見つかりすぎる婚約者3
「…………」
「…………」
どうしたらいいのかしら…
なぜ何も話しかけてこないの?帰ってもいいって事?
そういえば…公爵に堂々と『俺の恋人の…』とか言ってるって事は、エドワードの恋人は公認って事なのかな。
婚約者がいない方が2人にとって好都合なのかもしれないよね。このままいけばそのうち2人は結婚するとか!
そして私は自由の身に!
喜ぶのはパーティーが終わってから。
とりあえず、気を引き締めないと。
「殿下、ニナ様と少しお話してもよろしいですか?」
「ああ、勝手にしろ。」
…先にエバンスが出てくるの?まあ、構わないけど…。
先手必勝よ。
「初めまして、ニナ・スミスと申します。」
「…失礼ですが、貴女はオリビア・スミスというお名前では?」
「オリビアは双子の妹ですが、お知り合いですか?」
「双子…?」
…凄い怪しんでる。けれど図太い私は動じない。演技続行!
「あの…まさか…妹が何か失礼な事をしてしまったのでしょうか…?」
っとオロオロして見せた。自分でも名演技だと思う。
「いえ…そうではありませんが…。」
「はぁ…よかった…。」
「………」
うまくいったわ。エバンスが話しかけてこなくなったもの。
「…クリフ、この女と知り合いか?」
「いえ、人違いでした。」
貴方にこの女呼ばわりされる筋合いはない!社交辞令ってものがあるでしょう。
そしてエバンスはクリフね、やっぱり偽名だった。
何を思っていても、笑顔を絶やさない事が大事だよね。
そうすれば円滑に…
「エドワード、この女よ!私が言ってた侍女は!わざと私に恥をかかせたのよ!」
…進むわけないよね。
「ニナと言ったな。俺がいないのをいい事に、シャロンの事を馬鹿にしていたらしいが、どういうつもりだ? 」
『俺がいないのをいい事に』…ですって?
『私がいないのをいい事に』、恋人と馬鹿みたいに買い物して遊び呆けてる男に言われる筋合いはないよね…。
「申し訳ございません。私はシャロン様に今日初めてお会いしたと思います。ので馬鹿になど出来るはずもありません。」
「フッ、エドワードの前だから怖くて言えないだけでしょう?早く謝った方が身のためよ。」
何が面白いのか、シャロンはクスクス笑っている。
何がなんでも『ご免なさい』と言わせたいのね…。けど、伯爵に迷惑にならないくらいには嫌みを言ってもいいよね。おそらく公爵は伯爵の味方だと思うし大丈夫ね。
「私は以前、シャロン様にとても似ている女性に会った事はあります。招待されてもいないパーティーで入場拒否され『私を誰だと思っているの?エドワードの恋人よ!』っと情けなく叫んだあげく、賓客を侮辱した女性です。私はそれはシャロン様ではないと理解しております。それとも、あの『礼儀を弁えない女性』は本当にシャロン様だったのでしょうか?それなら『初めまして』は失礼でしたね。」
会場中が私達を見ている。
皆おさえてはいるけれど、笑いが止まらないみたい。
「あの日の女性がシャロン様だったのなら、招待もされてないパーティーで何をするつもりだったのでしょうか?何だかんだと言って押し入ろうとする危険人物もいますので、その心情をお聞かせ願いたいのです。主を守るのも侍女の務めですので、その参考に。」
「っっ何ですって…!っエドワード!何とか言ってやってよ!!」
「………」
そろそろ止めなさいよ。貴方の恋人でしょう…
「申し訳ございません。エドワード殿下の目に狂いは無い、と私は信じております。あのような女性がシャロン様なはずはありません。やはり『初めまして』…で間違いないですね。」
「おい、あまりにも失礼だぞ!」
エドワードが何も言わないから、そりゃクリフが口を挟むわよね。
「ふふ、クリフ様、これ以上続けば殿下も一緒に笑い者にされますよ。そろそろ止めた方がいいのではなくて?」
