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ゴーレム

水やりを終えた俺は作業場に移動する。

ここは、体育館ほどの広さの空間に、複数の作業用ゴーレムを置いた場所だ。


地面にはいくつもの部品や機材が置かれ、4腕のゴーレムたちがせわしなく機材を運んでいる。

中には作りかけの大型魔像やゴーレムとは程遠い歯車を組み合わせたような内部をさらす機械のような物もある。


そして俺が今、作っているのも、機械のような探査用ゴーレムだ。

前世の機械と違うのは、動力が魔力か電気かというだけだ。


師匠曰く、4000年以上前、聖人と4人の弟子がいた古代魔術文明では、魔力工学と呼ばれる前世の機械工学的なものが発展していたそうだが、古代文明の崩壊と共に失われたそうだ。


今もそれを継いでいるのは、アリスティア家のような、古代から続く家か、遺跡を発掘した者たちぐらいらしい。

専門家ではないが、前世で機械に触れていた俺は、魔力工学が一番覚えが早かった。それだけは師匠に褒められたのを覚えている。


「ドリルはいるよな」

今作っているのは青く染められた装甲を持つミミズ型のゴーレムだ。ヘッドには巨大なドリルを付けてあげよう。地面に潜るのは内蔵する魔具で行うから、ただの飾りだけど。


「制御はどうするか……」

ゴーレムを作る際に問題となるのは、脳だ。

どうやって自立行動させるか。ゴーレム学では大きく3つに分かれている。


一つ目が精霊を組み込む精霊型。二つ目が霊体を憑依させる霊体式。3つ目が完全に術式で制御する術式型だ。


霊体型は、意思を持ちすぎる可能性があるから今回は無し、術式型はプログラムが面倒だから嫌だ。となれば、人造精霊を使うか。


すでにボディは完成している。後は人造精霊を組み込めば自立型のゴーレムの完成だ。

人造精霊とは文字通り、人の手で生み出された精霊だ。精霊とは本来、自然現象に魔素が干渉し、指向性を持った精神生命体のことだ。


この発生プロセスは、人為的にも再現できる。まあ、大雨やら嵐やら噴火やらの化身と比べ、その能力は雀の涙ほどだが、ここで重要なのは自律意思を持ち、肉体を持たないということだ。


これをゴーレムに組み込み、制御させる。土の人造精霊のストックはまだあったから、ゴーレムに持ってこさせよう。


ドリルを上機嫌で錬成していると、リリエルさんが作業場に入ってきた。

「どうしたの?」

「…それは?」

彼女はドリルのくっついた巨大ミミズを怪訝そうに見ている。基本的に表情が無いリリエルさんだが、10年も一緒に居れば違いが分かってきた。


そういえば、リリエルさんに見せたことは無かったかもしれない。

「これはレイライン調査用の地中穿孔ゴーレムだよ」

レイラインとは、地面の下を走る魔力の流れだ。

魔力はただのエネルギーだが、密集すると物理的な干渉力を持つ。

密集が進むと、それは半物質の魔素へと変わり、魔素が結晶化したものが魔鉱石になる。

ちなみに、魔獣種などが体内に持つ魔石も、魔素が結晶化したものだ。


魔鉱石や魔石は、前世で言う電池のようなものだ。あるいは原油かなにかだ。

この世界の生活は魔具と切り離せない。都市に行けば、夜を照らす街頭は魔具だし、魔物を防ぐ外壁も魔術刻印が刻まれている。

そしてそれを維持するために、魔石や魔鉱石が必要となるのだ。


だが、ここまで性質が明らかになっている魔鉱石、実は人為的に作り出すことは出来ない。いや、正確には出来たのだが、できなくなった。

師匠がその手の研究資料を処分したからだ。


師匠は、アリスティア家が継いだ術式と知識以外の個人的な研究は全部持って行った。不老不死の法もだ。知りたければ自分で研究しろと言うことだろう。


だから俺は、人為的な魔鉱石の製造のために、まずはレイラインを調べることにしたのだ。レイラインを流れる魔力が、地上の魔力と性質が違っていれば、それが魔鉱石製造のヒントになるはず。


「魔鉱石のストックはありますが?」

「魔鉱石の心配というより、魔素の研究がしたいんだ」

魔素は魔力と違い、半物質だ。そのため、物質に与える影響力も高い。

動物の体に魔素が入り、世代を重ねることで魔物となり、植物や鉱物の性質にも変化を与えることがある。


ちなみに、この性質を使ったのが、『魔獣母胎』だ。魔物の生体因子、つまり遺伝子を素体に組み込み、魔素で思い通りに変異を促す。

魔素への理解が進むことは、『魔獣母胎』の可能性を広げることに繋がる。

それを説明すると、リリエルさんの顔に納得の色が浮かんだ、気がする。


(てっきり反対されると思ったんだが)

反対されると思ったのは、レイラインの調査ではなく、『魔獣母胎』の改良のほうだ。どうやら厳重に守られている術式に改造を加えるのはありなようだ。


「あ、それで、どうしたの?お昼ご飯?」

ぐー、と腹が鳴る。朝から何も食べずに作業していたから、おなかペコペコだ。リリエルさんのプロ級の料理が食べたい。


「昼食には、銀糸鶏のカツサンドを用意しております。取れたての香辛料を使用しておりますので、普段より香ばしく仕上がっております」

聞いてるだけで我慢できない。俺は、リリエルさんの背中を押して、食堂へと向かう。

だけど、彼女の用件はそれだけではなかったらしい。


「それともう一つ。『妖精龍人』の魂と精神が安定しました。いつでも目覚めさせられます」

俺に背を押されながら、彼女は頭だけで振り返り、そう告げた。

ビッグニュースじゃないか。カツサンドを食べてから行こう。その方が縁起がよさそうだ。


読んで下さり、ありがとうございます!

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