表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時憶課 ~Time Memory~ 今日も時の記憶が宙を舞う  作者: 七之七


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/56

時の記憶編45

「おはよう、矢倉君」

「あ、おはようございます速人さん」

「昨日の現場検証の報告書はどうした」

「すみません、今やってます、速人さんの出社までに、終わらせようと思ったのですが・・・」

「本日は、何件見に行きますか?」

「それと、会社ではせめて課長と呼んで下さい」

「あっ、つい、すみません」

「報告書提出しだい、午前中二件、午後一件、帰社しだい報告書作成の予定です」

「そうですか」

「私は、これから会議なので、報告書はポケットに入れておいて下さい」

「分かりました」


 報告書を提出して、一件目の現場に着いたのは、10時を回っていた。

 事故資料によると事故が起こった場所は、T字の片側一車線の交差点で、直進方向の車線。

 信号が、青から黄色に変わって1・2秒、前の車が停車ラインで停車した所に、後続車が停車しきれづに追突したというケースの事故だった。

 後続車の運転手の話によると、信号にさしかかる手前で、信号が黄色に変わった時、前の車が加速したので、停車せずに進むものだと思い自分も加速した、だけど進まずに停車してしまった、すぐにブレーキを踏んだけど間に合わず追突という事だった。

 前車の後部は大破しており、運転手もむち打ちの症状で入院中と書いてあった。

 僕が、どちらの担当かというと、後車の担当である。

 当然前車の運転手は、100対0と言っており、そうだろうなと思いながら写真を撮っている。

 この件は、前車運転手が、事故直後に救急車で運ばれているので人身事故である。

 救急車を呼んだ時点で警察も来るし、後日所轄警察の署に呼ばれて、事情聴取や当事者立ち合いのもと現場検証も行われる。

 人身事故の場合は、事故の比率に応じて違反点数が決められる。

 当然だが、100対0だと0側は違反にはならない。

 以前事故を起こして、上記の様な事になってしっまった事がある人は、いろいろ面倒なのを知っているので、たいした事故ではないからと示談しようとする人が中にはいる、たいした事故であってもなくても、加害者だろうが被害者だろうが、必ず自分が加入している保険会社に連絡する事をおすすめします、後で大変な事になった案件は沢山ありますからね。

 昼食を済ませて、二件目の現場に着いたのは14時頃になっていた。

 事故現場の状況はというと、大通りから少し入った車がぎりぎりすれ違える道で、道幅5mといったところでしょうか。

 ここもT字路になっていて、道の両角は住宅でブロック塀になっており、カーブミラーが立っているスタイミーなよくある裏路地だった。

 先に言っておきますとこの件は、被害者側の担当です。

 被害者は、軽のバンタイプを運転していて、よく通る道だった。

 運転手は、T字路手前で徐行して、カーブミラーで対向車が来ていないのを確認後右折、右折後

3m位走った位の所で、運転手席側後部角らへんでガリガリと音がしたので、何の音だろうと思い車を止めてサイドミラーを見てびっくり!

 曲がった先の角の家が、曲がってすぐ駐車場になっていて、駐車場からバックで道に出ようとしていた、被害者の車が車庫を通り過ぎようとした瞬間に、車が曲がって来た事に気づかずにバックしてしまって後部と後部が接触してしまった。

