表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

お付き合いとか彼氏とか

 揉めた原因は、双子の妹である愛に彼氏を奪われたからだ。

 ……いや、まあ、彼氏と言っても中学の卒業式の日に告白された後、ほとんど会えていなかったのだが。


「ちょっと、付き合ってほしい」

「どこへですか?」

「……いや、そうじゃなくて、彼氏彼女って意味で」


 卒業式の日。愛は両親と共に買い物と食事に出かけたので、一人で家へと向かっていた。そんな唯を呼び止めた学生服姿の少年――澤木さわきは、赤くなりながら告白してきた。


(『ちょっと』って言うから、どこか行くのかと思った)


 学校の図書室で読んだ、漫画のようだと思った。しかし、漫画とは違って頷く訳にはいかなかった。漫画のようなイケメンとまでは言わないが、地味な唯と違って眼鏡をしていても背が高くて格好良い。しかし、好き嫌い以前の問題があるのだ。


「あの……でも、卒業後は進学せずに家で家事手伝いになるので、彼女になるのは無理です」

「え?」

「あ、ガラケーでネット契約もしていないので、トークアプリとかのやり取りも出来ません」


 三年間同じクラスだったので、顔と苗字くらいは知っていた。いや、他の男子生徒とは違い、愛をチヤホヤするのに地味な唯を貶めることがなかったので、恋愛云々はともかく悪い印象はない。

 けれど、だからこそ彼女らしいやり取りの出来ない自分では、申し訳なさすぎる。そう思い、はっきりキッパリ答えると――何故だか、温かい眼差しと笑みを向けられた。


「だったら、ショートメールは出来るだろ? 返事は気にしなくていいから、たまにメール送っていい?」

「でも……」

「あと、夕飯の買い物でスーパーとか来るよな。毎日じゃなくても、そういうところで」

「……はい」

「あ、ストーカーとかじゃないぞ!? 学校帰りに、見かけたことあるからっ……何て言うか、進学しないなら尚更、このまま支倉と別れたくない」

「あの……友達じゃ、駄目ですか?」

「俺が好きだから、駄目」


 先程までは照れていたが、唯が断ろうとしても食い下がってくる。

 ……結局、澤木に根負けした唯は「すぐに自然消滅するだろう」と思いつつも頷いて、電話番号のやり取りをした。



 唯が中学校を卒業してから、二か月ほど経った。

 澤木からは、今も朝昼晩とショートメールが来る。返事は気にしなくて良いと言われたが、唯も短いながらも返信していた。

 そして今日は、唯の誕生日だからスーパーに行くまでの途中にある歩道橋で会おうと言われている。

 だがエコバックを手に、階段を上がっていくと――妹の愛とキスしていた澤木が、唯を見て眼鏡の奥の目を大きく見開いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