時の記憶編21
カツンカツンカツン、階段を下りてみた。
お店の看板も無い、地下フロアに着いた、正面には、木製の重厚な扉があり、覗き窓が付いている。
もしかして、これが噂の・・・、いやいやナナさんの通ってる、お店の女の子と待ち合わせだし、そんな事は無いと、自分に言い聞かせた。
「えーい、ハーレム行きまーす」
コンコン
パカっと覗き窓が、開いた。
サングラスを掛けた、いかつい感じの男の人が、僕を見ている。
「はい、どちら様でしょうか」
野太い声が、地下に響いた。
やっぱり、これはまずいよ、後ずさりしていると、背中がドンッと、何かがぶつかった。
後ろを振り返ると、黒のスーツ姿の強面の人が、僕の退路を強制封鎖していた。
やばいぞ、本当にやばいぞ、詰んだのか。
「どなた様と、お待ち合わせですか」
丁寧だが、圧がすごい。
「えーと、えーと、みつこさんと、待ち合わせです」
ガチャ、カランカラン
重そうな、木製の扉が、ゆっくり開いた。
「どうぞ中へお入り下さい」
「はい、失礼します」
「いらっしゃいませ、ハーレム様ですね、お待ちしておりました」
えっ!!!なんだここは、和服姿の店員さん!?
地下とは、とても思えない景色だった。
日本庭園に茶室があって、松も植えてある、石畳が茶室へと続いている、とても美しい。
こんなときナナさんだったら、なんて表現するのだろう、ボキャブラリーが、無いのを痛感する。
「ささ、こちらへ、足元お気を付け下さい」
コンコンコン
「お連れ様が、お見えになられました」
ススス、店員さんが、障子をゆっくり開けた。
手、綺麗だな。
「靴は、こちらでおぬぎになってください」
「はい、ありがとうございます」
純和風な部屋の中には、大きなテーブルがあり、でんとテーブル真ん中に、スーツ姿の男性が、後ろ向きで座っているのが見えた。
「失礼します」
部屋に入ったその時、男性が、くるっと振り返った。
「え!!!」
思わず声が、出てしまった。
「よー、ハーレム、時間どうりだな」
その男性が、笑いをこらえながら言った。
「な、なぜここに居るんですか、ナナさん!!」
「え!?お前が、いちゃいちゃしてる所で、登場の方が良かったか?」
「そういう事では、なくてですね」
「まーまー、静かにしろ、早く座れ」
「・・・・・」
「ハーレム、お店に入るの、びびったか?」
くそっ、ナナさん半笑いだよ。
「それに、随分と緊張してるんだな、気が付かなかったか?」
「何にですか!!」
「ほれ」
ナナさんが、女性の店員さんの方を、チラッと見た。
「・・・・・」
「いらっしゃいませ、ハーレムさん♡」
「え!!和服の店員さんが、どうかしたんですか」
「もー、ハーレムさん、私ですよ、わ・た・し♡」
「・・・あっ!!、みつこさんじゃないですか」
「フフフ♡やっと分かってもらえましたね、私、着替えてきますね」
「いーから、早く座れ」
「はい」
おっ、掘りごたつになってる、床にも畳が敷いてある、いい感触だな。
「それより、どういう事か、説明して下さいよ」
「分かったから、静かにしろ、落ち着け」
コンコンコン
障子が、開いた先には、みつこさんが、黒のタイトスーツという、意外な姿で立っていた。
「失礼します」
みつこさんが、僕の横に座った。
なんかこの感じ、みつこさんの父親に会ってるみたいだ、ナナさんが、父親だったら手強そうだ。
「なんで、みつこさんスーツ姿なんですか?私服じゃないですよね」
「私、ナナさんの秘書なんです」
「えー--!!」
「うそです」
「・・・」
「みつこさんもナナさんも、僕で遊ばないで下さいよ」
「分かったから、静かにしろ」
「す、すみません」
パンパン
