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最弱のスキルからの昇華  作者: びゃっこ
13/24

街へ

あれから数日経ち、魔法のない生活にも慣れてきたところだ。今日はあの事件以来会ってない大司教様の所へと向かった。一応、あの時迷惑かけたし。


というものの、外に出るのは初めてだ。これまで色々なことがあったが、街を散策したりなどする暇もなかった。そのため、教会の位置すら分からない状況だ。

僕は取り敢えずお爺様に相談してみると、部屋番のクロムを付けてくれた。それと、馬車で行くか聞かれたが、街の散策もしたかったため断った。お爺様は少し嫌そうな顔をしたが、その理由は分からなかった。


お忍びのため服はいつものではなく、皆が着ている洋服に着替えた。といっても初めてのことで分からなかったため、着付けて貰った。服はお爺様が既に用意していたようで、それを着付けてもらった。着替えが終わり、門の前で少し待っていると、クロムが慌ててきた。一応剣をたずさえていたが、私服姿のクロムはいつも鎧姿のクロムを見ていた僕からしたら、とても新鮮で目行ってしまった。


「クロム、急に呼び立てることになってごめんね」


「いえ、仕事ですので。ところではどちらに行かれるのですか」


「そうだね。最終的な目的地は教会だけど、なんたってここに来て初めての街だから、少し散策したいんだけど」


「そうでしたか。では、僭越ながら私でよければエスコート致します。それでは御手を。」


「うん。よろしくクロム」


「お任せ下さい」


そして、城外へと続く門を通る。すると、目の前には中世ヨーロッパの建物が広がっており、城下町は一際賑わっていた。ある程度予想していたものだが、いざ目にすると呆気にとられる。


「殿下」


クロムから声をかけられ正気に戻った。それにしても、クロムは僕が満足するのを待っていてくれたみたいで、とても有難かった。


それから街へと繰り出した。久しぶりにまともな陽の光を浴びた。

街を歩き出すと、早速焼鳥屋を見つけた。昼頃に出かけたため、ちょうど小腹が空いていたため、少し食べることにした。そして、事前に貰っていたお金を使い、購入した、豚バラ2、鶏皮4、ネギま2だ。購入の際に通貨が分からず、とても苦戦した。ありがたいことに、貨幣が金、銀、銅となっていたため、取り敢えず、言われた種類の1番大きい貨幣を出し購入した。それにしても、塩対応だなぁ。これが普通なのか。そこの店主は特に口を聞くことも無く、注文した物をそそくさと焼き、渡した。

僕は近くのベンチに座り、頂くことにした。

勿論半分はクロムにあげた。


「はい。クロムの分」


「え?」


「どうしたの?もしかして嫌いなのあった?」


「いえ、それは殿下のではないのですか?」


「僕1人食べる訳ないじゃん 。クロムいらない?」


「いえ、それではご好意に甘えさせて頂きます」


それから2人で焼き鳥を食べ終え、またブラ付き始めた。

それから暫く歩き、少し歩いたところに装飾品の店があった。興味本位で中に入り商品を見て回った。ダイヤモンドやルビーといった高級品を取り扱っている店で、少し緊張した。

それから、店の奥に行くと、一際目立った鉱物?があった。そのものの自体はマリガーネットのような鉱物だが、何かオーラを放っているようだ。


「クロム、あの石どう思う?」


「どうと言われましても、ただ綺麗だとしか。強いて言うのであれば、そこまでの品とは思いませんが……」


クロムにはそう見えるのか。もしかして掘り出し物なのかもな。クロムが言うには安そうだから、買っておくか。僕はこれを買うことにした。店員を呼び購入の手続きを進める。


「これ欲しいのですが……」


「ここは貴方の様な方が来る場所ではありません」


子供だからだろうか。そう思われても仕方ないな。ただ、それならクロムが保護者に見えそうなものだが……。


「金はあるから、これ売って」


「はぁ〜、そうですか。承知致しました」


うわっ。あからさまだなぁ。嫌な顔をしてるのは見るまでもない。まぁ、普通そうだよな。子供が買うってことは雑に扱われそうだからな。そう扱われると知ってて売るのは、嫌だよな。

