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最弱のスキルからの昇華  作者: びゃっこ
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それぞれの思い

誰かに頬を撫でられている気がする。誰の手だろう。そっと手を当てる。──暖かい。

目を開けると目の前には少し涙を浮かべながらも穏やかな顔つきをしたルーラス大司教様がいた。ルーラス大司教様は目が覚めたのに気づき手を引こうとしていた。


「このままがいい」


ルーラス大司教様は我の言葉を直ぐに理解してくれて、僕の手を包んでくれた。とても暖かい……。貧血のせいだろうか。いや、ルーラス大司教様の心が暖かいからだろうな。そう思う。


「殿下……本当によかった」


「ルーラス大司教様、ご心配お掛けしました」


「いえ、私こそお力になれず申し訳ありません」


「そんなことはありません。現にこうして手を差し伸べて下さっているではありませんか」


「殿下……」


ルーラス大司教様は暫くの間静かに手を当てた。その後、お爺様を呼びにいった。


「ラルフ、目が覚めたか」


扉を勢いよく開けてお爺様が入ってきた。それに続いてルーラス大司教様も入ってくる。


「お爺様、ご心配お掛けしました」


「よいよい。それよりも元に戻ったようじゃな」


「いえ、似せているだけです。あの後、夢の中で我は晴明様に御指南いただいたのです」


「ふむ。まぁ、その話は追々するとして、今は目覚めたのを喜ぶとするかのう」


後からお爺様から聞いた話だと、我はまる3日間眠りについていたらしい。その間、ルーラス大司教様は暇があれば様子を見に来てくれていたらしい。ルーラス大司教様は自責の念に駆られていたからとお爺様は言っていたが、我はルーラス大司教様の優しさだと思う。


その夜、我の完治を祝ってパーティーが催された。招待されたのは完全に王国派の貴族とルーラス大司教様率いる神官達だ。ここだけの話、パーティーに神官を呼ぶのはどうやら珍しいことらしい。


皆が先に咳に着いている中、我はお爺様にエスコートされ中へ入っていく。

お母様やフリード兄様、ヨゼフ兄様を始めとする多くの人が我の無事を心待ちにしていてくれたようで、我を見て笑みを零していた。

とても有難く、嬉しかった。その反面、心配をかけてしまって申し訳ないとも思った。この事件は我の独断でしたことでもあるしな。


そして、お爺様と我は皆の前へと行く。

お爺様が口を開く。


「この度は急な催しにお集まりいただき感謝する。この催しは儂の子であるラルフが無事完治したものによるものだ。そして、お主らには心配をかけたな。今宵は楽しんでくれ」


お爺様の話が終わると、皆グラスを持つ。


「乾杯!」


「「乾杯!」」


その声を合図の鐘とし、最初の穏やかな雰囲気から一変し和気あいあいとしたものに変わった。

我は始まると共に家族の皆に謝罪することにした。特にフリード兄様には迷惑をかけた。

謝罪はお母様、フリード兄様、ヨゼフ兄様の順でするつもりだ。


「お母様、心配お掛けしました。申し訳ありません」


バチンッ!

我の頬を叩く甲高い音が会場内に響いた。それと同時に会場内は静寂に包まれた。


「お母様……」


「心配したわ! 貴方を失ったと思ったわ!」


「お母様……すいません」


だよね。我の命をかろんじている行動は怒って当然だ。

──そんな思いを胸に馳せていると、涙を浮かべたお母様が我を抱きよせた。



「本当に無事で良かったわ。貴方が城に運ばれてきた時はもう駄目かと思ったわ。でも、こうして生きててくれて、ありがとう」


「お母様……」


自然と涙が溢れてくる。これが愛情か。言葉では表現できない気持ちが込み上げてくる。


── パチパチパチ


拍手の音が聞こえる。貴族たちから拍手喝采を浴びている。我は意味がわからず困惑していたが、お母様は少し照れていた。


その後はお兄様方に謝罪をした。2人はとにかく無事で嬉しいと言ってくれた。


お兄様達への謝罪を終えると、待ったなしで貴族たちが我のもとへと来た。我と面識の無いものもいたが、それでも心配してくれていたのだと思うと感謝しかでなかった。


一通り貴族たちとの会話を終えると我は食事にありついた。3日ぶりの食事だというのも相まって、とても美味しく感じた。


それから食事をとっていると、目の橋に皆の影に俯いた者がいるのを見つけた。


「ジル」


「──殿下」


「ジル、無事で良かった」


「殿下、私は……騎士失格です」


「急にどうしたの?」


「私は主である殿下をお護りすることが出来ず、殿下の命を危機に晒しました。本当であれば死んでも殿下をお護りする立場にも関わらず、護って貰うなど、騎士の風上にも置けません」


「……ふむ。少し聞け」


「で、殿下?」


「本当のことを言うとこちらの方が話しやすいのだ」


実を言うとあの前の話し方よりはこの話し方の方が話しやすい。晴明様には悪いがな。


「ジル、あれは我がやりたくやった事だ。お主に非は無い。なんと言おうともそれは変わらぬ。それとな、我はお主に死んでも護って貰いとうない。お主が生きて居なければ残され方は辛いのだ。お主は我の騎士だ。我の騎士ならば勝手に死ぬことは許さぬ。良いな」


「は、はい」


「それじゃあ、折角のパーティーだし楽しもっか!」


「殿下、そうですね」


ジルは元気を取り戻してくれたようだ。本当によかった。

それから、我はもう1人の騎士のもとへ向かった。


「クロム」


「で、殿下」


そう言うとクロムは泣きながら抱きついてきた。


「ク、ロム。心配かけたね」


「殿下ー!」


暫くしてクロムは落ち着きを取り戻したようで、何度も謝ってきた。


「クロム、落ち着いた?」


「はい。申し訳ございません」


「いいよ。クロムにも心配かけたね」


「本当に無事で何よりです」


その後は皆酔いに酔って、ハチャメチャとなった。


「フリード、ヨゼフ、ラルフ、もう寝なさい」


お母様から寝るよう言われ兄様たちはそそくさと部屋に戻っていった。

それから、我も兄様たちに続き会場を後にしようとしていると後ろから声がかかった。


「殿下、お待ち下さい」


そこにはカルロスがいた。


「カルロス、どうしてここに?」


「団長から殿下はお目覚めになってすぐだと聞きましたのでお付き添いしようかと」


「我のことなら大丈夫だ。カルロスも飲みに行きなよ」


「いえ、これは団長からの指示でもありますので、お供させていただきます」


意外だ。ガスフィルの指示だったとは少し驚いた。


「殿下、お手を」


我は手を差し出す。それから、カルロスに連れられ部屋へと戻った。


「カルロス、ありがとね」


「勿体なきお言葉」


カルロスも居なくなり部屋には我1人となる。なんだか久しぶりだ。この部屋にいるのが。今回命の危険に晒されたせいか、頭が無意識にこれまでの事を振り返っている。

それから我は少しの間思い出に浸る。

それを終えると久々の風呂へと向かった。久々のの風呂なのもあって、新鮮な気持ちで入れた。


風呂から上がると寝間着に着替え、ベットへとダイブする。懐かしい感覚に陥りながらも、眠りにつくのは早かった。


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