 今回の件は、双方共救急車は呼ばずに、警察と保険会社への連絡だけをして、その場で警察による現場検証と事情聴取だけを行い、連絡先を交換して解散という流れになる。

 その場で救急車を呼ばなかった時点で、呼べば警察は来るけど人身事故扱いにはならない。

 まー、保険会社に連絡を入れた時点で、警察を呼んで下さいと言われますからね。

 警察は、民事不介入となっているので、後は保険会社同士の戦いにもつれ込む形になる。

 そしたら、僕みたいな感じで調査員が来て、現場を調査し会社に報告して、保険会社どうしで話し合いをして当事者に、相手方の言い分を連絡してくる。

 ちなみに、僕は調査して報告をするまでが仕事内容ですね、一応結果だけは知っているので、その後の事も書いておきましょう。

 今回の相手方の言い分は、20対80だったそうです。

 当然僕の担当の方は、20の方ですね。

 しかし、20と言われて納得いかなかったのでしょうね。

 僕の想像ですけど、保険会社と当事者のファーストコンタクトを覗いてみましょう。

 プルルプルル

「はい、もしもし」

「○○さんですか?」

「はい、そうですけど・・・」

「私、××保険の○○と申します、今お時間宜しいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」

「〇〇月××日△△時頃の事故の件でお電話致しました」

「あー、相手方は、何と言ってますか?100対0ですよね」

「相手方は、80対20と言っています」

「えっ!僕が20ですか!!」

「そうなります」

「まじで!!!車が通り過ぎてからぶつけられたんですよ!!!!、そんなのおかしくないですか!100対0でしょ!!!!」

「以前の事故で、裁判所が出し判例と照らし合わせて、これが妥当だと相手側が言ってます」

「何ですかその判例って!納得行きませんよ!」

「では、お客さまは何対何が納得されますか?」

「そんなの100対0でしょ!」

「90対10までだったら、なんとか相手方と交渉してみますけど」

「0でしょ!!」

「どうしても、お客様が0だとおっしゃられるのなら、当方としては0の場合お力になれません」

「えっ!」

「お客様自身が、相手方の保険会社の担当さんと直接交渉して頂くことになります」

「えっ!」

「その為の保険じゃないのかよ!」

「そう言われましても0なので、保険を使って無い事になりますから、お力にはなれません」

「・・・・・」

「ちなみに、相手方の車の修理代は、20万円です、今朝見積が届きました、車の査定も行ってきました、妥当な金額だと思います」

「こっちの保険で4万円も払うの?自分の車の修理代が6万円なのに!?」

「何でちょこっとぶつかっただけなのに、そんなに高いの」

「相手方の車が、ワンボックスタイプで小さなウィングが付いており、そのウィングにテールランプが付いていて、それが破損していたとの事です」

「まじで!言われた通りに破損個所も確認したけど、気付かなかったよ、100対0だと思ってたから写真もとってないし」

「お客様が、ご存じか分かりませんが、車が動いていた場合、もし裁判とかしても100対0はありえません、もし100対0でなかった場合は、裁判費用なんかもお客様餅になります」

「・・・そんなの割に合わないでしょ」

「そうですね、お客様は車両も入っていらっしゃるので、保険でまかなえますよ」

「・・・そういう事じゃないんだよ!」

「もおいいよ!その判例だけ送ってよ!」

「承知致しました、手続き終了致しましたら、またご連絡致します、それとお車の修理して頂いても結構ですので、よろしくお願いいたします」

「・・・」

 プープープー

 みたいな感じですかね、色々な保険会社と保険の種類があるので、契約する時は気になる事があったら聞いてみて下さい。

 でも本当は、気になる事が分からないのですけれどね。

 おっと、もうこんな時間になってしまいました、最後の現場へ急いで移動しましょう。

 今日最後の現場は、片側2車線のバイパスで中央分離帯がある直線道路です。

 事故当時の状況は、前日の夜から雨が降り出し、通勤時間になっても雨は止まず、完全なウエットコンディション。

 僕の担当の運転手さんは、バイパスで信号もない直線だった事もあり、70Km位で右車線を走行していました、今回も担当は被害者さんの方です。

 左車線10m前方を、ワンボックスカーが走行して、そのワンボックスカーがスリップして突然目の前に現れたそうです、当然ブレーキも間に合わず横向きになった車に突っ込んだみたいです。

