表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/96

霊園

「自由だぁあ――!」

俺は研究室の椅子に座り、大きく叫ぶ。

それに同調するように、人面樹がわさわさと枝を揺らしている。

可愛い奴だ。まだ数十センチほどしかない大きさの木で、窓際の鉢植えに植えられている。


こいつは俺が数年前に作った魔法生物だ。魔法生物学の課題で何か魔法生物を作れと師匠に言われたので、俺は彼を作ったのだ。

彼と言っても雄しべも雌しべも有する植物体なので、性別ないんだが、低い声で鳴くから彼と呼んでいる。


師匠は彼が生まれた瞬間、「よし、合格だ。処分しろ」とか冷酷無慈悲な悪魔みたいなことを言いだしたが、俺はキイキイ鳴く彼を見捨てられず、自室で育て始めたのだ。

分類的にはマンドラゴラとかの類だろうが、いろんな種を混ぜすぎてよくわからない。


「よく育てよ~」

俺は魔晶石を砕いて混ぜた霊水をじょうろであげる。彼は葉をばっさばっさと揺らし、全ての幹と葉に水分が行き届くようにする。

今の俺の楽しみは彼がどんな実をつけるのかということだ。


「さて、これからどうするかな」

水浴びをした後は、満足そうに日光浴をし始めた人面樹を尻目に、これからの予定を立てる。

クライに餌をやり、『魔獣母体』を使って配下を作り、使い魔たちで警備網を整えた。もう俺にできることは何もない。


『外』でやりたいことはあるが、それは外からのちょっかいが収まってからだ。つまり俺は、しばらく用事が無い。つまり、自由に研究ができるということだ…!


というわけで早速、転移して『霊園』に移動した。

霊園は城の南にある湖の端にある。つまり城の端だ。この城は南側の一部が湖に浸かるように建てられているためだ。


穏やかな湖が見える湖畔に円状の足場が作られている。城の通路から繋がるそこの上には、前世のギリシャ様式のような四角い形状の建物と複数の柱に支えられた霊園が立っている。


陽の光を通さないほど頑丈な造りだが、別に問題は無い。太陽は中にあるし、中のものを外に出さないのがこの建物の役割だ。

以前は、緑爺さんが霊園を管理していたが、いなくなったため俺がしなければならない。


俺は扉を開き、中へと入る。二重の扉を超えると、そこは、森の中だった。空には眩い恒星が輝いており、虫の鳴き声がそこら中から聞こえてくる。

外観からは考えられないほど広い室内には、数多の植物が植えられている。


この建物は空間がねじ曲がっているので、とても広いのだ。俺が入ったのは熱帯エリアのため、少し暑いが、遠くを見ると、豪雨と暴風が吹き荒れているのが見て取れた。


この植物園は、エリアによって気温、湿度、天候、日照量がまるで違う。そうすることで、常冬の地に多種多様な環境を再現したのだ。


ここには普通の植物は無い。霊薬や植物種の魔物。あるいは精霊樹など、希少で魔術的に価値が高い物ばかりだ。

ちなみに、普通の植物や農作物は別の場所にある農園で育成されている。そっちの管理はリリエルさんに任せっきりだが。


俺は土を踏みしめ、熱帯エリアの一角に進む。俺が足を止めたのは、太い蔓が巻き付いた巨木だ。巨木の方は、魔力を吸って、放出する『魔寄せの木』だ。


豊富な魔力を纏うため、魔物が寄ってきて寝床にすることが多く、自然界では魔獣種と共存することが多い。そしてそんな魔獣種の獲物の死骸や縄張り争いによって流された血肉を糧に成長し、さらに魔力を生み出す。


そんな木は今、植物種の魔物と共存していた。

太い幹から複数に分かれた枝に至るまで、太い緑の蔓が這っている。

だが蔓の中央部には、赤い葉脈が走り、どこか不気味な雰囲気がある。

そして、よく見れば、その蔓が僅かに動いていることに気づくだろう。


「『魔寄せの木』を枯らしていない。貪欲さは解決できたか…」

その蔓の名は、『グラトニーバイン』。暴食の悪魔の血が染みた大地から生えると言われる魔物だ。


こいつは、寄生した植物も、近づいた生物も吸い殺す厄介な植物だ。枯れた後は種を残し、鳥に食われたり、その地に栄養が戻った後に発芽し、新たな大地で根を張るという特性を持つ。

土地の栄養を根こそぎ喰らうその蔓は、数多の土壌を砂漠に変え、飢餓で大量に人間を殺してきた忌むべき魔物でもある。


俺がこの植物に目を付けたのは、防衛戦力としてだ。大食いという点を除けば、植物特有の生命力で殺しづらく、近づく獲物を食い殺すという特性は罠にピッタリだ。

そのため、他の植物種との交配や薬物による遺伝子組み換えで、いじっていたが、ようやく芽を出した。


「『魔寄せの木』以外に植えれば、宿主も吸い殺すだろうが、とりあえず大食いは減ったな」

以前は、『魔寄せの木』も枯らしていたのだ。それに比べれば、大きな前進だ。

後は優性遺伝子を持つ個体同士を掛け合わせ、栄養の少ない地に植えれば、魔物特有の進化で小食の『グラトニーバイン』ができるかもしれない。


「歩く蔓にならないといいが……」

無いとは言い切れないのが魔物の怖さだ。魔物の進化は未知数。飢えた結果、歩いて獲物を探す蔓が生まれるというのも、演算の結果ではそれなりの確率で出ていた。

これからも定期的に確認する必要はあるだろう。


俺は魔鉱石を砕いて溶かした水を入れた如雨露じょうろで、水やりをする。たまにはご褒美だ。すると、魔力の気配を察したのか、蔓がうねうねと蠢く。

種の状態から隷属術式で縛っているから、俺を襲うことは無いが、気持ち悪いな……。

俺はぶつけるように水をやり終え、霊園を後にした。

読んで下さり、ありがとうございます!

感想、評価等頂けたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