それにしても、少し手が痛いなぁ。クロムか。まぁ、そうなるわな。僕がクロムの立場でも主君があんな目で見られたら怒るな。


「クロム」


「殿下、これは陛下に言うべきですね」


「しょうがないよ。まだ、僕が王族になったこと公表してる訳じゃないから」


「そうですが。あれはあまりにも」


「クロム、僕のために怒ってくれてありがと。でも、今は抑えて」


「承知致しました」


それから数分して、店員が石をケースに入れて持ってきた。


「こちらの商品で間違いないですか?」


「はい」


「こちら、小金貨20枚になります」


これが高いかどうかは微妙だが、一応払えはする。しかし、それでもギリギリだな。これがこんな値段するなら、他は相当するだろうな。今度からは気をつけないと。


そして、僕が払おうとしている時、横から怒声が聞こえた。


「ふざけないでください。これにそんな価値はありません」


「そうですか。別にこちらとしては売らないでもいいのですけどね」


「そちらがそうなら、こちらは商業ギルドへ届けを出させて貰います」


「はぁ、ご理解出来ておられないのですね。これを売るのは私たちの善意なのですよ。普通こんな獣風情に売る物なんてないのですが、こちらの善意で売って差しあげているのですよ。それをご理解して頂きたい」


あ、クロムがガチギレしそう。ここは僕から話を付けようかな。別に相場より値段が高い理由も分かったし。

今まで周りに言われてなかったから忘れていたけど、これは普通こんなの反応だ。むしろ、獣人の僕に売ってくれるだけでありがたく思うか。今思い返すと、街へ出て焼鳥屋の塩対応や街の人の視線が向いていたのは僕が獣人だったからだ。


「クロム、もういいよ。売ってくれるだけでもありがたいから」


「ふん。理解したのならいいわ。さぁ、早く買って店を出てもらっても。獣臭が残りそうですもの」


「うん」


僕はお金を払い、むさ苦しいこの場所から逃げるように出た。


「殿下、殿下!」


僕を追うようにクロムのも外に出る。一方、店員は呆然としていた。この国もの王子だという事実を知り。その後店内は騒然としていた。


「殿下!お待ちください」


こんな顔は見せられない。分かっていた。分かっていたことなのに涙が止まらない。


「殿下……」


「クロム。なんで獣人は嫌われるの。なんで……」


もう自分でも何言ってるか分からない。頭では理解してても心が悲鳴を上げている。みっともないな僕。こんな泣いて、喚いて。


「私は好きですよ、殿下の耳。フサフサして気持ちいいです。尻尾もモフモフしたいくらいです。殿下はお嫌いですか?」


「んーん。そんなことない」


「陛下もお好きですよ」


「え、そうなの?」


「はい。言葉には出しませんが、とても好いておられるのが分かります。世間がどう思おうと、私をふくめ殿下は多くの人に好かれているのですよ。ですから、そう悲観なさらないで下さい」


「うん。分かった」


お爺様が好きか……。良かった。それにクロムも好きなんだ。僕が思う以上に好いてる人はいるのかもしれないな。


「殿下、それでは教会に向かいましょうか」


「うん」


10分程歩き教会へと入った。近くの修道士に大司教様を呼んで貰った。


「これは殿下、お久しぶりでございます。お身体の方は?」


「大司教様、お久しぶりです。体はもうこの通り大丈夫です」


「それは良かった。して、今日は何用で?」


「うん、特に無いかな。陛下から大司教様がとても心配して下さったと聞いたから、顔を見せに来たのです」


「わざわざありがとうございます。それでは、お茶はいかがですか」


「うん。それじゃあ頂きます」


話が終わると、別室に移動した。その際、大司教様が2人で話したいと言われ、クロムは席を外した。


「殿下、砂糖はいりますか?」


「じゃあ、少しお願いします」


それから紅茶を頂いた。うん。やっぱり本場の紅茶は違うな。前の世界ではパックでしか飲まなかったからな。


「最近はどうですか、殿下」


「最近は魔法を学んでいました」


「ました。ということは今はしておられないのですか」


「そうですね。陛下に魔法のやりすぎで禁止されてしまいました」


「それはそれは。少し話は変わりますが、殿下は私には敬語でなくて良いのですよ」


「そうなんですか。でも、僕的にはこれがしっくりくるので。逆に大司教様も僕には敬語じゃなくていいですよ。個人的には大司教様の方が高貴な御方ですし」


前世の中性の時代、何より位が高かったのが聖職者だ。その意識が抜けてなのか、今でもそう思ってしまう。


「と言われましても、殿下の方が高貴な御方ですので、そういう訳にはいきません。それにそれであってもこれが私の普通なので……。どうかご理解頂きたく……」


「分かりました。それじゃあ、そのままで大丈夫です。早速なんですが。大司教様に質問があります。大司教様は獣人のことどう思う?」


「そうですねぇ。全ての種族は神の名のもとに平等です。ですので、人間と獣人に差など存在しません。というのが大司教としての言葉です。ですが、私個人の意見としては獣人というのは人間が勝手に設けたものです。それに彼らは元は人です。ですから、そこに差などないと考えています。もしや、殿下は御自身が獣人であることを悩んでおいでですか?安心してください。陛下はもちろんのこと、獣人を好む人は少数ではありますが、おります。私もその1人です。だからという訳ではありませんが、あまり悲観的にならなくても良いのですぞ」


