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鯉の天昇り  作者: 陽
第二章
3/16

2話  おたまじゃくしの始まり

 俺は二度目の転生を終えた。

 今の俺はおたまじゃくしだ。前世では成体にかなり近い状態からのスタートになったようだったが、今回は子供からのスタートのようだ。

 何歳の体に転生するかはランダムなのかも知れない。


 そう言えば神様が言っていた。

 転生するたびににスキルが与えられるって。

 一体俺はどんなスキルを手に入れたんだろうか。


 《マスターが今回手に入れたスキルは〜完全変態〜です。完全変態は同種の生物ならすべて体を変えられるスキルです。よって、現在は魚類、両生類の二種に変態可能です。》


 完全変態と言うスキルを手に入れたようだ。

 そんな変態みたいな名前じゃなくても良かったんじゃないかと思ってしまう。

 俺は今、鯉とカエルという魚類と両生類になった事がある為、ほぼ同じ性質を持つ生物なら変態出来るようだ。

 後、残っている種族は爬虫類、鳥類そして哺乳類だ。哺乳類に転生出来れば俺は人に変態出来る事になるな。

 早く人間になりたーい!


 取り敢えずこれからどう生きていくか考えないといけない。まずは食事の確保だ。

 俺としては何を食べてもいいのだが、体に合った物を食べないと色々と不都合が生じるらしい。

 前世で俺はいろいろ食べ過ぎて腹がめっちゃ痛くなった(後日談)。

 そんな事にならないよう今度は気をつけよう。


 《おたまじゃくしって何を食べるんだ?》


 《おたまじゃくしは主に水草を食べます。

 周りに藻が多い為、藻を食べる事をおすすめします。》


 頭の中で会話する。一人でも会話相手がいるだけで心は結構温まる、ほっかほかですよ?ほっかほか。………別にぼっちとかじゃないんだからね!


 空間把握を使って周りを調べる、………確かに周りは藻だらけのようだ。俗に言う死んだ水と言うやつだろう。


 それと小さな生命反応が一つあった。

 正体を確認するために生命反応のある方へ泳いでいく。一応バレないように見に行こう。



 ・・・あれは……俺と同じおたまじゃくしだな。

 特に害は無さそうだ。別に放って置いてもいいだろう。

 ん?何故かこっちに近づいて来た。バレたか?


「あんた見ない顔っすね。最近ここに来た感じっすか?」


「ああ。ついさっきここに来たんだ。」


「なんで俺の事じろじろ見てたんすか?」


「ご近所さんがどんな方かと思ってな。

 気に触ったなら謝る。」


「そう言う事っすか。それなら全然大丈夫っすよ。

 いやー、実は俺も結構長い間一人だったから寂しかったんすよ。

 俺の名前はデスタっす。これからよろしくっすね。」


「ああ、よろしく。」


 かなりフレンドリーな奴だな。まぁ悪い奴では無さそうだ。

 俺としてもずっと一人は寂しいし色々助け合いもできそうだ。メリットのある関係だろう。



 これで当分の食料問題は解決し、ご近所付き合いもできた。

 後は天敵がいるのかどうかだ。天敵がいるなら対策はしておきたいし、完全変態を使ってサメとかになれば大抵の魔物は倒せるかも知れない。


 《おたまじゃくしの天敵、それとカエルの天敵ってなんなんだ?》


 《おたまじゃくしは主にタガメやゲンゴロウ、トンボ、ゲンジボタル等の水生昆虫 (一生のある部分を水面または水中で生きる昆虫) に捕食されます。なお、この世界に前述の生物がいるかは分かりません。

 カエルの天敵は鳥類、ヘビ、イタチや狸等の哺乳類、大型のカエル、肉食水生昆虫、肉食魚類です。これらの生物は肉食魚類以外存在は確認していません。》


 おたまじゃくしもカエルも敵が多そうだな。これは早いとこ大型の生物に変態した方が良いかもしれない。











 その晩、俺は狩りにでた。………と、言ってもどこにでも藻はあるから狩りと呼べるかは分からないが。

 早速飯にありつけた事だし食事とする。

 いただきます。

 藻を口に入れる。藻を噛む。飲み込む。

 ………これ、味あるのか?

