第三話 コミュニケーションを図ってみようー2
涙ながらに懇願するネアちゃんをなだめ、とりあえず村までの道を歩く。
道は道でも、獣道。
整理されているわけでもなく、木の根が所々出ていたりはするのだが。
完璧に整理された道を期待する方が、と思ってしまう。
さて、会話もなくただ歩くというのもなんなので、少しずつこの世界のことについて聞いてみることにしてみた。
まず、この付近はグルガ村より北の方向にある山の中のようだ。
そして、この世界の人間は、大なり小なり魔力を持っていて、魔術を使って生きているらしい。
もちろん、その魔力量によって日常生活に用いる人もいたりするが、大半は戦闘行為で使用されるという。
また、人だけではなく、エルフだとか、リザードマン、ドワーフ族に、魔族なんてものの他、魔獣だとか、魔物だとか、そんなのもいるらしい。
それだけファンタジー要素強いなら、なんて軽い気持ちで「ステータス」って言ってみたけど、何も起こらなかった。
隣で興味津々にしているネアちゃんが「それは何かの魔術ですか!?」と言わんばかりに目を向けてきている。
僕の心に、ダメージがありました。
まぁ、ありえないだろうけどね......とは思いながらも、人差し指で縦線を一本書いてみる。
案の定、何も起こらなかった。
「それは、何かの儀式なのですか!?」なんて聞かれてしまったので慌てて縦横と線を切り「単なるおまじないだよ」と答えてみたわけだが、無垢な少女を騙すという罪悪感で僕の心にまたダメージがありました。
もう少し早く気付くべきだったのかもしれないが、ちゃんと北とか、なんというか、名称だとかの通じる部分もあって安心安心。
話を変えて、ゴブリンについて聞いてみことにしたわけだが、認識としてはほぼ違いはないらしい。
緑色の肌に、人型。
多種族を襲って武器をや食料、家畜を奪い、男であれば食し、女であれば死に絶えるまで子供を孕ませる。
一般的には、個々の能力はそれほど高いわけではないのだが、集団による連携が厄介らしい。
稀にとんでもない個体が現れるようだが、そこに関しては人も大きな違いなんてないだろう。
より正式には亜人種魔傾向人型種族ゴブリンなのだとか。
なんだその、ガンダムの正式名称みたいなのは。
とは思うが「物知りなんだね。勉強熱心で偉いな」と口に出したら頬を染めていた。
重ねて、村というものがあるなら、町や国もありそうだし、そこの人達に助けを求めてみることもできたんじゃないか、という話もしてみたが、ネアちゃんがこっそりと聞いてしまった話ではーー
国は、エルフとの戦争真っ最中。
騎士の一部や冒険者組合等の戦える者は、別の魔物討伐にも出払わせている。
グラガ村は辺境だから、望みは......
ーー村長がそんなのことを言っているのを聞いてしまっていたようだ。
いてもたってもいられなくなった。
何かできることをしたい。
少しでも、希望があるならと、山に踏み入ったらしい。
今の話、あいつに聞かせたら絶対泣くだろうな。
それはそれとして、ちゃんとカバーしなければ。
命は粗末にしていいものじゃない。
「気持ちは分かるけど、ネアちゃん自身の命も大切なものなんだよ」
優しく声をかけながら、頭を撫でてみる。
これくらいの釘を打っておくのは許していただきたい。
必要があると思うから。
さて、失念しておりました。
ゴブリンという魔族がいるのです。
魔物がいるとも聞いておりました。
村に戻る獣道。
進行方向左手には、形状からしておそらくスライムでしょう。
ざっと見て30cm程の流れるようなフォルム。
うーん、次世代の車はあんな感じになるのかも。
右手には、アシダカ軍曹も驚きそうな大きな大きな蜘蛛さんではありませんか。
胴体だけでサッカーボールくらいありそうなんですけど。
足とか伸ばしたら、人とか同じ位のサイズになるんじゃね?
RPGとかやりながら何となくは思ってたんだ。
あえてここで爆発させてやる。
生態系どうなってんだよ!?
というのが、素直な感想だった。
※所々で造語が含まれております。