ナナさんが、手を叩いて、店員さを呼んだ。
コンコンコン
「はい、なんでございましょうか」
「瓶ビール2本、グラス3つね」
「はい、お持ち致します」
ススス、静かに障子の、閉まる音がした。
「ナナさん、早く教えて下さいよ」
「まー待て、焦るな、乾杯してからで良いだろう」
「フフフフ」
コンコンコン
「失礼します、ビールお待ちどうさまです」
「ご注文は、いかがなさいますか」
「お任せでお願い」
「はい、承知致しました」
ススス、コン
「私が、つぎます」
コポコポコポ
「よし」
カツン
「かんぱい」×3
乾杯の声も、必然と小声になってしまう。
ゴクゴクゴク
「では私が、ハーレムさんの疑問に、お答えします、ちょっと長くなりますね」
「みっちゃん、よろしく」
「よろしくお願いします」
「先日、ナナさんとハーレムさんが一緒に、私の居るお店に来られた時、ハーレムさんの事が、気になってしまって、後日、ナナさんが、また来て下さった時に、ハーレムさんとお食事に行きたいって、ナナさんにお願いしたのね、そのあと、ハーレムさんから連絡があって、お店選んでいいよって言ってもらったので、でね、ナナさんにここのお店行きたいって言ったら、ここは、会員制で会員さん同伴でないと入れないって言うから、どうしても行ってみたくて、ナナさんにお願いして、予約してもらったという訳なのです」
「・・・・・」
「そしたら、ナナさんが、ハーレムにドッキリしようって事になって、ナナさんが、お店の女将さんにお願いして、こんな感じなったのね」
「えー、でも何で、入り口の前で、びびってるの分かったんですか」
「いつの間にか、後ろに人立ってたのは、マジでびっくりしたんですけど」
「ハハハ」
「フフフ」
くそー、二人とも楽しそうに、笑うなー、まーいいか、楽しんでもらったみたいだし。
「それは、こんな感じのお店だし、一見さんお断りだし、いろいろあるから、隠しカメラがあるんだよ、お前が、びびって立っている所、みんなで、モニターで見てたんだから」
「もー、勘弁してくださいよ、まったく」
「ねーみっちゃん、楽しかったよね」
「フフフ」
コンコンコン
「失礼致します」
「お通しと、アスパラの素揚げになります、お塩か、からしをつ行けて、お召し上がり下さい」
「へー、からし付けて食べるんですか、でもまず僕は、塩から行かさて頂きます」
「私もお塩で、頂きます」
「美味しい」×2
「おれは、からしだな、歯ごたえあって、美味しいな」
ゴクゴクゴク
「みつこさん、ここのお店は、何屋さんなんですか?メニューも無いですし」
「それはですね、私も、本当に来てみたくて、ちょー美味しいと噂の、しゃぶしゃぶ屋さんです」
「おっわー、しゃぶしゃぶですか」
「そうなんです、凄く楽しみですね」
「メインが、待ちどうしいです」
「まーまー、そう焦るな、ゆっくりくるから」
「了解しました」
ゴクゴクゴク
ナナさん、いつになく、お酒飲むピッチ早いな。
コンコンコン
「失礼致します」
「お待ちどうさまです、ミズのおひたしと、なめろうになります」
「お酒は、くろたつの純米になります」
「おいしそう、ナナさん、お酒つぎますね」
「ありがとう、うんうん、美味しいな」
ナナさんが、うんうんとうなずきながら、おちょこでお酒を、2杯続けて飲み干した。
「ふぅー、うまいうまい」
ナナさんが、おもむろに席をたった。
「じゃあな、俺は、これで帰るから、二人ともゆうくりして行けよ」
「ご馳走になります」×2
ナナさんは、スーツの上着を、脇に抱え、女将さんとちょっと話した後に、お店を出て行った。
では、お言葉に甘えまして、これからの美味しいを、みつこさんと、楽しみたいと思います。