 全く味がしない。ずーっと、サラダのドレッシング無しを食べ続けている感じだ。

 俺はベジタリアンじゃなーーい!!

 カエルになれば肉を食う事も可能だと思うので早くカエルになりたい。






 ………そんな生活を続けて2週間。運良く捕食者に出会っていないがそろそろ遭遇してもおかしくはない頃だろう。


 そうそう。空間把握で調べてみたんだが、俺が今いる場所は前世で生まれた池からとても近い場所のようだ。デスタが言うにはこの池には圧倒的な捕食者が一体いて、みんなそいつから隠れるように生きているらしい。


 取り敢えず今日の飯を食べに行こう。

 早く肉が食べたいなぁ。そんな事を考えながらいつもの食事場へと歩み?を進める。


 《警告、近くに大きな生命反応を確認。

 捕食者の可能性があります。》


 久しぶりに聡明叡智の声を聞いた気がする。

 今まで捕食者に遭遇した事は無かったので少し驚いた。しばし身を潜めよう。

 ・

 ・

 ・

 あれは………デスタじゃないか。


 デスタは藻を避けるように左右へと泳いでいた。

 その背後を見ると俺たちおたまじゃくしよりも数十倍は大きい魚が藻などを気にする事なくデスタに向かって突進していた。


 放って置いてもいいが色々教えてもらったし、

 何より見殺しにしたら後味が悪そうだな。


 《どうにかしてあいつを助ける方法はないか?》


 《完全変態を使用するのが最適だと思います。》


 よし、サメにでもなって体当たりしてみるか。


 俺はサメに変態し捕食者をおいかけ始めた。

 サメになって泳いでみて分かったが捕食者が藻を無視して泳いでいる理由が分かった。

 おたまじゃくしの時は藻がかなり大きく感じたが、今は気にならないぐらい小さく感じる。


 さて、そろそろ追いつきそうだ。

 おたまじゃくしになって初めての戦闘だ。

 気張っていくぞー!


 ・・・向こうはまだこちらに気づいていないようだ。それならこちらから先制攻撃を仕掛けるのが一番良いだろう。


「おい!そこのお前!デスタから離れろ!」


 そう言いながら俺は捕食者へとタックルする。


 ビューン!ズドン!


 ギョギョッ!!!


 驚いた事に捕食者は俺のタックルを受け止めやがった。さすがだ。この池の頂点に立っているだけはある。


 それにしても変な鳴き声だ。


 それはさておき、俺のタックルは捕食者を止める事ができた。一応効果はあったと思いたい。


 捕食者は動きを止めた後、こちらを見てきた。

 俺に標的を移したようだ。これでデスタは生きのびる事が出来ただろう。


 ギョギョギョッ!!!


 こちらを見るとすぐにさっきの変な声を上げてきた。どうやら威嚇をしているみたいだ。

 でもあんな声でビビる奴なんていないと思う。


 俺と捕食者は互いに間をとって距離をはかる。


 先に攻撃を仕掛けて来たのは捕食者だった。

 俺に向かって勢いよく突進して来た。

 俺もそれに応えるかのように捕食者に向かって突進する。

 これは力が上回った方に軍配が上がりそうだ。

 俺は全力で捕食者にタックルを叩き込む。

 だがまたしても俺のタックルは受け止められてしまう、それどころか捕食者の力に押され始めた。いつかは池の端に叩きつけられる、もしくは勢いに乗って池の外に押し出されるかも知れない。


 何か手はないか?!


 《水操作を使用し、水圧加速に乗るのはどうでしょうか。突進力が上がると思います。》


 そうか!その手があったな!


