時の記憶編28
「はい、おまちどうさま」
「お刺身になります」
「左から、するめいか、めごち、あおたい、しまあじになります」
「うーん、美味しい」
グビビ
「お酒いい」
「はいよ」
「ハレコ、日本史好きか?」
「課長、急にどうしたのですか?」
「まーいいだろ、でどうなんだ」
「そうですね、まーまー詳しい方だと思います」
「家に結構な歴史の本が、あったので小さい頃から良く読んでました」
ん!?小さい頃の記憶・・・。
「そうか、そこら辺の記憶は覚えているんだな」
「はい、ただ家の事を思い出そうとすると、もやがかかっているみたいな感じで・・・」
「おまちどうさま、二ノ蔵ね」
グビグビ
「うーん、美味しい」
「まーいい、お前の家系の事について、少し話そう」
「課長!僕の家系っていったい何の事ですか!?」
課長が、お酒を一口グビッっと飲んで、真面目な顔でゆっくりと話し始めた。
「まずは、お前が忘れている、俺とナナの事について話そう」
グビグビ
タンタンタンと、包丁のリズミカルな、心地よい音がしている。
「俺とナナの家系は、元をたどれば同じなんだよ」
「え!!本当ですか?」
「うそを言ってどうする」
「そ、そうですよね、すみません」
「まー聞け、時之家と言ってな、900年頃の平安時代まで遡る、口伝によると、時を操れたと聞いている」
「まさか、信じがたい話ですね」
「そーでもない」
「はい、おまちどうさま、はもの酢の物です」
はもの白に、パプリカの黄色と赤がとても鮮やかで美しい、はもの柔らかい食感とパプリカのパリ
ッとした食感が、絶妙な感じで楽しい。
「美味しそう」
しかし、マスターにこんな話を、聞かれても大丈夫なのだろうか・・・。
「う~ん、美味しい」
グビグビ
「それから現在までに、十の家系に分かれた、俺の家系は時任家、ナナは時生家になる、そしてお前は、時見家だ」
「えー-!僕の家系もですか!!」
「そうだな遠い親戚ということになる、それにこんな話を、関係のない人にするものか」
「それはそうですけど・・・」
複雑な気持ちがする、課長やナナさんが、遠いとはいえ親戚だなんて・・・。
「どうして急に、こんな大事な話をするのですか?スイス出張と何か関係あるんですか?」
「なくもないが・・色々とあってな」
「いろいろって・・・」
「そしてその時之家が、十の家系に分かれた時に、時之十家と言われるようになった」
「あと七の家系が、あるんですね、その家系も続いているんですよね、会社に他の家系の人は居るんですか」
「当然続いてる、会社には俺ら三人以外は居ない」
「そうなんですか」
「時之十家について話そう」
「時初家時をそめる、時荷家時を負う、時見家時を見る、時司家時を司どる、時護家時を護る、時守家時をみはる、時生家時を生む、時矢家時を射る、時影家時を隠す、時任家時に任せる、とまあこんな感じだが、読んで字の如しで、大体想像はつくと思うが、細かい所は、門外不出な所があって、詳しくは知らないし分からないけどな」
ナナさんは、静かにちびちびやっている。
「そして、マスターの家系は、時守家だ」
「え・・・」
そ、そりゃそうだよな、こんな話出来ないよな。
「はい、おまちどうさま、野菜の天ぷらね」
う~ん、色とりどりの野菜達のいい匂いがする。
サクサク、グビグビ、サクサク
「これはたまらん!」
課長が唸った。
「かぼちゃ美味しいな」
「ナナさん、なすもとっても美味しいです」
「さて、出張前にどうしてこの話をしたのかと言うとだな、お前の記憶が少しでも戻っているって事が、本部に分かった時に、向こうがどう動くか確認したいという事だ」
「課長から、話聞いただけですけど・・・」
「結果は、どっちでも一緒だ」
「お前は、普通にしてればいいよ」
「分かりました」
そばを茹でるいい匂いがしてきた。
「う~ん、いい香り」
そば好きのナナさんが、待ちどうしい顔をしていたので、ちょっと笑ってしまった。
「はい、おまちどうさま、今日の最後は、酒そばね」
「おー-」×2
「僕は、食べるの初めてです」
「まー食べてみろ」
「はい」
ズズズズズズ
「う~ん、きくねー」×2
ズズズ、ちょっと不思議な味がした。
ナナさんが、お酒にそば湯を入れてもらって、ほくほく顔で飲んでいたので、僕もまねして飲んでみた。
「う~ん、美味しい」
「ご馳走様でした」×3
ガラガラガラ
「今日は、ありがとうございました、またいらしてくださいね」
あー最後に女将さんの、ニコニコに見送られ、ほっこりした。
みんなで軽く会釈してお店をあとにした。
「ハーレム残念だったな」
「ナナさん何が、残念なんですか?」
「ここは、もつ鍋が絶品なんだけどな、良いもつとニラがないと出て来ないんだよ」
「えー本当ですか!食べたかったよー」
「ははは、また来れば良いじゃないか」
「そうですね課長、ご馳走になります」
「よし、たまには次行くか!」
「はい」
課長のお尻が、プリンプリンと楽しそうに弾んでいた。




