時の記憶編27
プップップッ
ナナさんからの通信だ、ポチっとな。
「ナナさんお疲れ様です」
「おつかれー、順調か?」
「はい、今日は絶好調です」
「絶好調男か、それは良かった」
「もしかしてー、美味しいお誘いですか」
「そうだ、きりの良い所で終われるか?」
「はい、既にボックス席で御指名待ちです」
「ボーイさん、ハレコをオープンラスト指名で」
「ご指名ありがとうございまーす」
「・・・エントランスでな」
「はい」
チン
あれ?ナナさんと・・・え!!課長も居るよ、珍しいな。
「お疲れ様です、課長・ナナさん」
「おつかれ」×2
「課長、今日はどうしたんですか?珍しいですね」
「たまには飲みに行こうって、ナナに誘われてな」
「出張の件もあるし、たまには良いかと思ってな」
そうなんです、課長は、超愛妻家である、大事な接待とか、会社の行事でもない限り絶対に飲みに出ない、奥さんの手料理が「最高に幸せ」と、いつも言っている人なのだ。
「ナナさん、今日は何処のお店に行くんですか」
「そうだな、着いてのお楽しみだな」
「そうですね、お楽しみが、最高の時間です」
電車に乗って、15分くらいで電車を降りた。
駅を出て、大通りを渡って5分くらい歩いた所で、脇道に入った所にそのお店はあった。
ちっちゃな四角提灯に、これまたちっちゃく「もつ」とだけ書いてあった、もつという名のお店だろうか。
ガラガラガラ
「いらっしゃいませ」
和服姿の女将さんらしき人が、優しい声で出迎えてくれた。
「課長さん、三人様いらっしゃいました」
ガラガラガラ
「ささ、今日も暑かったですね」
「そうだね、特に今日は暑かったね、と言ってもクールな部屋にしか、居ないけどねハハハ」
おー新鮮、課長もこう言う事を言うんだ。
「あら、ふふふ」
女将さんなのかな?の笑い方も、優しいなー。
「カウンター御用意してあります、ここで靴を脱いでお上がり下さい」
カウンターと言っても、座敷になっていて、掘りごたつみたいになっている、その先がカウンターになっていて、大きなカウンターにまな板が一枚だけ置いてある、というような感じだ。
むむむ、それにしてもおかしい、この並びはなんだ?
おかしいだろ、僕の左が課長、右がナナさん、普通真ん中はナナさんじゃないのか。
「マスター、適当にお願いします、あと生みっつね」
「はいよ」
「今日は、珍しいですね、会社の方達ですか?」
「そうそう、二人とも部下です」
「ナナさん、どうして僕が真ん中なんですか」
「別に小声で言う事じゃないだろ、なんとなくだよ」
「・・・・」
「お通しになります」
「赤ナマコの酢の物になります」
「女将、このわた、ある?」
「ふふふ、後からお出ししますよ」
やっぱり女将さんか、女将さんの「ふふふ」は、癒されるなー。
「あら、勇み足」
ペシッと、なぜか課長が、僕のおでこを叩いた。
「・・・」
「はい、おまち生みっつね」
カチン
「おつかれ」
「おつかれ様です」×2
ゴクゴクゴク
「うーん、美味しい」×3
「課長は、このお店良く来られるんですか?」
「そうだな、接待の時くらいだな、このお店しか来ないけどな、それとは別に年一回、結婚記念日にかみさんと二人で来るくらいだな」
「へー」
「はいおまち」
やっこと塩辛?これは何の塩辛だろうか?
「ほー、ばくらいですか、いいですねー」
「ナナさん、ばくらいってなんですか?」
ナナさんと課長は、僕の問い掛けにも応えず、生を口に放り込んだ。
ゴクゴクゴクゴクゴクゴク
「マスターお酒!」×2
「ははは、はいよ」
「ふー、ばくらいは、課長がさっき言っていた、このわたとほやを優しく混ぜた、酒のつまみの最強の一品だ、このわたと言うのは、なまこの腸の塩辛な」
「へー、僕ほや食べるの初めてです」
「喋ってないで、ビール飲み干せ」
「課長、せかさないで下さいよ」
ゴクゴクゴクゴクゴクゴク
「ぼ僕も、お酒お願いします」
「はいよ」
「マスターこのやっこは?」
「それは、女将さんの手作りです、横にあるかぼすで食べてみて下さい」
「う~ん、美味しい」×3
「優しい味ですねー」
「本当だな」
「はい、お酒おまちどうさま、すいじゅね」
グビグビ
「う~ん、美味しい」×3
「次は、ちょっと時間かかるから、ゆっくりやっててね」
「いいよ、ばくらいでゆっくりやってるよ」
「よろしく」
と言って、マスターは厨房の方に行ってしまった、次は何だろう、すっごく楽しみである。
「やっぱり、酒に合うなー」
課長が、ばくらいをちびっとやって、しみじみと言った。
「まさに、ザ・ベストつまみですね」
おっさん二人が、僕の頭越しに盛り上がっている。
僕も初ばくらいを、パク、う~ん僕にはまだ先の味がした。
そんな顔をしていたら、課長が言った。
「うんうん、美味しいだろ」
と、お酒をグビビとやりながら、にこっと笑って言った。
「ハレコ」
「何ですか、ナナさん、ハレコはやめて下さいよ」
「何ですか?ハレコって」
「いやね、ハーレム誘った時、ウェイティングで指名待ってるって言うものだから、オープンラストでハレコ指名って言ったら、ご指名ありがとうございまーす、ってなって、だから今日はハレコでいこうかなと思いまして」
「ほう、では今日はハレコですね」
「もー課長までやめて下さいよー」
「もーって、牛が居ますよ課長」
「ハレコ牛ですね」
「もー」
どうでも良いような会話で、お酒のつまみにされている、次の美味しいは、また来週!




