人気者の婚約者2
次の日、ステーシーのお店でクール様と待ち合わせ。もちろんステーシーも一緒だよね…。
「いらっしゃいませ。」
「こんにちわ、ステーシー様に会いに来たんですが」
「ああ、ニナ様ですね。突き当たりの部屋へ。私は接客中ですので、申し訳ございませんが」
「ええ、1人で大丈夫。ありがとうございます。」
コンコン
「ニナです。」
そう言うとすぐにガチャっと内側からドアが開き、目の前にはクール様がいた。
「クール…様、お久しぶりです……っと、どうなさいましたか?」
「とりあえず、ソファーに座れ。」
ものすごく怖い顔をしているのは気のせいかしら…ステーシーも……
「あの、今日は……」
「何故言わなかった?」
「え?」
「牢にいれられた事…何故この前会った時に言わなかったんだ。」
「…何で知ってるの。」
「私が調べたのよ。マール坊っちゃんを誘拐した犯人扱いで警察に連れていかれて、半日牢にいたってね。」
「調べて…ってそんな簡単に」
「当然でしょう。私には何処の誰よりも情報が入ってくるのよ。」
「明日、仕事が終わったら俺とすぐに帰国するんだ。」
「待ってよ!1年はここにいてもいいって言ってくれたじゃない!」
「なら何故嘘をついた?言えば無理やり帰る事になる。わかっていたから嘘をついたんだろ。」
そうだけど…
「……っちょっとくらい我が儘言ったっていいじゃない!2ヶ月も放置されて、家財持ち逃げされて、友達もいなくて、頼る人もいなくて、誘拐犯あつかいされて牢に入れられて、この国に来て何も良い事無かったのよ!けど今はマール君の教育係も楽しいし、働いて生活をしたいって思ってるの!!」
「………」
クール様が唖然としてる。
そうだよね、自分でも言っててビックリする不幸具合だもの…。
「そんな目にあっても此所にいたいのか?」
「…ごめんなさい。心配してくれてるのはわかってるの。」
「落ち着きなさい、2人とも。クールもよ。今この子を強制的に連れて帰っても、『勝手に逃げた』って言われるのがおちよ。そんなの許せないでしょ。」
「…もし何か言ってきたとしても、ニーナに気がつかずにどうどうと恋人とパーティーに主席していた事も、その理由も何もかも公表する。こちらは公爵と伯爵が証人だ。2人が自国の利をとり嘘をつこうとするなら、他国の者を味方につける。言い訳はさせない。」
クール様…それはやり過ぎでは…
「ほんと、どれだけ出来の悪い王子なのか、皆驚くでしょうね。あの男は王太子でしょ?よくそんな軽率な行動が許されるわね。」
…私もそれは思ってた。
「もう隠してる事はないか?何かあった時、確実に口裏合わせしとかないとまずい事とか。」
「…それって、ここにいるのを許してくれるって事?」
「………そういう事では」
「許してあげるの?クールも可愛いニーナの我が儘には逆らえないのね。」
「当たり前だろ。俺達兄弟が鍛えぬいた結晶だぞ。可愛くない訳がない。」
鍛えぬいた結晶…
「確かに図太く育って可愛いわね。ニーナ、破談したら商人にならない?」
図太くて可愛い…
「変なスカウトをするな。」
「何いってるの、逸材よ。」
破談の話を聞いてるのは楽しいのよ。
けど…『可愛い』って何度も言われてるのに、心から喜べないのは何故かしら……
「さっきの、口裏合わせなんだけど…私は双子って事にしてるの。」
「双子?」
「私がニナ・スミス、妹はオリビア。それについてはクール様とステーシーに何か聞いてくる事はないと思うけど…」
「それ以外は?」
「……この前エドワードとクリフとお茶をのんだわ。『ニーナ』に繋がる女じゃないか…て思ってるんだと思う。」
「それは…かなり見つかりそうな時点にきてるって事じゃないのかっ!?」
「クール、そんなに心配しなくても大丈夫よ。」
「何をもって大丈夫なんだ。いい加減な事っ…」
「これ、見てみなさい。」
「…?この女の姿絵が何だっていうんだ?」
「これを見て、ニーナの事を探してるらしいのよ。」
「は?これで?」
「そう、笑っちゃうでしょ。」
「…っぷ…ハハハッ!誰だそれっ!」
「何で笑ってるの…私にも見せて…」
クール様から受け取った絵を見て固まってしまった。
目と髪の毛の色以外は、全く私に似ていない。もう別人レベル…。
「よかったな。その美人がニーナだって思う奴は誰もいない。俺でもわからないくらいだからな。」
「それは…私が美人ではないと言いたいのかしら…」
「…ここまで美人な自信があるか?」
「全くない。」
全体的なバランスも、顔も体も何もかも負けているもの…悔しいけど……。
「けど、これがあるっていう事は、ニーナの顔を知っている誰かが特徴を教えて描いたって事よ。」
「だな。本人を見たら思い出す可能性は充分ある。あまり公の場には顔を出さない方がいい。万が一にも招待されたら出来るだけ断るんだ。」
「それが賢明ね。この前の公爵のパーティーで見つかってた可能性だってあったんだから。しかもかなり目立ってたらしいじゃない。」
「それは…否定は出来ないけれど…」
「ここで暮らそうと思うなら、ニーナとしてじゃなくニナとしても憶えられない方がいいわよ。まぁ、私とクール的には『よくやった!』って思ってるけど。」
「そうだな。その場に居合わせなかったのが残念で仕方がない。」
「すごい嫌われてるのね。シャロンは…」
「嫌われてるなんてもんじゃない。ただの邪魔だ。社交界ってのは貴族だけが馬鹿みたいに集まってる訳じゃない。俺達にとっては仕事の場でもある。あの女のせいでこの国の印象はかなり悪くなってるぞ。俺の国の事じゃないから放っておいてはいるが。この国にニーナが嫁ぐ事になったら話は別だ。」
「可愛いニーナがこの国に嫁ぐっていうのは、こういう事が目的でもあるのよ。けど、姫でもない『ニーナ』が選ばれた意味が不明だわ。」
「確かに…姫ではないにしても同等の女はいるのに、何故かニーナ。そこがわからないからうちの国も戸惑っている。」
「どこに利用価値を見出だしたのか、私本人ですらわからないもの。」
だから怖いのよ…本当に監禁される可能性があるんだから!
「帰るなら今のうちだぞ、見つかってからじゃ難しくなる。おそらく無理だ。今なら『放置、強盗、冤罪』この理由で俺が連れて帰ってやれる。」
「………」
「ここに残りたいか?」
「………」
クール様はとても心配してくれてる。弟だとか言ってはいるけど、昔から優しい。…そうじゃない時も…多々あったけど。
本当の気持ちを言おう。




