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試験1日目

その日の夜、俺は学術都市にある屋敷の自室にいた。革張りのカウチに背を預けて、目を閉ざす。一日の疲れを癒しているように見えるだろうがそうではない。

昼に起きた俺は全然疲れていないし、俺の一日はまだ終わっていない。


暗い瞼の裏で意識を集中させる。そして魔術を発動させた途端、俺の視界が切り替わった。


「お待ちしておりました、ゼノン様」


安心感を与える慈愛と、同時に男を誘い誘惑するような妖艶さを孕んだ女性の声が、俺を包んだ。

視界の波長を合わせて、俺は目を開く。そこにはエリスの姿があった。


腰ほどまで伸びた輝くような黄金の髪に、宝石のような大きな碧眼。顔のパーツは左右対称と言っていいほど整っており、弧を描く艶美な口元が、隠そうともしない敬愛の念を伝える。

今日の彼女は黒いドレスに身を包んでいる。その起伏の激しい肢体と相まって、清楚な彼女の印象とは離れた妖艶さと色香を漂わせている。


エリスイス・エスティアナ。大陸の大国、デネス王国の第一王女であり、幼い時偶然出会った縁で俺の世界征服計画に賛同、協力してくれているアリスティア家の隠れた幹部だ。

彼女は()()()()()()()()()()、抱き締めた。


「ちょっ…………!」


俺は視界を占領した二つの柔らかな塊に驚きの声を上げる。


「ふふっ。照れているんですか?お可愛い……」


とろり、と溶けるような声が降って来る。男を誘う魔性の声だ。

触覚まで共有していなくてよかった。していたらしばらく椅子から立てないところだっただろう。


「……エリス、今後の話をしよう」

「今後、と言いますと、私とゼノン様の将来の話ですか?」

「違うよ!」


きょとんとした声に、俺は断固とした否を伝える。

エリスはそうですか、と残念そうな声を上げて、俺の身体である()()()()を下ろした。

この梟は俺の使い魔であり、連絡用にエリスに渡していたものだ。だがエリスが使い魔越しではなく、直接屋敷を尋ねてくるので、あまり使う機会は無かったが、ようやく日の目を見た。


「やっぱり監視は厳しいの?」


俺は残念そうに使い魔越しの会話を提案してきたエリスの姿を思い出して尋ねる。


「はい。敵対派閥の監視は数日前からついています。後は学院側、教団と思われる存在も確認しました。色々渦巻いていますね」


エリスは何でもないように言ったが、彼女はこの都市で最も警戒されている存在だろう。前期試験という意味でも、教団の敵という意味でも。その二つが交わる今、彼女は満足に動けない。


