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人気者の婚約者3

「クール様、結婚してもしなくても、私はもう国に帰るつもりはないの。」


「は?」


「エドワードが誰かと結婚すれば、私が追いかけられる事はないわ。『伯爵の娘で王太子の婚約者』その肩書きがなくても、私が頑張れる場所をここで作りたいの。」


「そんな簡単なもんじゃないんだぞ。口で言うのは簡単でも。今だって他人の家だとしても、伯爵の家だから暮らせてるだけだ。」


「そうだけど…それを言ってしまえば何も出来ないじゃない。このまま何もしないで、言われた事だけやる生活なんて嫌よ。これからは何かしていく生活をしたいの。」


「……ここでなくても出来るだろ。」


「できないっ!国に帰ったらまた『好きでもない人』と結婚させられて、貴族が働くな…とか、みっともない…とか言うのよ。皆1度牢に入ってみるといいわ。私を知らない人には、身分なんて何の役にもたたなかった!」


「………」


「皆、相手は自分の事を知っている前提でしか生きていないじゃない。外の世界に出てみれば、ただの役立たずなの。そんなの嫌よ…。」


今までぬくぬく生きてきた私が、仕事をしてるクール様にこんなに偉そうにするのは間違ってるのはわかってるけど…


「クールの負けね。女にだって自由を得る権利はあるのよ。」


「ステーシー、そうだとしてもだ。ニーナに何かあったらどうする。」


「何かあっても自分の責任。1人で暮らすっていうのは、そういう事よ。解ってるわね。」


ステーシーが私を見て言った。

それが出来ないならやめなさいって言われてるんだよね。中途半端じゃやっていけないって。


「…っ全部のりきってみせる!」


「だって。どうするの?」

「…はぁ……わかった。」


「ありがとう!!」


それから少し話をして、殆んど口をつけていない冷めたお茶をのんだ。そして私は伯爵邸帰った。



「ん?」

伯爵邸の前に見たことのない紋章の馬車が止まっている。まあ、見たことないのは当たり前なんだけどね。ラドクリフ家しかしらないもの。

伯爵にお客様かしら?

私がそばを通ると、カチャと馬車から人が出てきた。

「………」

「ニナ様、少しお話があるのですが。」

クリフ…ついに伯爵邸まで…

「話す事は全て話しました。」

「ニナ様は侍女ではなく、教育係だそうですね。」


「……だからどうだと言うのでしょう?」

「それをこちらが聞きたいのです。」


クリフ…あの姿絵で私だと判断出来たはずはないよね。今回は読めないわ……。




・・・・


「あんた、本当にニーナに甘いわね。」

「否定はしない…」

「気が付かれない程度に見に行ってあげるわ。逐一報告してあげるから、人の店でそんなに落ち込まないでくれる。」


「絶対に報告しろよ……。それから何かあったら助けてやってくれ…。」


「あんた達兄弟は過保護すぎよ。」


「否定出来ない…。」




帰り道、自分の甘さ加減にうんざりするクールだった。



・・・・


「話があるなら、ここで聞きます。どうぞ仰ってください。」

「いえ、女性相手に立ち話もどうかと思いますので、どうぞ馬車へ。」


嫌です。


「私は仕事がありますので。」

「それはマール様の教育係としての…ですか?」


クリフ…今日は喋る事をかなり固めてきてると見たわ。強気だもの。


「そうです。そして侍女も兼ねてますから。」

「ニナ様がマール様の教育係になった経路など、教えて頂けませんか?」

「面接をして雇われましたが、それが何か?」

「いえ、私にも6才になる姪っ子がいまして、是非ともお願いしたくて。」


…何故……?何がしたいのかしら…


「クリフ様のお家柄を考えれば、もう何人かいるのでは?私が教えられる事などないと思いますが。」


「では、マール様には何をおしえているのですか?」


「私がどういうカリキュラムを組んでいたとしても、伯爵と相談の上です。私自身だけの問題ではありませんので、お答えする事はできません。」


今日はなかなか引かないわね…


「ふふ、クリフ様の姪でしたら、さぞ可愛らしいのでしょうね。」


「ええ、とても。」


……どういうつもりで教育係をさせようとしているの?……もしかして、どさくさに紛れて私を王宮に連れていこうだなんて思ってないわよね?

姪の勉強の為…という名目なら、エドワードがいる所まで一直線で行けそうだわ。クリフもかなり家柄は良いはずだもの。

そうなれば、偶然を装って私の事を知ってる人を連れてくるかもしれないよね…。


ついさっき『国へ帰らない宣言』をして、もう見付かってしまった…なんて事になったら情けなさすぎる!


ここは1度引くべきだわ…。


「お話はこれだけなのであれば、私は失礼します。クリフ様、私より素晴らしい教育係など山ほどいます。そちらから選ぶのがいいと思いますよ。では。」


私が馬車を出ようと扉を開けようとすると、それを止められた。


「1度、面接にだけても来て頂けませんか?」

「私には今の仕事で手一杯ですし、マール様と奥様以外に仕えるつもりはございません。」


クリフの目論見のうち1つはわかったわ。


私の出自を知りたいから…。面接用紙に嘘は書けないもの。

私がニーナだと、断定したいんだわ。


「丁重にお断りいたします。」


…まだ何か言いたいのかしら。


「あの…」

「ニナ様、殿下がまたお会いしたいと仰っていますので、次のお休みを教えていただけませんか?」


…王子からのお誘いを簡単には断るなんてできないよね…。

これはまずい…うまく断れる流れにもって行かないと。

…突然ここに来たのはこの為だったのね。予めわかっていたら、上手く私に躱されるかもしれないもの。


「私の休みにあわせて下さるのですか?この国の次期国王になる方が。それはいくらなんでも無理なのでは?」


「貴女に興味があるようで。」


今さら興味があるですって…?なら、私をこの国に連れてきた時に示すべきだったわね。


「ふふ…シャロン様も同席頂けるようでしたら、快諾します。後でこの前のパーティーのような事にならなけられば良いですね。」


私が言うと、クリフはとても驚いている。それはそうよね。私が彼女を嫌っているのはクリフだって知ってるだろうしね。


ここでシャロンの名が出るとは思わなかったようね。さすがに諦めるかしら。


「シャロン様…わかりました。」


まさかこの条件をのむなんて…。


「それでは、来週の水曜日に。それ以外はエドワード殿下の為に時間はつくれませんので。出来なければ、またの機会に。」


「…いえ。では昼過ぎにお迎えにあがります。」


来なくていいです!

私の世界の中に入ってこないでください!







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