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【連載版】女神の加護? いいえ、ケフィアです。  作者: 渡里あずま


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腕力と語彙力

 ヨナスにお願いすることになり、夜だったので翌日、朝食後に厨房でまずシャンティクリームを作ることにした。オリヴィアの家族はそれぞれ仕事や勉強だが、ハンナ達侍女はオリヴィアについて厨房に来た。

 まず、シャンティクリームを乗せる為にヨナスに頼んでパンケーキを焼いて貰う。

 そして侍女達が見守る中、ヨナスは生クリームをボウルに入れ砂糖を追加し、氷水を入れたボウルに入れて冷やしながら泡立てて貰った。

 ちなみに、お菓子作りがあるおかげで泡立て器はあった――あったが当然、電動式ではないので人力である。


「うおぉぉぉっ!」

「その調子だ、ヨナス!」

「ヨナス、がんばって!」

「はいっ!」


 気合いを入れながら生クリームを攪拌するヨナスに、ヴァイスとオリヴィアは拳を握って応援した。そうこうしているうちに、液体だった生クリームがトロリとし、やがてふんわりと泡立った。


「やったぞ、ヨナス!」

「ヨナス、すごい!」

「本当に、雪みたいなクリームですね……味見してみても、いいですか?」

「おう!」

「もちろんよ!」


 予想よりは早かったが、それでもヨナスは十数分間ずっと攪拌し続けたのだ。功労者がまず口にするべきである。あと個人的に、初めてシャンティクリームを食べるヨナスがどういう感想を持つかも気になる。

 そんなオリヴィアの視線の先で、ヨナスが泡立て器からスプーンで掬ったシャンティクリームを口にすると――途端に頬を緩ませ、恋する乙女のように目を輝かせた。


「うまぁ……」

「語彙力仕事しろ!」

「ヴァイス……」


 ヨナスの言葉に、ヴァイスがツッコミを入れる。オリヴィアとしては十分、美味しさが伝わって満足だったので窘めるように名前を呼ぶと、ヴァイスではなくヨナスが直立不動になって答えた。


「失礼しました! いや、しかしこれ、本当に美味いですよ!? 味は濃いんですが重くなくて、でもコクはあって。あと、見た目だけじゃなくて雪みたいに軽くて、口溶けがまた良くて……本当、美味いです」


 今度は一転して、シャンティクリームについて熱く語ってくれた。しかも大切だったのか「本当に美味い」を二回言った。 


「ヨナス、俺もっ」

「あーん」


 その食レポに抗えす、ヴァイスとオリヴィアは口を開けてシャンティクリームの味見をねだった。小鳥が餌をねだるような可愛らしい仕草に、彼らを見守っていたハンナ達がほっこりした表情になる。


「はい、どうぞ」


 そんなヴァイスとオリヴィアに、ヨナスはそれぞれスプーンを用意し、順番にシャンティクリームを口に運んでくれて――その美味しさに、パッと顔を輝かせた。

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