「そう。大変だね」


俺はしみじみと呟いた。

するとエリスは清純な表情の奥に僅かな揶揄いの色を宿して、「残念ですか?」と聞いてきた。


「いや、まあ、そうだね」


俺は面倒だったので適当に返事をした。

だがエリスは本当に嬉しそうに、その表情を朱に染めた。


「まあ……!それほど思っていただけたなんて。でしたら、今から参りますね……」

「無理だからこうなったんでしょ?」


俺は呆れ混じりに呟いた。


「不可能ではありませんが、ゼノン様にもお手数をかけるので、こういう形にしました」


俺にお手数、というと俺の側でも魔術による援護が必要ということだろう。

その程度は別にいいんだが、俺を動かすことを不敬だと捉える彼女にとっては許容できないのだろう。

何を言っても無駄だと分かっているので、俺は本題に入ることにした。


「派閥はどう?」


俺が尋ねたのは、前期試験のチームである『トリュプスの誓い』により結成された王国同盟の話だ。

エリスのような高貴な身分で、実力も兼ね備えた者の元には、同じ王国出身の学生たちがその庇護を求めて集まってくる。

そして彼女も王女として、それに応えなければならない。


「今のところは50名ほど」

「結構多いね」


学院の生徒数は550人強。その中で50人規模の同盟はかなりの大派閥だ。


「実際に試験が始まれば、もっと増えます」

「まあ、初試験の1年生とかは、実際に始まらないと危険度は分からないよね」


俺も試験の危険度が分からない1年生だけど。


「ポイント的には何点ある?」

「80点ほどでしょうか」


予想通り、戦闘能力に自信のない普通クラスの生徒が大部分を占めるようだ。


俺達の目的は、ポイント500点を集めることで手に入る『無制限』の学院への懇願権だ。

それを使い、学術都市内で蔓延る『モルドレッド教団』とかいう謎の組織を排除する手段を手に入れる。

彼らの目的は謎だが、人攫いを繰り返しており、エリスもそのターゲットだ。排除以外の選択肢はない。


具体的には、『無制限』を使い、モルドレッド教団に攫われたデルウェア帝国のミネルヴァ第一皇女の居場所を、運命を見通す全知の魔女であり学院の理事長でもあるアルフィアに教えてもらうのだ。


そのためには何が何でも500点集める必要がある。


「確認するけど、派閥の点数は君が使えるの?」

「はい。私が盟主なので、自由に使えます。使い道も隠し通せるかと」

「素晴らしいね」


エリスは確かなカリスマと実力で、派閥を完全に掌握しているらしい。

彼女が聞くなと言えば、誰もポイントの使い道には口を出せないのだろう。

なら俺は、エリスの派閥にポイントを集めるようにすればいいだけだ。


「ありがとうございます。…………ところでゼノン様は派閥は組まれたのですか?」

「ん?ああ、君の妹とその従者の子と組んだよ。共同研究をすることになったから、俺も少しはポイントを稼がないといけないんだ」


答えた途端、朗らかに微笑んでいたエリスの表情が、俺でもわかるぐらい硬直した。


「…………妹、と言いますとティーリアと?」


恐る恐る確認してくるエリスに、俺はうん、と頷いて答える。

それがきっかけだったのか。エリスは俯いて黙り込んだ。


「………あの子、いつの間に――――私の――卑しい―――消さないと」


梟の鋭い聴覚のせいで、小声でつぶやいている声の内容が聞こえてきた。

俺はゾッと現実の背筋を震わせた。女の嫉妬、コワイ。

俺は何も聞かなかったことにして、話を進めることにした。


「えっと、俺の方は―――」

「どこで妹と交流を?」


だがエリスは逃がさない。表面だけ取り繕った笑顔で、尋ねてきた。


「同じクラスのガーベラの方と知り合って『大墓地』で研究しててね。その後、ティーリアともって感じ、です」


変わらないエリスの表情に押されるように語尾は下がり、敬語まで使わされた。

めっちゃ怖い。今すぐ魔術の接続が乱れたってことにして、切ろうかな……。


「研究仲間、ですね?」

「はい。ただの研究仲間です」


ティーリアとガーベラは、『大墓地』で遭遇した神の名と性質を解き明かし、国に持ち帰りたい。俺は神の寝所の中央にあった何かに辿り着きたい。

同じ研究対象を持つ者同士の同盟だ。


そして研究のために、秘匿された『大墓地』の資料を閲覧する権限を獲得するために同盟を組んで、ポイントを稼ぐのだ。

俺はそんなことを簡略に、早口で、敬語でエリスに伝える。

すると、いつも通りの優しいエリスの笑顔に戻った。


「そうですよね。ゼノン様は節度を持って学友と交流される方ですから」


最後に釘を刺されたが、何とかなった。俺はほっと息を吐いた。


「後は研究室に入ってるよ。祈禱学研究室ってとこ」


そこに関してはポイントのノルマなんかは無いし、稼ぎに行くな的な警告もされたので、忘れてもいいだろう。

それは……大丈夫だよね?

