勉強熱心な結果
女神様のご加護とは、母であるウーナや侍女達がケフィアを飲んで出た美肌効果のことを言う。つまりは男性だが、あの料理人達もお肌スベスベになったということだ。
「いや、まあ、肌艶は男女問わず良くなるけど……そんなにあいつら、ケフィア飲んでたの?」
「ええ、来店ごとに」
「え? 初日だけじゃなかったの?」
「はい、営業日ごとに毎回、いらして飲んでいました」
「「へぇ」」
給仕をしてくれている侍女達の言葉に、オリヴィアとヴァイスは驚いた。そして、確かにケフィアは唯一、レシピが公開されていない飲み物である。随分と勉強熱心だと、オリヴィアは感心した。
そんなオリヴィアに、リタがおずおずと尋ねてくる。
「あの、それで……私達も、毎日ケフィアを飲んで女神様のご加護が出ているので、料理人の方々もケフィアのおかげだと気づいたようで……お嬢様に直接、お礼を言いたいそうです」
「え?」
「大丈夫か? オリヴィアに、レシピの公開を早めろとかねだるんじゃないか?」
リタの申し出に、ヴァイスがそんなことを言う。けれどリタと侍女達は、ヴァイスの言葉に慌てて首や手を横に振った。
「それはないですっ! 正直、わたし達もそうかと思って、何度も断ったのですが……料理人として、レシピの公開に慎重になるのは解っている。ただ、本当にお礼を言いたいと」
「手紙では駄目なのか、と言うと……あの、レシピの為に読むことは何とか出来ますが、書くのは苦手だそうで」
「「あ」」
言われた内容に、納得する。この異世界は、前世と違って識字率が低いのだ。更に料理人などの職人は基本、先輩の技術を盗んで覚えるので読み書きは必要ない。ただ、確かにレシピを読む為には文字を読むことが必要なので、必要に迫られて覚えたのだろう。
(前世でも英語を、かろうじて読めはするけど話せないし、書けない……アウトプット出来ないって、聞いたことがある)
そう思うと、料理人達の申し出は納得出来る。いや、むしろレシピに絡まないでくれるなら直接、話が聞けるのは嬉しいし、今後の参考になる。
ただ、オリヴィアは未成年――でもあるが、まず子供である。しかも貴族なので、両親の許可が必要だと思ったところ。
「あ、勿論、ご主人様や奥様の許可は得ております! あとは、お嬢様と聖獣様に任せると」
「「あ、はい」」
言われてみれば、リタ達はそもそもこの家に雇われているので当然だ。そして事前に許可を取ってくれているのなら、オリヴィアの答えは一つである。
「解ったわ。次の日曜にお店に行くわね」