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最弱のスキルからの昇華  作者: びゃっこ
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魔法で1日

次の日、早朝に目が覚めたため、早速昨日考えたことを実行した。まずは起きる事象をイメージし、それに魔法陣を当てはめた。そう、歩くという動作のイメージとその動作の言語化をしているようなものだ。

こうすることで、歩く動作をすれば頭の中では無意識で「歩く」という言葉が浮かぶようになるということだ。

これと同じ原理を魔法でもする。そうすることで昨夜の考えを実現することができる。

そして、スキルのおかげで瞬く間に実行出来た。小風(ブリーズ)の完成だ。


それからいつもの起床時間になり、部屋のドアをノックする。すると部屋番をしていたクロムが入ってきた。今更だが僕の着付けはいつも部屋番がしてくれるのだ。このように時間になると、自分で部屋のドアを叩くか、あちらが起こしに来るかのどちらかで毎朝が始まる。この国では昔から王族の世話は大抵部屋はがするのだという。勿論、部屋の掃除などは執事達がするのだが、僕らの身近のことは部屋番がするのだ。これは部屋番と信頼を強めることが安心に繋がるという思案で昔からなされていることらしい。


そして、今日の部屋番はクロムだ。


「おはようございます、殿下」


「おはよう、クロム。で、どうしたの?」


クロムは目をうるうるさせながら僕に抱きついてきた。


「無礼は承知しております。ですが、どうか暫くはこのままでお願いします」


「う、うん」


「殿下、私は本当に殿下がお目覚めになり、こうしてまたお世話ができること、とても嬉しく思います」


「ごめんね、心配かけたね」


そうだ。僕にとっては眠っていた時間は一瞬だったが、クロムたちからすれば途方もない時間が経っているのだ。クロムは主思いだ。その主である僕が半年もの間眠りについていたのだ。どれだけの心配をかけたか、想像にかたくない。


そう考えると、目覚めてすぐの着付けの時、そっけない対応をしたのは良くはなかったな。

それから暫く抱擁をした。


「殿下、申し訳ございませんでした。身勝手なお願いを聞いていただきありがとう存じます」


「うん、大丈夫だよ。それじゃ、着付けおねがいね」


それから、クロムは奥から一式取ってきて、着付けを始めた。その間はいつものお喋りだ。


「そういえば、部屋番ってクロムとジルの2人だけ?」


「は、はい。そうですね。私は火の日、風の日、光の日が担当です。といっても担当外の日も在駐してるので何かありましたらお呼びください」


「ちょっといいかな?その言い難いんだけど火の日って何?」


「ああ、殿下は異世界の方でしたね。それでは軽く説明します。1日は24時間で、1週間は6日で火の日、水の日、風の日、土の日、光の日、闇の日、となっており、5週で1ヶ月としています。それが12ヶ月で1年となっています」