 俺は聡明叡智の助言の通り水操作を使用し、水圧加速を俺の体にぶつける。


 よし、少しずつだがこちらの力が捕食者を上回って来た。

 このままいけば相手を押し切れるだろう。

 と思ったのだが捕食者にもこの池の頂点としてのプライドがあるらしく必死の抵抗をして来た。

 ………まぁそんな抵抗も虚しくすぐに池の端に叩きつけられてショック死してしまったのだが。

 ショック死するほど力が強かったか?


 《スキル〜水圧加速〜を入手しました。

 水圧加速を解析した結果、スキル〜水圧操作〜

 を入手可能です。入手しますか?》


 お願いしておく。


 《スキル〜水圧操作〜を入手しました。

 水圧操作を水操作に統合可能です。

 統合しますか?》


 うーん。水操作から出来たスキルだから水操作に統合できるのは理解できるけどさ、これってする意味あるのか?


 《ステータスが見やすくなるくらいでしょう。》


 ・・・ほほう?ここに来て新たな異世界ワードが出てきたな。

 ふっふっふ、説明しよう!ステータスとは頭の中でステータスと思い浮かべる、もしくは言葉にしたりすると自分自身の能力とかなんやらかんやらが色々分かっちゃうスゴいや〜つである!


 ・・・これで合ってるよな?


 《はい、だいたい合ってます。》


 よっしゃ。これで俺もステータス使いだ!

 まぁ、ステータスくらい誰でも使えそうなんだけどね。俺もやる事をやってから後で確認しよう。


 ・・・さて、この死体をどうしようか。

 放っておいたら水が臭くなりそうだ。

 ていうか、肉食な俺としては久しぶりの肉だから食べたいんだよね。

 でも腹痛は嫌だしなぁ。




 ・・・待てよ。今の俺なら肉を食べても大丈夫なんじゃないか?サメは肉食だし完全に変態してるなら体の構造もサメと同じなはずだ。


 《なぁ、完全変態って内部の構造まで全部変わるのか?》


 《はい。その通りです。》


 《じゃあ今の姿なら肉を食べても大丈夫って事だよな?》


 《問題ありません。》


 やっぱり思った通りだ。

 ひさしぶりの肉にはテンションが上がるな。

 では早速。いただきます!

 口を大きく開けてかぶりつく。

 

 

 

 ……と思ったのだが、今の姿だったら少ししか食べれない事に気づいた。

 気づいた俺は天才かも知れない。


 《それは言い過ぎです。》


 こいつ、毒舌になってないか?


 それはさておき、肉をいっぱい食べれないのはもったい無い。

 他の肉食魚に変態しよう。


 そう思い一旦おたまじゃくしの姿に戻る。

 その時、何かが俺に向かって泳いで来た。


「兄貴ぃ!

 さっきはありがとうございましたぁ!」


 あ、兄貴だとぉ!

 ってデスタじゃないか。


「突然どうした?兄貴ってどう言う事だ?

 いつ俺がお前の兄貴になったんだよ。」


「兄貴の戦いに感動したっす!!

 これから兄貴って呼ばしてもらうっすよ!!」


「普通の名前で呼んでくれ。」


「嫌っす!兄貴はもう俺の兄貴っすから。」



 ダメだこりゃ。

 意外と意志が硬かった。



「そうだ!兄貴ぃ!弟子にしてくださいっす!」


「なんでそうなるんだよぉぉーーー!」


「兄貴の戦いに感動して、俺も兄貴みたいになりたいと思ったっす!

 一生兄貴について行くんでお願いします!」


「ついてこんでいいぃ!」


「してくれるまでここにいるっす!」


 こいつ結構めんどくさいタイプだな。

 多分こうなったら本当にずっとこのままいるだろう。

 気は進まないがこのまま居られるよりかはマシだな。


「しゃーなしだぞ?」


「本当っすか?!

 これからよろしく頼むっす!!」


「ああ、よろしく」


 本当は弟子なんてとるつもりは無かったのに。

 仕方ないが面倒見てやるか。




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