ちらりとエリスの機嫌を窺う。彼女は考え込むような仕草を取っていた。


「どしたの?」

「……私が入学する1年前、祈祷学研究室の生徒が『無制限』の『乙女』を獲得したという話を聞いたことがあります」

「500点取ったのか……」

「噂、ですが」


エリスが入学する一年前ということは、今の4年生が1年生の時ということだ。

祈祷学研究室の4年生と言えば、あの頭の緩そうなチビ先輩だけだが。


「それって場違いなガキだったりしない?」

「そこまでは……。ですがそれ以来噂は聞きませんから、退学しているのかもしれません」

「……まあ、考えても仕方ないか。今年も大丈夫でしょ」


俺は能天気に呟いた。


「それよりも点を稼がないとね」

「はい。500点を集めるのなら、他の大派閥ともぶつかる必要があります」

「帝国派閥とか?」

「そうですね。王国派閥と同じ規模の派閥は帝国派閥だけでしょうが、それ以外にもガードゥの所属するバブブ公国派閥、聖人国派閥なども存在します」


やはり、国という枠組みは強い。ちなみに王国、帝国と同じく大国に数えられる聖人国の派閥が小さいのは、単純に魔術師の数が少ないからだ。


多方面に喧嘩を売る必要がある以上、作戦は必要だ。俺とエリスは夜遅くまで策を話し合った。

ほとんどはエリスの発案だったが、一つだけ俺も作戦を提示した。

エリスは渋っていたが、メリットがあることを説くと、しぶしぶ承諾してくれた。


俺は使い魔との視界を切断して、ベッドに横たわった。

今日は早めに寝て、明日に備えよう。


◇◇◇


翌日、俺は学院に来ていた。

連日学院に足を運ぶのは珍しいが、俺の意思ではない。

試験期間中は、一日の内、一定時間は学院の敷地内に居なければならないのだ。

そうしなければ、誰もが自身の屋敷内部に引き籠り、街中で派手な魔術戦になるからだ。

壊すなら学院を、巻き込むなら魔術師を。そう言う意図だろう。


今日は試験一日目だ。俺の胸元には金のブローチが輝いている。

ブローチの奪い合い、という戦いを前提にしたルールだが、学院内部は驚くほど静かだ。

俺は予想通りの光景に苦笑いを浮かべながら道を進む。驚くほどすいている道を。


人がいないわけではない。ただ、俺の姿、気配を魔術や五感で察した途端、ほとんどの生徒が離れて行くのだ。

気にした様子もなく歩いているのは、俺と同じ「Sの文字が刻印されたバッチ」を付けた生徒が多い。


俺は昨日も行った学食へと向かう。重厚な扉を押し開き、中へと入る。

学食内は、廊下とは比べ物にならないほど人がいた。

ほとんどの席は埋まっているが、普段の喧騒はない。

入ってきた俺へと視線を向けて、その一挙手一投足に目を配っている。中には魔術の準備を始めている者もいる。


なるほど。少人数でいるよりも、人の多い学食のような施設に集まったほうが、戦闘になる可能性が低い、ということか。ここで戦いを始めれば、意図しない敵を作るからな。

俺は受取口で料理を受け取って、学食内を見渡す。すると遠くに俺に向かって手を振るうガーベラの姿を見つけた。その横にはティーリアもいる。


「―――特級クラスだ……」「どの同盟だ?」


小さな囁き声が、所々聞こえてくる。


「お待たせ」


俺は料理を載せたお盆をテーブルにおいて、席についた。場所は窓際の端の席。

死角がない席を占領できているのは、ガーベラ、ティーリア共に有名人であり、特級クラスだからだろう。

そんな二人と席を同じくする俺にも、周囲から視線が降り注ぐ。


「遅いわね。早起きしなさいよ」

「したよ。にしても不機嫌そうだね」


俺は挨拶も無く嫌味を言ってきたティーリアの不機嫌を笑う。

その理由は何となく理解できるからこそ、面白い。


「…………そんなことないわよ」


ふいっ、とそっぽを向いたティーリアの端正な横顔に、揶揄いの言葉を投げかけた。


「戦う準備万端で来たのに、静か過ぎて気が抜けた?」


俺がそういうと、ガーベラがふふっ、と笑った。


「―――そ、そんなことないわ」


ティーリアはさりげない仕草で、ローブの内側に短剣をしまった。


「まあいいけどね。少なくとも数日は敵味方を探り合うだけだよ」