「なんか、大司教様から言われると、心が安らぎます」


「それは良かった。それと、宜しければ私のことはどうか名でお呼び下さい」


「分かりました。これから改めて宜しく頼みます。えーと、ルーラス大司教様?」


「はぁ……そういうことではないのですが……はい。こちらこそよろしくお願い致します。私はあの時から貴方様の味方です。それをお忘れなきように」


「はい。ありがとうございます」


「神の御心のままに」


あの時か。まぁ、ルーラス大司教様が味方になってくれるなら心強い他ない。

その後、ルーラス大司教様はこれから用があるようで、お開きとした。

僕達が出ると、クロムが心配そうによってきた。ほんと、主君思いだなぁ。


「殿下、何かされましたか?お体は大丈夫ですか!?」


「う、うん。大丈夫だから、落ち着いて」


「は、はい。それなら良いのです」


「そもそも、私が殿下に手を出すことはありません。少し失礼ではないですか?」


「こ、これは大司教様、申しわけございません。少し早とちりいたしました」


それからお別れの挨拶をして、僕達はその場を去った。


「クロム、なんであんなこと言ったの?」


「あんなこととは?」


「ルーラス大司教様のこと。ルーラス大司教様はとてもお優しい人だよ」


「はぁ、それは大司教様が殿下を好いてるからでしょう。殿下は創造神から多大なる恵みを受けておられると聞き及んでいます。そのため、大司教様が殿下を特別視しておられるのです。大司教様は普段は少し横暴でいらっしゃいます」


話の趣旨がズレたが、ルーラス大司教様のことを知れて良かった。僕から見たら優しいおじさんって感じなんだけどなぁ。でも、世間の見方は違うのか。それだけでも知れたことが良かった。

その後は雑談しながら城へと帰った。


城に着くとお爺様が駆けつけて来た。


「ラルフ、大丈夫か?何もされなかったか?何か嫌なことはなかったか?」


「大丈夫でしたよ、お爺様。特に何もありませんでした。それと、1つ高いお買い物してしまいました。ごめんなさい」


「そんなことはどうでもいいのじゃ。お主が無事ならそんな端金どうということも無い」


「それでは、お爺様僕は一足先にお風呂に行ってくるね。夕食までには上がるよ」


「分かった。ゆっくり浸かるのじゃぞ」


それから、僕は風呂に入った。寝間着は向かってる途中にすれ違った執事に持って来てくれるよう、伝えた。

一方、サリウスはクロムと執務室で話し込んでいた。


「それで、どうだったのじゃ?あの子は賢いのじゃ。それ故に儂らを気遣ってお主に口止めしとるかもしれんな。念の為じゃ。王令じゃ。今日のこと儂に全て話せ」


「了解致しました。王令では仕方ありません。殿下には悪いですが話させてもらいます」


それからクロムは街を歩いた時のこと、焼鳥屋のこと、あの店のこと、教会のこと。全てを話した。


「なるほどのう。それにしても、なんと言ったかのう?そのクリスト商会と言ったか。潰してやろうかのう」


「陛下、恐れながらそれはやめた方がいいかと」


「分かっておるわ。そんなことをすれば、ラルフに話してることが知られてしまうからじゃろう」


「はあぁ」


「それでルーラスの方はどうなったのじゃ」


「それですが、お2人は別室で話をされており、私は入室することが出来ませんでした。殿下曰く、何もされていないそうですが」


「そうか。まぁ、ルーラスは皆が思ってるほどのやつではないのじゃがな」


「大司教様とはお知り合いなのですか?」


「旧友じゃ」


「そうでいらっしゃいましたか。それは失礼しました」


「うむ。もうお主は下がって良いぞ。今後もラルフをよろしく頼むぞ」


「承知しております」






そして時が経ち夕食の時間となった。夕食はいつも通りで特に言うことなし。

それと、明日はフリード兄様の学院。所謂大学で剣術の試合があり、その試合は学院対抗試合らしく、この国の1つの名物ともなっているものらしい。それに兄様が学院の代表として出るらしく、それを明日見に行くらしい。正直、剣は分からない。が、兄様が凄いの分かった。


食事が終わると、クロムが少し元気がないのが分かった。


「クロム、元気がないけどどうしたの?」


「殿下……」


「いいよ、理由は分かってるから。気にしないでいいからね」


僕は一言そういい部屋へと入った。クロムが言うことは予想してたので想定内だ。ただ、あれほどクロムがしょげているのは想定外だった。

まぁ、あまり気にして欲しくないかな。

その日は明日に向けて早寝だ。

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