第七話 グルガ村
山の祠という、村の人々が祈りを捧げる場所。
そこは、村からそう離れた場所ではないという話であったのだが、俺の足では1時間はかかってしまう場所であったらしい。
単純計算で、1km程度といったところだろうか。
風系統に分類される転移魔術というものがあれば、本当に一瞬で移動することができるようだが......ネアちゃんはまだその魔術を使えるほど魔術の扱いに長けているわけではないらしい。
ネアちゃんを先頭に、俺、スライムさんやクモさんと列び村へ近づくと明かりを持って近づく人達が見えた。
「「ネア!!」」
「お父さん、お母さん!」
「こんな夜中にいなくなって、どれだけ心配したと思っているの!!」
「ノアの言う通りだ。一体、どこにいたんだ?」
「祠に、行ってました」
その一言。
直後、ネアちゃんは母親に打たれていた。
「夜の山は、魔物の活動が活発だと言ったでしょ!?」
「ご、ごめんなさい」
「まったくもう......本当に良かった」
宝物にしがみつくかのように、我が子を強く抱きしめる。
「悪いこにはお仕置きだ」
と、父親もネアちゃんの頭部にげんこつ一発。
「お前が死んだら、お父さん悲しいんだぞ」
「うん。ごめんなさい」
「無事で、本当に良かった」
そんな光景を見つめてから、ようやく落ち着いたのだろう。
「お見苦しいところを見せてしまって」
と、父親に次いで、母親にも丁重に挨拶されてしまったのだが、気持ちも分かる。
「お察ししますよ。大切な娘さんなんですね」
と返事をすれば、二人には苦笑いを浮かべられてしまった。
「申し遅れた。ネアの父、ゲイル。そして妻のノアだ。君と、そこの魔物は?」
「レンさんは、私が召喚したの。ゴブリンの討伐に手伝ってくれるって。この二匹はレンさんの......」
「異世界、異業種の友達です。二人には、この村の人達に危害を加えないよう伝えてありますし、なにかあれば俺が責任を取りますので」
「し、召喚!? ネア、本当なの??」
「見慣れない風貌、だもんな。そうか......まぁ、今日は一先ずゆっくり休んでくれ。ネアが世話になったんだ。娘の恩人を無下にするような真似はしたくない。空き家もあるし、案内しよう」
「あ、できればなんですが......小腹が減ってまして。水や食料を少しだけ分けて頂けると」
背に腹はかえられない。
いつ、どこであろうとも、だ。