この前期試験、本質はブローチの奪い合いではなく、誰を味方に引き入れて敵に回すかという政治に近い。

個人のブローチ所持数は大した問題ではなく、自身の属する同盟にどれだけの点数があるかだ。

そのために同盟を拡大させようとするし、戦うにしてもその相手が自身の仲間の同盟相手であれば、仲間内の不和をもたらす。

戦うのは、同盟の線引きを済ませてからだ。


「どういうこと?」


未だにルールを理解できていないティーリアが、きょとんと首を傾げた。


「もし俺が王国派閥に喧嘩を売ったら、君たちも困るだろ?」

「そうねぇ」

「当たり前でしょ。私たちが裏切ったみたいじゃない」


ティーリアはデネス王国の第二王女、ガーベラはその臣下。二人とも、エリスが盟主を務める王国同盟に入らなければならない。

そんな二人が派閥に害をなす人間と同盟を組んでいるという事実は、王家の人間として失格だ。下手をすれば、2人が王国派閥から追放されることになる。

そしてその責任は俺に帰属し、俺は二人との同盟を失う。

そんなリスクが、この試験にはあちこちに潜んでいる。


「そういうことだよ。俺の敵が君たちの味方なら、俺は君たちの信頼を失うって話。一人三つの同盟に所属できるこのルールのせいで、敵味方が複雑に入り乱れるんだよ」


「……やっぱり面倒なルールね」

「それが醍醐味だよ」


俺はくすり、と笑った。


俺たちの席に、人が近づいて来る。普通クラスの二人だ。同じくしてティーリアとガーベラもそれに気付く。二人はバレないように魔術の準備を始めた。

早速来たね。醍醐味が。


「……あ、えっと、失礼します。少しお話があるんですが」


緊張したように、神経質そうな顔をした一人が話を切り出した。


「ああ、どうぞ、どうぞ。おかけ下さい」


上級生らしき二人に空いた席を進める。


「ちょっと…………!」


俺の方に姿勢を傾けたティーリアが、耳元で抗議してくる。

普段は凛々しいティーリアの声が意図せず柔らかくなり、その倒錯的な声音に俺はぞわりと背筋を震わした。


「ねえ、耳元で囁くのやめて?弱いから」

「―――死ね、ゴミ」


「あの、いいでしょうか?」

「え、えぇ。どうぞぉ」


ガーベラにキッ、と睨まれて俺とティーリアは背筋をただした。

…………ごめんなさい。


◇◇◇


「申し訳ありませんが、名は伏せさせてください」


2人は開口一番そう切り出した。

その姿も、幻術を纏っており素の顔を隠している。

それにティーリアたちも気づいたからこそ、警戒していたのだろう。


「ご用件はぁ?」


ガーベラが切り出す。神経質そうな顔を纏う男は息を呑んで、ゆっくりと話し始めた。


「同盟の提案に参りました」


その視線はティーリアとガーベラに向けられている。

俺には同じ席につく人間として視線は向けるが、その頻度は少ない。恐らくメインターゲットは王国派閥の二人だ。


「私たち二人はある派閥に属しています。ですが信用できないため、ティーリア様と同盟を組んでいただきたいのです」


それは裏切りの提案だった。



「その理由は?」


俺は横から口を挟む。二人は迷惑そうな表情を一瞬したが、すぐに取り繕い理由を話した。


「……確実に進級するためです。今の同盟は、何と言いますか不安定なので」


男はそこまでしか話さなかった。こちらがOKするまでは、どこの派閥に属しているのかを隠すためだろう。

だが俺はそれでも、彼らの同盟が何か薄っすらと分かった。


「……どういうこと?」


ティーリアが小声で聞いて来る。少し距離を話したまま。

…………ちょっと残念だ。


「どういうことって?」

「何で私たちと同盟を組んだら進級できるのよ」

「……進級に必要な点数は分かる?」

「馬鹿にしすぎ。5点でしょ?」


馬鹿だった。


「同盟点を使えば、15点で同盟員全員が進級できる」

「し、知ってるわ」


絶対に忘れてた。


「彼らが属する同盟は、その15点も稼げないような状況にあるか、15点使ってもらえない可能性があるってことだ。そうなれば彼らは個人で5点稼ぐか、15点使ってもらえる同盟を作るしかない」