 運転手さんは、あー追突されるとぼーとしながら思ったと言ってましたね。

 しかし、後続車は無く車の中でぼーとしてたら、運転席の窓ガラスをコンコンと叩く音が聞こえたそうです。

 そして、窓の方を見ると男性が、動かないでみたいなゼスチャーをしていました、一回うなずいたらガチャとドアが開き、「大丈夫ですか!」と聞かれたといっていました。

「大丈夫ですか!」

「はい、大丈夫です」

「私は、あなたのすぐ後ろを走っていました」

「救急車を呼びましたので、じっとしていて下さい」

 こくんと一回うなずいた。

「私は、消防のレスキューです、通勤途中でした」

「あなたの前の車が、ふらふら走っている様に見えたので、車間距離を開けて走ってました、気が付きませんでしたか?」

 と言ってドアを閉めて、手慣れた感じで後続車の誘導している姿を、ぼーっと見ていたそうです。

 これを不幸中の幸いと言うのでしょうかね。

 もし後ろが、この方でなかったらと思うとぞっとしますね。

 そうこうしている内に、救急車が来て二人共搬送されたそうです。

 車は、二台とも廃車でした、幸いな事に二人共軽傷で二人共当日に退院出来たとのことです。

 救急車が来たので人身事故ですね、今回は車が動いていましたが、現場検証等の結果回避不能といいう事で100対0という結果になりました。

 担当の方が、0だったので当社としてはお役御免ですね、あとは先方の保険会社さんから連絡があり、事故のレッカー代や台車の手配、通院費の清算、休業補償なんかを話すだけかと思ったら、なんとなんと最悪の展開でした。

 加害者の方が、任意保険に入っていなかったんですよ、今時びっくりです。

 被害者の方が、お亡くなりになられたり、後遺症なんかがでてしまったら大変な事になりますよ。

 今回は、0だったので当社の方は何のお手伝いもできず、自分でレッカー代や治療費が自腹になってしまったそうです、本当にひどい話です。

 皆さんは、自賠責保険というのをご存じでしょうか?

 車を買った事のある人だったら、知っていて当然なのですが、あまり保障内容に付いては知らない方も結構いるのではないでしょうか?

 最高保障金額は3000万円です、死亡事故及び後遺症なんかの時ですね。

 対人のみなので、その他の保証はありません、車を買った時に強制的に加入させられるので、強制保険とも言います。

 保険会社は、この3000万円よりオーバーした部分を足して、契約者様に支払っているんです、

逆に言うと3000万円以内なら自賠責でまかなえると言う事ですね。

 先ほどの方も人身事故なので、治療費は申請すれば相手方の自賠責で支払われるのですが、これが非常に大変でややこしくて時間もかかるので、何万円ならやらない方良いですと、キッパリ言われたそうです。

 おっと、すでに17時を回っていた。

 早く会社に帰って、報告書書かないとだね、また今朝みたいに早く出勤しないといけなくなってしまう、いつの間にか早歩きが小走りになっていた。

 そんな時、ポケットの中で携帯がブルブルと震えた。

「もしもし」

「矢倉君おつかれー」

「みつこさんどうしました?」

「どうしたのハアハア言っちゃって」

「今ですね、急いで会社に戻っている所です」

「そうなんだ」

「どうしました?」

「お使いで届け物が、あって出かけたら、手続きに思ったよりも時間がかかってしまって、遅くなりますって会社に連絡入れたらね、そのまま帰っていいよ言われたのでラッキーと思って、矢倉君とご飯食べに行きたいなみたいなー、なんて思てしまったので、今どこにいるのかなと思ってでんわしましたテヘ」

「あーえっと、良く行くラーメン屋さんの近くです」

「ふふふ知ってるよ」

「知ってる?」

「道路の反対側見てー」

「あー!びっくりしたよ」

 ふるふると手を振っているみつこさんは、とても無邪気に笑っていた。

 報告書は、明日で良いよね、自分自身への確認を済ませ、道路を渡った。




 

 




 

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