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最弱のスキルからの昇華  作者: びゃっこ
15/24

初代

「……。nか。殿下。殿下!」


僕は僕を呼ぶ声で目を覚ます。目を開けるとそこにはルーラス大司教様が居られた。


「ルーラス大司教様?」


「殿下!良かった。本当にお目が覚めて嬉しく思います」


「ここはっ」


体を動かすと急に激痛が走った。じわじわと痛みが込み上げてくる。今まで忘れていたかのように戻ってくる。身体中が悲鳴をあげている。

あまりの痛さに倒れてしまった。すかさずルーラス大司教様が支えてくれた。


「殿下!あまり無理をなさらないように。今の私では軽傷の止血が限界でして、そのほかの傷は対処しきれていません」


「……っく」


痛みで1歩も動けない状況だ。恐らく、時間が空きアドレナリンの分泌が1度止まったからだろう。

だから、あの時に緩和されていた痛みが今激痛として体中を迸っているのだ。


「殿下!殿下!お気を確かに」


「ルーラス大司教様、ごめんなさい。僕の血で衣が……」


「大丈夫ですよ。殿下はご自身のことだけ考えてください。少し失礼します」


ルーラス大司教様は僕を抱き上げ、近くの椅子に座った。


「殿下、陛下が今向かっているようです。それまで、ここで待っててましょう」


「はい」


それから、半刻ほどお爺様が来るのを待った。その間、ルーラス大司教様にジルの容態を聞いたところ、大丈夫らしい。一安心だ。なんか眠くなってきた。今日は色々ありすぎて疲れたのかな。お爺様が来るまで一眠りするか。


「ルーラス大司教様、少し休みます」


「承知しました」


それから目を閉じると自然と意識が闇へと落ちた。







数時間してサリウスとフリードが到着した。サリウスの他にはフリードが来ていた。サリウスへと報告しそのままついてきたのである。

2人は急ぎルーラスのところへと案内を通じて向かった。


「ルーラス、ラルフは……」


ルーラスは唖然としていた。彼から見れば、ルーラスがラルフの死体を抱えているように見えたからである。


「陛下、それとフリード殿下。御二方、少し落ち着いてください。ラルフ殿下は先程お休みになられました」


「そうか。それは良かった。それで、ラルフの容態は?」


「陛下、非常に申し上げにくいのですが、このままではもう……」


「なんじゃと……」


「ラルフ殿下は陛下もお見えになるように、衣がボロボロになるまで傷を負い、衣全体が全て血で染まっています。相当な出血量です。その上、出血が続いています。それも大量にです。私の衣を見れば分かると思います。先ほど目を覚ましたが、それも今では最後の底力だったのではと感じてきます」