「なるほどな、あまり元の世界と変わらないんだね」


「そうですね。異世界人はこの世界とあまり時間軸が変わらない所から来ると聞き及んでます」


「殿下、御手を上に」


「ああ、ごめんごめん」


話す傍ら動作をとめないクロムは凄まじいなぁ。こういうことをサラリとするのが心底すごいと思う。


「それで、殿下それがどうしたんですか?」


「いや、2人なら人員増やすよう言った方がいいかなと思って聞いたんだけど」


「お気遣い痛み入ります。今のところは大丈夫です。

殿下と話す機会が減るのも嫌ですから。まぁ何より部屋番の試験は大変ですからね」


「そうなの?それってどんな……」


「はい、終わりっと。それはまた今度にしましょう。着付け終わりました」


「ああ、うん。ありがとう。それじゃあ、行ってくるね」


「はい。お気をつけて」


部屋番の試験ねー。どんなものなんだろう。そんなことを考えつつ、朝食へ向かった。これが僕の毎朝の流れだ。


朝食が終わりラキシスのところへと向かう。ワクワクが止まらない。これで次のステージへと進める。

そしてラキシスの部屋に着いた。


「ラキシスー」


「おお、これは殿下。どうしたのですかな?」


「どうしたって。今日は魔法しないの?」


「その事でしたら。今日はお休みです。陛下から言われておるからのう」


「でも、魔法したい」


折角、課題をクリアしたのだ。したいに決まっている。それに戦争も近そうだから、お爺様を守れるようになりたいし。


「そう言われましてもなぁ」


「それじゃあ、ラキシスのとこに遊び行ってるってことにする」


「じゃがのう……。分かった」


「ありがとうラキシス。大好き」


嬉しさのあまりかラキシスに抱き着いてしまった。

まぁ、それよりも魔法ができるようになったのだ。

それから、場所を変え、花園へと向かった。意外とここは人気がないのだ。


「それで今日はラキシスに見せたいものがあるんだけど」


「ほう。それはなんですかな」


僕は無意識化出来た小風(ブリーズ)を使った。


「こ、これは……」


「これで次の魔法に行けるでしょ」


「うむ、そうじゃな。では次は風刃(ウィンドカッター)じゃな」


ラキシスはそう言い、魔導書を開いた。僕はスキルでそれを瞬時に覚え、文字を見てどんな魔法か考察した。見ていて気づいたことだが、小風(ブリーズ)と比べ圧倒的に多い古代文字の量が多かった。

魔法陣の構成の中にその魔法の形成の過程が入っていたからだ。その過程に使われている古代文字が有り得ないくらい多いのだ。それだけで、ざっと500はある。しかし、他は特に変わらないためそれ以上は増えることはなかった。

恐らくだが、事象だけイメージあるするのと過程も含めてイメージするとでは効率や威力の面で差が出るだろう。そのため、僕は丁寧に解読していった。それから5分は経っただろうか。僕は正気に戻った。ラキシスを待たせていることに気づいた。僕がそれに気づくと、ラキシスは完成したのかと思ったのか、僕に使ってみるよう言ってきたため、魔法を行使した。


風刃(ウィンドカッター)


手を前に出し、魔法を唱えた。手を出した方へと風の刃が放たれ、数束の花の茎を切った。

その様子を見ていたラキシスは何やら顔を傾げていた。


「ふむ。おかしいのう。普通であればこれ程までに威力が低いはずは無いのじゃが……。それに、魔素の効率も悪いのう」


やはり、事象だけのイメージだと威力や効率が下がった。それも大幅にだ。僕はラキシスに無意識的のやり方を教え、今回なんでこんな結果になったのか説明した。


「なるほどのう。これは推測じゃが、魔法はその魔法陣の理解度。つまり古代文字の理解度によって威力や効率が変わるのかもしれんのう」


「うん、それと魔法陣自体もかな?軽く見たんだけど、魔法の過程の部分に魔法の発動方向や刃の形とか、そういったことでも魔法の発動方向とか変わると思う」


「どういうことじゃ?」


「うーん。火の魔法で考えてみて。火って空気の量で火力が変わるじゃん。だから、場合によっては、その空気の量とかも魔法陣に使われている古代文字を変えないと、魔法が発動しないかもしれない。例えば、空気の薄い山頂とかでは空気のを多めに取り入れるように組み替えないと、威力が下がっちゃうわけ」


「なるほどのう。魔法陣を書き換えるか。今まで発想になかったのう。普段術式しか使わぬから気づかなかったのう。じゃが、気づいた所でそれを行えるのは殿下だけじゃな」


「そうだけど。状況によって古代文字を変えても、さほど差は出なかったよ」


軽くフォローを入れておく。ラキシスが少し項垂れているのが分かったからだ。恐らく、今まで覚えた魔法陣は無意味だったと考えていそうだ。


「それよりも、今日はここまでにしとくよ。解読するのに時間かかりそうだから。その、良かったら魔導書貸してくれない?」


「分かったのじゃ。魔導書の方は持って行ってもらって大丈夫ですぞ」


「ありがとう。それじゃあ、また明日」


僕はその場の空気の気まずさとこれ以上は進展しないことより、あとは部屋で作業をすることにした。魔導書をを借りたのは一応早目に終わったらの時用である。


それから、その日は解読に専念した。と言っても早目に終わったため、他の属性も覚えることにした。最初は難しいかったが、後々大きく変わっているのは祝詞だけだと気づいたため、意外と簡単に済んだ。そして、今日だけで全ての属性の風刃(ウィンドカッター)と同レベルの物を覚えた。

少し夜更かしすることになったが、全て覚えることが出来て良かったと思う。まぁ、それより上のレベルはお手上げだが、多くの魔法をおぼえた充実感でいっぱいだ。僕は寝間着に着替え、そのまま眠りについた。今日は充実した日だった。四六時中魔法陣を考えていて、おかしい日でもあったが。

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