それが、2人がティーリアたちと作ろうとしている同盟なのだろう。


「その通りです」


俺達の言葉を聞いてた2人が、肯定する。


「私が今の同盟から、皆さんの元にブローチを届けるので、その対価として15点を使い、進級させてほしいのです」

「なるほどねぇ……」

ガーベラが難しい顔で考え込む。


なるほど。つまり彼ら二人とティーリアたち二人、そして俺の五人で同盟を作るとする。二人が今の同盟から点数15点持ってくるとしよう。

俺達は何もせずに15点分のブローチが手に入る代わりに、同盟点は彼らの進級のために使う必要があるということだ。

持ってくる点が15点以上なら、余りの同盟点も俺たちのもの。一見、デメリットの無い契約だ。


「それが出来るなら個人で持ってればいいんじゃない?」


説明を聞いても分からない、とティーリアは疑問を投げかける。

その通りだ。俺達に渡さずに、2人だけで同盟を組めば、個人点も同盟点も独り占めできる。だがそれはティーリアだから言える言葉だ。


「それは…………」


案の定、2人は言いにくそうにいい淀んだ。


「どの道、その同盟は受けられない。だろう?」


俺は二人が言い訳を口にする前に、断りの言葉を入れた。


「…………貴方には尋ねていませんが」


むっとした一人が俺を睨みつける。

だがガーベラもまた、言葉を重ねた。


「そうねぇ。組む気は無いから、他を当たってもらえるかしらぁ?」

ガーベラも断る。彼女も俺と同じくデメリットに気づいた。そしてティーリアを守るために、決してこの同盟は許さないだろう。


「―――なっ。そうですか。分かりました」

彼らはティーリアを見るが、彼女も受ける気が無いと分かると立ち上がり、足早に去っていった。


「何だったのよ…………」

訳が分からないとティーリアがため息を吐く。


「ティーリア。君の疑問の答えはね、面倒ごとを押し付けようとしていた、だよ」

「は?」

「個人で点を持たない理由だよ。彼らがブローチを持っていたら奪い返しに来た同盟の奴らと戦いになる。だけど俺たちが持っていたら、その争いを俺達に押し付けられる」


要するに、俺達を金庫兼用心棒として使おうとしていたということだ。


「何よそれ!最悪!」


ティーリアはぷんすかと怒っている。


「そうでも無いよ。点数が手に入るのは間違いないからね。後はどの程度面倒ごとを許容するかだ」


これが同盟制度の面倒な点であり、魅力だ。

簡単に同盟を裏切れる。今のように同盟内部からの裏切りを持ちかけることもあれば、外から「お前を盟主とする同盟を作るから、個人点はよこせ」といったふうに、同盟点を餌にブローチを奪う裏切りを持ちかけることが出来る。

個人点と同盟点という住み分けできる点数制度に三つの同盟。


「面白いでしょ?こういうのが数日続くんだよ」


笑う俺を見て、ティーリアはげんなりとした顔を見せた。


「最悪…………」

「とりあえずティーリアはガーベラから離れないようにね。君、騙されやすそうだし」

「はぁ!?」

「そうですねぇ。2週間は一緒に居ましょうねぇ」

「ちょっとガーベラ!?」


俺は戯れる美少女二人を見ながら、先ほどの二人を思い返す。

恐らく彼らはデルウェア帝国派閥の同盟員だ。

あそこほどの大派閥なら、裏切り先として自分たちを守ってくれる候補として王国派閥が上がるだろう。だからこそ、ティーリアたちと同じ特級クラスの俺には目もくれなかった。


盟主であるエリスに接触するのは不可能。となればエリスの妹であり、王国派閥の重鎮ではあるが、侮られており扱いの軽いティーリアは窓口として最適だ。

そしてティーリアたちにブローチが渡るということは、王国派閥の同盟点も増えるということ。

それは王国派閥が点数を守りに来るということになる。


同盟が成っていれば、彼らはブローチを守る努力をせずに、高い確率で進級できるだろう。


先ほどの提案、受けていれば巡り巡ってエリスの元に点数を集めることになっただろうが、俺は結局断った。

それはティーリアがブローチを所持し続けることになれば、帝国派閥に狙われ、俺達三人の同盟点が減る可能性があったこと。

そして結局、()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。


すでに作戦には取り掛かっている。俺は学院内にばら撒いた使い魔たちの視界を見て、笑みを浮かべた。

そこには、魔術を使った揉め事の景色が浮かんでいた。

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