表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/55

会いに来ない王子3

 今日も誰にも気がつかれずに街にでれた。


 お金はあるのよね。ドレスを売ったお金がまだ230ニードルくらい。

 ニードル、私の国のお金に変換して考えたらいくらの価値なんだろう。


 この国の事に、やっと興味がでてきたわ。

 今日は何しようかな?街を歩いてるのも十分楽しいけど、何か出来る事を見つけたいんだよね。

 結婚させられる前に、ちょっとしたスキルを身に付けたい。

 別居したら働きたいし。世間知らずだから、大変だと思うけど。

 何もかも全て与えられるのは嫌だし。


 私が出来る事って、何があるんだろう。考えてみたら、1人で暮らすのには何一つ役に立たないじゃない…?

 ダンスが出来たからって何の役にもたたない…


 料理人の弟子にしてもらうとかどうかな…でも、師匠になってくれるような料理人と出会ってないし…

 というか、知り合いも友達もいないし。まだ2日目だから、贅沢言っちゃ駄目よね。


 今日も服を1着買った。いくらなんでもブラウスとスカート2着ずつだと、着まわしもできないし。


 もっと見て回りたかったけど、雨が降りそうなので家に帰った。


「え?」


 そこには、誰もいませんでした。




「ちょっとまってっ!どういう事!?」


 家にあった絵画も壺も、食器もない、スプーンも……家具もない、殆んど…っていうか、何にもない!!


「…あの3人……」


 昨日私が街に出ていた事は気がついていたのね。そして、今日も出ていった。

 3人で全部持ち出された!

「……まさか!!」


 私の部屋も荒らされて、何もかも持っていかれていた。

 あるのは昨日着ていた服だけ。


「…いやいや。うん。まだ服があっただけよかったけどさ……。どうやって私は生きていくの?」


 手紙さえ届かないんだよ?誰かとコンタクトとるとか出来ないし、『私は王子の婚約者なんです!』って言っても誰も信じてくれないわ…


 1文無しではないけれど…どうやって暮らせばいいの?

 まだ仕事について考え始めたところだったのに!せめて職についてから出ていってよ!



 本当に、どうしたらいいの?

 お父様に手紙を書いて迎えに来てもらう?

 でも相手は王子…伯爵家なんて握りつぶされて終わりよ。そうなれば家族全員が、今の私のようになってしまう可能性もあるじゃない……


 それに、迎えに来てもらうって言っても…ここの住所も知らないのよね。私。

 ううん、住所があるわけないのよ。何か届けられるとしたら、全て城でチェックが入ってから騎士が持って来てるんだもの。必要ないというのが正しいわね。


 孤立無援…!って、こういう事なのかしら…




 夜、大雨が降っている。


 料理する道具も全くないけど…

「…食材1つ残さず持って行くことないじゃない!」


 明日からどうしようかな。

 今はお金があるけど、数日で底をついちゃうよね……


「窃盗団の仲間にでもいれてもらおうかしら…」

 それは冗談だけど…


 大至急職探しをしなければ餓死してしまうわ。




 次の日も雨…


 これじゃ外に出ていけない。傘もレインコートも無い…このまま雨が降り続く…なんて事ないよね…


 誰かが助けてくれるなんて思っちゃ駄目よ。既に3人に裏切られているんだもの。


 食べるもの…水もないから、1度外に出ないといけない。


 王子の婚約者…って、その肩書きは何の役にたつの?私の顔を知ってる人にしか通じないよね。貴族とかいうのも。


 そうだ!!

 このまま私がいなくなったって事にすればいいかも。放っておいたのは向こうなんだし。いなくても当分ばれない気がするのよね。

 家がこれだけ荒らされてるんだから、誘拐されたって勘違いしたりして。

 そうなれば、お父様達に迷惑をかける事もないよね。逆に、『この国の王子は他国の女だからそんな扱いをしたのか!』って、信用も名誉もがた落ちよ。

 一矢報いるなら今しかない!


 別居したいと思っていたけど、別居どころか王子と結婚しなくていいかもしれないよね!


 そうなれば諦めていた『好きな人と結婚』が出来るかもしれない。好きな人が出来たらお付き合いして…結婚して、子供だって好きな人とならほしいし、家族で暮らせたら最高だわ!!


 ピンチはチャンスと聞いた事があるわ。それが今よ!


 ……でも、今、この状態をなんとかしなくては。


 ここで躓いたら餓死する…


 とりあえず、お水とタオル、それだけ買いにいこう。


 もう少しすれば雨はやむかも…って思うけど、さすがに水1滴すら飲んでないのはきつい。


 少しでも雨を遮る事が出来そうな物…私の読みかけの本。それしかない。


 雑貨屋があったし、そこならきっと売ってるよね…?

 どこにどういう物が売ってるのかなんて、今まで考えた事がなかった。タオルなんて、用意されてて当たり前だったし…

 貴族の知識なんて、一歩外にでれば何の役に立たないわね。


 そんな事を考えながら、雑貨屋に小走りで向かった。




「いらっしゃい…って、あなたどうしたの!ずぶ濡れじゃない!」

 濡れた私がお店に入っても、嫌な顔ひとつせずに迎えてくれた。

「タオルを3枚、頂けないかしら。それからレインコートがあればそれも。」

「そんな事より、先に体をふきなさい。風邪引くわよ!」

 タオルを持ってきて、急いで私をふいてくれた。

「あなた、この辺では見た事ないけど、うちは近いの?」

「ええ。最近引っ越してきたんです。すぐそこなので問題ありません。」

 あの別邸に住んでるなんて、絶対気付かれないようにしなきゃ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