弁るよう仕向けた。

 私は一人になるべく、屋敷の近くの森へと足を運んでいた。


 気の抜ける一人の時間は大切だ。余計に肩肘張らなくて済む。

 こんなイかれた状況でも私が私でいられるのも、こうして息抜きの時間を確保出来ているからだ。

 一人だと演じなくていいし、考え事にも集中出来るしな。


 アンジェも成長して私にべったり、というのは目に見えて少なくなった。他の貴族と交流するようになったり、クリスのような友人が出来たからだろう。私としても助かる。


 まあ元々原作でも、大人びてはいたが社交的な娘だ。放っておいても勝手に友人を作っている。


「さて、どうしたものか……」


 散歩コースにちょうどいい森を歩きながら思考を巡らせる。

 ファンタジー世界らしく一丁前に魔物が現れることもあるのだが、今の私であれば並大抵の魔物は魔法で蹴散らせる。特に気にせず、虫や小鳥が鳴く自然の中に身を置いていた。


 今議題とするのは、主人公との関わり方である。

 出会い方に関しては何パターンもの想定をして対策済みである。だが主人公との距離をどう掴むかについては、まだ完璧な計画を立てていない。


 メスガキとなれば奥手はあり得ないだろう。ズカズカと踏み込んでこその生意気なメスガキである。

 が、私は人気者にならなければならない。あまりにもくどい生意気さ加減では、煙たがられるだろう。


「まあ、今のところはギャップ萌え路線の方が適任かもしれないな」


 最初は他人に厳しい一面を見せ、何かの拍子で身内に甘い一面を見せる。するとその差にグッとくるかもしれない。

 アンジェやクリスを利用すれば簡単に出来そうである。


 我ながら非常にくだらない戦略を立ててしまったものだ。

 が、目標の為ならばプライドすら葬っても構わない。……それでもたまに自分でもゾッとするが。


「本当にくだらない……」


 長い長い茶番を自ら演じなくてはならない。それは屈辱極まりないが、報酬を考えると仕方なくやる気は湧いてくる。


「やれやれ、あと六年か」


 私が死ぬまで恐らくそのくらいだ。それまでにやれることは――


 と、森の中心辺りまで来た時だった。突如として進行方向で鳥の大群が一斉に羽ばたき、空の彼方へ消えていった。


「……何だ?」


 それは大きな獣が後者から飛び降りたような鈍い音が轟き、木々がざわめく程に揺れたからだ。

 何やら良くない気配がこの先にあるようだ。


 災い事には関わらぬが吉である。もし強大な魔物であれば、同年代よりかは腕に自信のある私でも厳しいだろう。


 逃げた方がいい。

 そう決断するのは早かった。


 ……が、近所にはクリスの屋敷が。更にそこにはアンジェもいる。彼らに何かあれば、私が考える学園でのメスガキムーブ計画が台無しである。


「偵察だけでも行くか……」


 もし音の正体が強大な魔物であれば、ただ逃げるよりも『どんな生態の魔物だった』と情報を持って逃げ帰る方が魔物の対処もしやすいだろう。

 念の為に警戒しながら音がした方へ足を運んでみた。

 

 すると予想通り、熊に似てかつ何倍もの巨体を持つ化け物が誰かに向かって牙を剥いていた。その誰かはアンジェやクリスと同い年くらいの黒髪の少年で、どうやら腰を抜かしているようだった。

 逃げようとしても恐怖で身がすくんでいるようだ。あれでは化け物――魔物の爪を振り下ろされても、避けられまい。


 ……見捨てるか。


 あの子ども、恐らくクリスの父が治める土地の人間だろう。

 だが私が助ける義理は無い。このまま素直に逃げ、知らぬ存ぜぬで通せば問題無かろう。触らぬ神に祟りなしである。


 その場を引き返そうとした。


 ……が、どうも襲われかけている男の子に既視感がある。知り合いではないだろう。服が庶民特有の素朴な布だ。

 ましてや昨日の茶会で見た顔ではない。


「既視感だけはあるんだが……」


 もし知り合いでなければ、『メルクラ』のネームドキャラクターか……?

