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見つけられない婚約者

 今日は朝はご機嫌で出ていったのに、お邸から帰って来て、そしてこの伯爵の言葉が私に止めをさした。


「今度あるリード公爵家主催のパーティーに是非一緒に行ってほしい。」


「またマール君を見てればいいのでしょうか?」


 正直なところパーティーという催しに行きたくないのよね。


「いや、今回は私とニナだけが招待されているんだ。」


「…なぜ…でしょうか?」


 マール君の教育係だからって、公爵主催のパーティーに招待されるなんて普通ありえないよね。


「この前のパーティーに出席していた友人が『ニナとエドワード王太子の恋人』の事を公爵に言ったらしくてね。『是非1度会ってみたい』という話になったそうだ。」


 お断りします…って言いたい!言いたいけど…!!公爵に招待されてるのに『行きたくない』って伯爵が返事出来る訳がないよね。『侍女も連れて来れないのか』…ってなっちゃうし、万が一公爵家から睨まれたら終わりよ。

「喜んで出席致します。」

 って言うしかないよね。


 公爵主催って、もうそれ王子が来るのはほぼ確定パーティーよ。そんな所へ自ら出席したくない…

 けれどマール君の教育係を勤めているし、衣食住を与えて貰ってるんだから、それくらいはしないと駄目だよね。


 よく考えればこれはチャンスよ!

 王子の顔を見ることが出来るんだもの。これから何処かで出会う事になったとしても、ニーナだとバレないように対応出来るわ。


 だけど、気になるのは『エドワードの恋人』なのよね。私の事を有る事無い事王子に喋ってるだろうし、自慢気に私のところへ来て嫌みを言ってくるはずだわ。物凄く面倒っ!


 公爵に挨拶がおわったら、後は体調が悪いと言って下がらせてもらおう!くれぐれも『エドワードの恋人』に見つからないよう注意しなきゃね。


 それにしても何故『私とエドワードの恋人』に興味をもったのかしら…それくらいの事で公爵のパーティーのゲストとして招かれるなんて、何だかな嫌な予感がするわ。





 マールくんの誘拐について、すぐに調べにくると思っていたのだけれど、伯爵が多忙で時間がとれないらしい。お仕事熱心で優しくて素晴らしい領主だわ。


 考えてみればそうよね。公に調べている訳でもないのに、伯爵の貴重な時間を割く事はできないもの。


 それにマール君の誘拐については、伯爵はかなり怒っているようだし、時間があってもお話するつもりはないような気がするのよね。私を誤認逮捕した事で、更に怒りが増してるしね。

『牢に入った事があるなんて事が知れたら、ニナの将来を潰してしまう!』って。

 だから、箝口令をしいてくれているの。


 これで雇用期間が終われば、誘拐にも貴族にもかかわらなくてすむんだよね。私の生活はそこから始まるのよ!


 けれど、最後の難関が待ち受けているわ。


 リード公爵のパーティーよ…



「ニナ様、ドレスを仕立てますので此方へお願いします。」

「はい。よろしくお願いします…」


 こんな風にドレスを仕立てて貰ってたのはいつ頃までだったかしら。急に婚約が決まって、その後は家からは1歩も外に出る事も出来なくて…。


 ここに来たら来たで、あの邸に追いやられて。何の意味があって私は『礼儀知らずの王子』と婚約する事になったの?

 よく考えればおかしな話だよね。国でのやり取りなら、レイラ姫を婚約者にすると思うのよね。そもそも、この国の王様が私の事をどこで知ったのかしら…。

 私の家は特にこの国と懇意にしていた者などいないんだもの。

 何だか怖くなってきた。『会いに来ない』のではなくて、『会う必要がない』のかもしれないわ。

 形だけ婚約者にしておいて、何か同盟を進めている…とか。


 …どう考えても同盟や国際交流に『私と王子』の婚約が全く結びつかないんだけどね。


 でもこの予想が当たっていたら、必要なくなった時はお払い箱になるよね、きっと!


ううん、そんな簡単な話じゃないわ。


『会う必要はない』けど

『居てもらわなきゃ困る』

そんな存在なのかもしれないわ。


1度いなくなってしまったから、今度は逃げられないように監禁されてしまう可能性だってあるよね…


まさに飼い殺しじゃないの…


早く仕事を探して自立しないと!

楽しい暮らしの前に、自由すら与えられなくなるわ。


公爵のパーティーは、教育係最終日。きっと大丈夫よね。

次の日の朝には私は伯爵邸にはいないもの。



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