実際ルーラスは手で抱えていたが、ルーラスの衣も前側が血で染るだけでなく、袴の方まで血が伝っていっている。


「お主は何をしておったのじゃ!お主の魔法なら治せるはずじゃ」


「万全の私であれば完治することが出来ましたでょう。ですが、先の催しで魔素を使い果たしてしまい、軽傷の止血で精一杯でした。本当に申し訳ありません」


「いや、すまぬ。お主は最善を尽くしてくれたというのに儂は……」


「いえ、陛下のお気持ち御察し申し上げます」


「……。ラルフも儂は失うのか。なぜじゃ。なぜ儂の子は……」


「陛下……」


落ち込み、悲しみに暮れている2人。そんな中、 フリードだけは違った。フリードはまだ諦めていなかった。フリードは自責の念を感じながら助けれる方法を考えていた。


「お父様、エリクサーならどうでしょう?」


「名案じゃ、フリード。エリクサーであれば助けることが出来る。今はまだ息があるのじゃろう」


「はい。しかし陛下、あれは国宝の1つですぞ。それをそう易々と……」


「良いではないか!それでラルフが助かるのなら使わない道理はない。国宝がそんなに大事か、ルーラス」


「いえ、私は大賛成です。しかし、貴族にはどう説明を?」


「ラルフ我が国の王子じゃぞ。つまりは国の宝じゃ。それで良かろう」


「はぁ。分かりました。急ぎ城へと向かいましょう」


「すまぬな、ルーラス」


「いえ、陛下こそお変わりないようで」


話の間フリードは2人の親しげな様子に困惑していた。

その後、3人は急ぎ馬車へと急いだ。


「陛下、私は自分の馬車で行きます」


「衣の事か?よいよい気にするでない。今は急がねばならぬからな」


「それではお言葉に甘えさせていただきます」


ルーラスはそういい馬車に乗り込んだ。3人が乗ると馬車は直ぐに出発した。


それから、数十分してラルフに変化があった。


「大司教、陛下とはどのような間柄で?」


「ただの旧友ですよ。私が教会に入る際に縁を切ったのですよ。私と陛下が癒着しているなど噂が立つかも知れませんから」


「と言っても、表向きだけじゃ。今もこうして付き合っておる」


「そうなんですか……。お父様、ラルフが!」


「ラルフ殿下、お目覚めですか?」


「ルーラス、待て。ラルフではない」


「どういうことですか、陛下」


ラルフは目を覚ましたが、前とは打って変わって様子が違う。別人だ。


「ふむ。なるほど。魂の劣化を防ぐためか」


「お主は誰じゃ」


「ああ、お初にお目にかかる。我は安倍晴明と言う。この国の初代国王と言えば分かるか。主らのことはこの者を通して観させてもらった。サリウスと言ったか。急がねばこやつは死ぬぞ。我が出ているのはこやつの魂が消えかけているからだ」


「初代様じゃと?にわかには信じられん。じゃが、代々の国王にのみ伝えられる初代様の名は確かなものじゃ」


「まぁ、信じるかは主らに任せよう。それと我が出れる時間もさほどない。だから、最後に忠告だ。こやつを裏切るようなことはするな。こやつは主らが思っている以上に賢い。今、こやつをこの地に留めているのはお主らを慕っているからじゃ。特にサリウス、主への好意は異常なほどだ。だから、もし主が裏切るようなまねをすれば、こやつは壊れてしまう。全てを受け入れられなくなってしまう。最悪、この国、いやこの世界が滅ぶ。サリウスだけではなく主らもだぞ、ルーラス、フリード。こやつを頼んだぞ」


そう言い残すと安倍晴明と名乗る者は消え、ラルフは再び眠りについた。


「お父様、どう思いますか」


「間違いなく本物じゃろう。あの名は国王しか知らぬ」


「陛下、今は急ぎましょう。初代様の話ではラルフ殿下は長くないと言っていましたから」


「そうじゃな」


その後、馬車は猛スピードで城へと向かった。






時は少し遡り、ラルフが眠りについた頃だ。

ラルフは1人白い部屋の中にいたにいた。


「ここは……」


「天界よ。久しぶりね」


「フリーディア様!僕はなぜここに……」


「そうね。あなたを連れてきたのは彼だわ」


その人は50代くらいの男性だった。狩衣姿で烏帽子を被っていた。


「あなたは……」


「我は安倍晴明という」


「あべの……どこかで聞いたような……」


「貴方の前世の世界の人間だから思い出せないのは仕方ないことよ。彼は今の世界で言うと、貴方の今いる国の初代国王になった人なの」


「初代……なるほど。だから、僕が烏帽子被った時に皆あんなことを」


「それもあるけど、やっぱり彼の魂が入っているからわね。彼の影響もあり、彼に輪郭が似たのよ」


「ごほん。フリーディア様、本題をっ」


初代様は言いかけたところで一瞬で消えてしまった。


「どうやら、あちらの世界に呼ばれたようね。それもこれも、貴方が死にかけだからよ」


「死にかけ?僕は死ぬのですか?」


「そう、このままでは。死とはね、先に魂が死ぬのよ。魂が消えることで肉体は腐る。だから、今貴方の魂は消えていってるってこと」


「どうすれば良いですか?」


「そう、ここからが本題。彼の提案は私の提案と同じで、貴方と彼の魂を融合しようってことなの。ただ、デメリットがあるわ。彼は貴方と融合したら消えるつもりでいるけど、彼の方に自我が移った場合、死ぬまで植物状態になるわ。ただひたすら体を通して外の世界を見るだけになる。可能性があるだけで確率は低いわ。ただ、起きないともいえない。次に、これは確実ね。自我の変質。意識が混ざるから自我が変わるわ。どうする?このまま死ぬか。生き地獄になるかもしれない可能性に賭けるか」


「生きます。お爺様に恩返ししたいから」


「そう。分かったは。彼の方も話がおわったらしいから、呼ぶわ」


次の瞬間、初代様はそこにいた。


「フリーディア様、話しの方は」


「勿論したわよ。賛成らしいわ」


「そうですか。それでは直ぐに」


「そうね。では始めるわ」


そのひと言を最後にぼくの記憶は無い。何が起きたのか思い出せない。

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