クリフにだけ聞こえるように小さな声で言った。
「…っ!!」
クリフも真っ青になるよね。側近として。
「殿下、侍女の言う事です。相手にせず聞き流しましょう。」
「…そうだな。」
「もう下がれ」
クリフが私に一言。
「はい、失礼致します。」
急いで伯爵のもとへもどった。
「ハハハッ!ニナ、君は面白いな」
公爵が大きな声で笑うものだから、皆こっちを見てる…。
「エドワード殿下にあのような態度をとってしまい、公爵にも伯爵にもご迷惑をかけてしまったかもしれません。」
私は頭をさげた。
公爵は大丈夫だけど、伯爵は私を雇っているんだから、悪印象を与えてしまったよね。
「気にしなくてもいい。誰もが思っている事を、君が言ったまで。それに、このくらいの事で伯爵に何かあるようであれば、このパーティーの出席者は皆助けてくれる。」
なるほど…これはエドワードの対応を見るための試験でもあるのね。
「ニナ、私はもう少し皆と話してくるから、迷惑にならない程度にゆっくりしていなさい。」
「はい。」
っとは言っても何をしていればいいのかしら。
沢山料理が並んでいるのに、皆あまり食べたりしないのよね…。けど私はとてもお腹がすいている。
「食べよう。」
難関突破祝い!
もうこれ以降は伯爵以外と関わらなくてすむよね。ちょうどテラスには誰もいないし、そこで1人パーティーをしよう!
次の仕事、1ヶ月で決まるかなぁ。
家も並行して探さないと。あまり汚いところは嫌だけど…贅沢は言ってられないよね。
どこだって牢の中よりはましなはずよ。本当に汚かったわ…。
私が泥だらけで遊んでいた(鍛えられていた)女でなければ、目をまわしてたと思うのよね。
泥だらけどころじゃないわ。藁に埋まった時も肥料の上に転がり落ちた時も、泣いてる私をめちゃくちゃ笑ってたわね。あの兄弟は…。大切にされてた事が…何1つ思いつかない…。
でも今となっては全てが私の糧になっているから、感謝するべきね。
それにしても、さすが公爵家の料理だわ。美味しすぎる。
ガタ…
「ん?」
外を見ながら料理食べてたから気配に気がつかなかったけど、前にクリフが座っている。
「少しいいですか」
よくないです…。
「ええ、もちろん。」
…もしかして気がつかれてたとか?
それなのにさっきは知らないふりしてたとかっ!?
どうしよう…強制送還されて監禁されるなんて嫌よ…
弱気になっては駄目。何があっても絶対にごまかす!
「…失礼ですが、貴女は本当に侍女ですか?」
「それはどういう意味でしょうか?」
まさかニーナじゃないかっ?て疑惑が浮上してるとか…?
「いえ、伯爵邸で働いている方に教えて頂きたい事があったもので。」
「何でしょうか?」
「マール様の誘拐事件についてです。」
「…っ!?」
まさか、その方面で攻めてくるなんて!最初に1番恐れていた事よ。すっかり忘れてたなんて、何て馬鹿なの…!
「主の許しなくして教える事はできません。まず、旦那様に伺いをたてて下さい。」
「マール様の誘拐について、我々が探している犯人が貴女の妹ではないか…という疑いがあります。」
「犯人…?妹が…?」
「ええ。なので1度会わせて頂けませんか?」
「…冗談ですよね?」
「いえ、冗談ではありません。」
「何をどうして妹が犯人になるのか、教えていただけませんか?」
「それは出来かねます。他の誘拐にも関与している可能性も捨てきれませんので。」
まさか…また犯人として疑われるなんて…。
どこをどう巡ればそうなるの?確かに隠し部屋に私が着てた服とマール君の服はあったのは見つかったと思うけど。
っていうか、クリフ達はあの裏切り者3人を捕まえてたりするの…?もしそうなら、『ブロンドでグリーンの瞳』って嘘ついてたのはすぐ解るよね。
…クリフ…何がしたいのか解らないけど、少し頭を使ってきたわ…。