 黒目黒髪の人間……


 ――まさか。


「《ヘルファイア》ッ!」


 私は急いで魔法を唱えた。すると私の眼前に現れた黒炎の弾が風を切って魔物の顔へ直進する。

 炎が命中すると顔だけ派手に燃え、魔物は身の毛もよだつ金切り声を上げた。ビリビリと空気を震わせる威圧感を無視し、隙を見て駆け出す。

 向かう先は呆けてアホ面を晒している男の元だ。


「お、おまえ、いったい……」

「こっち!」


 私の魔法の威力に驚いていたのだろう。四年間に及ぶ魔法の勉強の成果である。

 まあそんなことはどうでもいい。


 私は男の子の手を引っ張るなり無理矢理立たせ、二人で魔物から全速力で逃げた。

 魔物は不意打ちで現れたしつこく燃える黒い炎に四苦八苦しており、首を振ったり木を薙ぎ倒したりしている。が、炎による酸欠不足で弱るだろう。


 あとはこの地方の警備隊に任せよう。

 そして私たちは森を抜けるまで走った。


 森を抜けて魔物を撒いたのを確認すれば、私は村へ男の子を帰らせようとした。


「あとは道のりに進めば村のハズ。早く行って」

「ま、待ってって! まだ魔物から助けてくれたお礼を――」


 ()()いらん、そんなの。


「警備隊に報告しなくちゃいけないから。それじゃあね」

「せめて名前だけでも教えてくれよ! そもそも女の子一人で家に帰れるのかよ!」


 チッ、助けたことを後悔しそうだ。

 この男はどうしても私を引き止めたいようだ。その理由は魔物に襲われかけたところを助けたお礼だろう。いらんと言っているのに。


「どこの馬の骨かも知らない奴に名乗る名は無いわ」

「……確かに名前を聞きたきゃ先に名乗るのがフツーだよな。俺はレオだ」

「そう。それじゃ」

「いやだから待てって!?」


 おーい! と呼び戻そうとする声を無視すれば私は魔法を唱え、空を飛んだ。飛行魔法を取得していて正解だったな。

 少年の声を無視して屋敷の方へ向かえば、その内彼の声は聞こえなくなった。


「まったく……どういう因果だ……?」


 風になびく髪を抑えたり、風に当たる目を少し細めて先程の少年について思い返していた。


 この地方――それどころかこの国で唯一の黒目黒髪。そして『レオ』という名前。


 間違いない、彼は『メルクラ』の主人公だ。


 黒目黒髪のキャラはゲーム内では主人公を除き、存在しない。『レオ』という名前もデフォルトネームである。

 つまり十中八九、彼が主人公であることが証明された。


「……何で魔物に襲われていたんだ?」


 原作のゲームでそんな描写はあっただろうか?

 振り返ってみても魔物に殺されかけたという回想は無い。精々、『小さい頃に魔物に襲われかけたけど命からがら逃げた』と一文だけ出てきたくらいで……


 ……ん? もしやさっきのことでは?


「待て、私がいることによるバタフライエフェクトの可能性がある。慎重に見極め――」


 いや、どちらにせよ『主人公と私が学園で初めて顔を合わせる』のが前提のメスガキムーブ作戦、ほとんどが台無しにならないか?


「……」


 思わず天を仰いだ。

 クリスと仲良くなんかなるんじゃなかった。余計なことに首を突っ込んでしまった……

 そもそも『メルクラ』の記憶を叩き込まれてもなおあまり思い出せなかった一文の影が薄過ぎる。……まあ言い訳でしかないか。


「いや、再会は五年後だ。五年もすれば記憶なんて薄れてくれるだろう」


 確かに私は自負する程に可愛らしい顔立ちをしていることは認めよう。自分より年下に見える少女に助けられた記憶も、インパクトが強いだろう。

 だが、五年の月日は顔の記憶もぼんやりしてくるには十分な期間である。

 初対面を装うことは可能なのではなかろうか。


「……とりあえず、作戦は見直しだな」


 不測の事態はあったが、調整は可能な範囲だ。


 屋敷に戻って巨大な魔物がいたことを報告すれば、アンジェやクリスにはとても心配されたが、無事に警備隊に対処してもらった。


 しかし我が家に帰った時、アンジェから報告を受けたお父様やお母様からはうざいくらい説教を食らった。

 アンジェのバカめ……余計なことを。


クリストファー・リヴァン


ギャルゲーのやたら情報通な親友ポジ。顔は良く性格も温厚だが、あらゆる才能が平々凡々。

一説によると、ゲーム内では彼と結ばれるBLネタエンドも存在するらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