時の記憶編16
「んー、まだまだ素人だなハーレム君、缶詰と言うのはだな、そのまま食べるもしくは、そのまま食べても十分美味しいというコンセプトのもとで、開発者のみなみな様が、食べる人に美味しいと言ってもらうその一言のために、日々精進と研鑽を繰り返し、何回もの試食を繰り返し、やっとの思いで怖い怖い御歴々の皆様に罵詈雑言等を浴びせられて、心折れずに繰り返し、やっと商品となったエリート缶詰達だ、そんな所で、温めたら美味しいです、なんて言えるか、いや、俺だったら言えないね、たまに、姉妹品や親の七光り、天下り缶があるが、初代を進歩させて美味しいのもあるが、やっぱり俺は、初代が一番美味しいと思うよ、その時の情熱が半端ないんじゃないかな、そんな知と汗と涙の結晶だ、それを温めるとは、今までの苦労をまた温め直すのか?いや、違うだろ、そっと、パカッと楽しむのが主戦だと思うね、たまに、温めるともっと美味しいよってあったりもするが、そしたら今の時代缶詰じゃなくても良いようなきもするね、ただ、雪山とかで温めないと食べれないみたいな、特殊な条件下ならしょうがないと思うけど、それに、これはちょっと違うけど、コンビニのおにぎり温めますか?てのも、ん・・・って思ったけど、何も聞かずに温めようとしたのには、おいっ!って思ったよ、戻るが、温めたらもっと美味しいよとは、温めないでも十分美味しいんだろうなと、切なる思いで食べてるよ」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ナナさんは、そんな事思って食べてるんですね」
「そこまで思って食べて貰えたら、缶詰も幸せですわぁ」
「そーだろ、そーだろ」
初めて、ナナさんのドヤ顔みたなー。
「しかしだな」
うぉー、まだ缶詰しゃべるのか!
「缶詰を温めるのは、ちょっと難しい、電子レンジにも直接投入できないし、一旦皿にだしてラップして、ひと手間かけてまごころの味、って違うだろ、湯せんにしたってそうだ、取り出すにも箸じゃ無理だし、トング使ってよしよしと取り出せたとしよう、でも直ぐはアチアチだから、ちょっと冷めるまで待つという長い長い時間、そんなの待てるはずがない、強引にいくとアチッってなるし、さらに、このアチッを我慢してパカっと開けようとした瞬間、左手が、アチチと開ける力に耐えきれずに、カランカランと、缶詰が、吹っ飛ぶ始末、そりゃーさっきも言ったが、極寒の雪山では、彼らは、カチンコチンだからさ、手袋もカチンコチンだし、少々のアチッは耐えられるさ、そんな時は、パカの後のふわぁ、眼鏡もくもったら、そりゃーたまらないだろうけどな」
「それなら、ナナさんも左手に鍋掴みみたいなの、すれば良いんじゃないですか?」
「そう思うだろ、だがな、今度は右手が、アチだから、急いで開けようとする、最後の瞬間に缶詰がブルッとして、缶詰の中の御汁が波立って、ピチョって左手の鍋掴みにテイクアウトしてしまうんだ、そしたら、あああってなるだろ」
「もう十分理解しました、温めようなんて、二度と言いません」
「そーだろそーだろ、よし開けろ開けろ」
パカパカパカ
ゴクゴクゴク
「ナナさん、そーいえばテレビ無いのですね」
「ねーよ、必要無いし」
「ナナさん、ナナさん」
「なに、フクちゃん」
「ぁ、ぁ」
「・・・いいよフクちゃん、フクちゃんって言ったし」
「では、ナナさんって、いろんな料理食べてますよね、漫画とかテレビなんかでも、グルメ多いと思いませんかぁ、どう思いますかぁ?」
まずいよーフクさん、また、ナナさんスイッチ入るよ・・・あれもこれも食べたいのに・・・。
「そーだねー、たしかに多いよね異世界ものとか、だけど普通に作ってるだけだし、昔もいっぱいあったよ、いつの時代も美味しいは変わらないよ、いろいろあって良いと思うよ」
ナナさんが、壁のポスターを見上げながら言った。
「ナナさん」
パカ
「何だ」
ゴクゴクゴク
「ナナさんって、いろいろ美味しいを知ってるのに、食リポみたいなの聞いた事が、無い様な気がするんですけど、どうしてなんですか?」
「だってな、興味があれば自分で食べるし、人からどんなふうに美味しいって聞いたって、食べてみないと分からないだろ?それに一応、仕事メインの話だし」
・・・さっき、あれだけ缶詰語っておいて、よく言うよ。
「でもですよ、ナナさんの連れて行ってくれるお店、いつも美味しいじゃないですか」
「それは、いろんなお店行って、自分が、美味しいと思った店に、連れて行ってるだけだし、たまたまハーレムも、美味しいと思っているって事だと思うよ」
「そーですか・・・」
「へー、ナナさんも、失敗したっていうお店あるんですかぁ?」
「いっぱいあるさ、食べてみないと分からないし、それに、自分の中で美味しいにも種類があってね、この値段だったらこれで十分とか、味だけでなくて、お店の雰囲気とか、店員さんの笑顔だったり元気だったり対応とかね、値段の高いお店が美味しいでは、決して無いと思うよ」
「私も、そう思いますわぁ」
「たまには、ハーレムの一押し連れって行ってくれよ、ねーフクちゃん」
「やったー、行きたいですわぁ」
「ナナさんと行くとなると、なんか、お店選ぶの緊張しますよ」
「大丈夫だよ、そんなの気にしないで、無口になるだけだから」
「・・・・・・」×2
ゴクゴクゴク
「よーし、そろそろお酒行くか、コップ酒で良いよな?おちょこだと直ぐつがないとだし」
「はい、自分がつぎます」
「私も、頂こうかなぁ」
コポコポコポ
パカパカパカ
お!フクさん今のは良い、わぁ、だったな。
「よし、じゃんじゃん飲んで開けろ!」
「はい!」×2
グビグビグビグビ
パカパカパカパカパカパカ
何の報連相も無く、パドックの様な夜も更けていくのであった。
「ナナさんが、見上げたポスターは、マラドーナでしたわぁ」