表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱のスキルからの昇華  作者: びゃっこ
18/24

稽古開始

あれから1ヶ月が経った。始めは安静にしとけと部屋から出して貰えなかったが、半月が経つ頃には少しずつ外に出してもらえるようになった。


今日は珍しく朝からお爺様に呼ばれた。久しぶりの呼び出しに胸を躍らせながら向かった。

執務室に行くとお爺様の他にカルロスがいた。


「お爺様、なんの御用でしょうか?」


「今日からお主にも剣の稽古をと思ってな」


「本当ですか!」


正直のところ剣には興味があった。最近は兄様たちの剣の稽古を見ると、我自身もやりたい衝動に駆られる。


「お爺様、それで我が師となる方は何処に?」


「それはカルロスに任せるつもりじゃ。どうかのう?」


「カルロスなら安心です。カルロスこれからよろしくね」


「はい。誠心誠意務めさせて頂きます」


「ラルフ、ところでお主は初代様と混ざったのであろう」


「はい、そうですが。何か問題でも」


「そうじゃな。それであれば剣ではなく刀が良いかも知れぬ。初代様の時代は刀が主流だったらしいからのう」


「そのようですね。刀の方が良いかも知れません」


「そうであろう。いやはや、刀を準備しておいて正解だったのう。そうじゃ、ラルフ儂から教えてやろうか」


何故か少し上機嫌だ。不思議に思っていると、カルロスからストップがかかる。


「陛下、そろそろお時間です」


「そのだったのう。はぁ、後のことは其方に任せるぞ、カルロス」


「承知致しました。それでは、殿下こちらへ」


我はカルロスに連れられ執務室を後にした。お爺様はしょんぼりしてて少し可哀想だ。


それから暫く歩き、木造の広い建物へと連れて行かれた。


「殿下、少しお待ちください」


カルロスはそう一言告げると、この建物をあとにした。そして、数分後クロムを引き連れて戻ってきた。


「お待たせ致しました、殿下。殿下早速ですがお召し換え頂きます」


カルロスはそう言い、白地の上衣と黒の袴を出した。これに着替えるということか。これは晴明様の頃の記憶には無いな。つまり、その後に出てきたものか。


「殿下、それではあちらへ参りましょう」


クロムと共に別室へと移動し着付けて貰う。クロムが言うにはこの和装へとなったのは3代目の頃らしい。

それを聞くと素朴な疑問が浮かんできた。


「クロム、そういえば、お兄様の試合を見に行った時、刀を使ってる人がいなかったんだけどどうしてなの?」


「それは刀は扱うのが難しく、作るのが困難を極めるからです。それに比べ剣は扱うのも刀に比べれば容易ですし、作るのも簡単ですしね」


「それって、剣の方がいいんじゃ」


「いえ、刀は極めれば何者にも負けないものとなります。それを体現なさっておられるのが陛下です。陛下は類まれなる刀の才により英雄となり、王位を継がれたのです」


「お爺様にそんなことがあったとはなぁ」


「はい。陛下もきっと喜んでおられるでしょう。殿下が刀をお使いになると知り」


「でも、我に剣の才はないと思うんだけどなぁ」


「殿下であれば大丈夫ですよ。なんたって、私の自慢の殿下ですから」


「ありがと。まぁ、頑張ってみるよ」


「はい! 応援しております」


話しが終わると、クロムは話に夢中で手が止まってるのに気づいたのか、急いで着付けをした。

その後、我とクロムはカルロスの所へと戻った。


「カルロスお待たせ、どう?」


「お似合いです。それではこちらを」


──カルロスは真面目だなぁ。まぁ、そこもいいとこなんだけど。

そんなことを思いつつ、カルロスから一振りの刀を貰った。


「これは陛下から殿下にと仰せつかった物です」


「お爺様……」


「良かったですね」


こればかりはとても嬉しい。自分へとお爺様がくれたものだ。期待に応えれるよう頑張ろう。そう。強く思った。


「殿下、それでは基本の抜刀からお教えします」


「え?カルロスって刀も使えるんだ」


「いえ、私は刀しか使えませんよ。陛下は殿下が刀を選ぶと分かっていたようですね」


「そうなんだ。カルロス、改めてよろしくね」


「はい。こちらこそ、殿下の師となれて嬉しく思います」


その日は1日中抜刀、納刀の練習をした。

左手で鞘を持ち鯉口を切る。右手で柄を持ち、左手で鞘を水平にし、真っ直ぐ引き抜く。

納刀は左手で鞘の鯉口の少し下を持ち、刀の切先を鯉口に乗せる。鞘を持っている左手首を少し浮かせ水平にする。そうすると、切先が鞘の中にはいるので後は右手の力を抜いて棟を鞘の内側を滑らすようにゆっくりと納めていくだけだ。

これを一日中反復練習した。最初は練習用の刀でやり、出来るようになってからはお爺様に頂いた刀で練習した。


元々、晴明様の記憶で刀の扱い方はある程度知っていた。しかし、知識と実践ではまるで違った。それでも晴明様の魂が体が覚えているのと同じように、魂が覚えていたようで、1日で習得することが出来た。



稽古が終わると、そのまま風呂へ向かった。どうやら狩衣はクロムが部屋へと運んでくれていたらしい。それと同時に寝間着も風呂へと置いててくれたとか。流石クロムだ。

それから風呂に入った。運動終わりの風呂は格別だった。体に溜まっていた疲労が抜けていく。いつもより気持ちよかった。

風呂から上がり寝間着に着替え、夕食を取りに行く。その際、しっかりとお爺様にお礼を言った。


夕食もしっかり取り眠気が襲ってくる。その眠気に任せベットへと入る。

今日はすぐ眠れそうだ。久しぶりに本当に充実した日だった。これが明日からあると考えるとワクワクする。明日は何をするのかな。そんなことを考えているといつの間にか眠りへとついていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